風が吹き、落車と細かな丘が頻発するナーバスな第ステージ。最後はブローニュ・シュル・メールを駆け上がる上り勝負に持ち込まれ、ペーター・サガンが圧勝。第2ステージに続く今大会2勝目を挙げた。

スタートラインに並んだ新城幸也(ユーロップカー)スタートラインに並んだ新城幸也(ユーロップカー) photo:Makoto.Ayano大会4日目にして、ツールはベルギーを離れフランスの土を踏む。ツール・ド・フランス2012第3ステージは、パリ〜ルーベのパヴェでも有名な北部のオルシーから一路西に向かい、ドーバー海峡にほど近いブローニュ・シュル・メールへと至る197km。

逃げるジョヴァンニ・ベルノドー(フランス、ユーロップカー)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)ら逃げるジョヴァンニ・ベルノドー(フランス、ユーロップカー)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)ら (c)CorVosコース前半こそまっ平らな地形が続くものの、後半にかけてはブルターニュ地方特有の細かいアップダウンが無数に繰り返される。

カテゴリー3級・4級の山岳がゴールまでの60kmの距離に計6つ詰め込まれ、特に残り16kmからは4級、4級、3級と続き、最後は4級山岳ブローニュ・シュル・メール(登坂距離700m・平均勾配7.4%)を駆け上がる。

この日は5km地点でアタックが掛かり、5名による逃げが決まった。メンバーはジョヴァンニ・ベルノドー(フランス、ユーロップカー)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、セバスティアン・ミナール(フランス、アージェードゥーゼル)、ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)、アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)。

メイン集団をコントロールするレディオシャック・ニッサンメイン集団をコントロールするレディオシャック・ニッサン photo:Makoto.Ayano山岳ポイントを積み重ねたいモルコフは3日連続で逃げに乗る。ユーロップカーも同じくこれまでのステージ連続で逃げにメンバーを乗せるなど積極的な動きを見せていく。

先を急ぐ5名は風の強いコンディションの中、メイン集団に対して最大で5分ほどのタイム差を稼ぎだした。

北フランスの丘陵地帯を越えていく北フランスの丘陵地帯を越えていく (c)CorVos119km地点の中間スプリントポイント。先頭5名はローテーションを乱すこと無く通過したが、メイン集団ではこの日もポイント争いが行われ、マーク・カヴェンディッシュがケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)を抑えて全体の6位通過。

以下マイヨヴェールを着るサガン、ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、FDJ・ビッグマット)と続いた。

集団のコントロールはレディオシャック・ニッサンがこの日も担当。ここに上りゴールでサガンの勝利を狙うリクイガス・キャノンデールなどが加わり、5名との間隔を詰める展開のまま、後半の短い上りが連続する丘陵地帯へと入っていく。

逃げ続けるミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)ら5名逃げ続けるミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)ら5名 (c)CorVosペースの徐々に上がるメイン集団内では落車が発生し、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)が脛骨を骨折しリタイヤ。さらに166km地点では大クラッシュが起こりホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)が鎖骨骨折でレースから去った。

ゴールへ至るブローニュ・シュル・メール。残り350mで落車が発生するゴールへ至るブローニュ・シュル・メール。残り350mで落車が発生する photo:Makoto.Ayanoこの落車によりメイン集団は分断され、トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)らが後方に取り残される形に。追走を試みたものの、ゴールに向けてペースの上がるメイン集団には以降追いつくことは無かった。

一方逃げ集団は徐々にメンバーを減らしながらもローテーションを継続し、丘陵地帯を越えていく。山岳ポイントは全てモルコフが取り、山岳ポイントを計9点にまで伸ばすことに成功した。

ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーッエッジ)の背後に位置するペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーッエッジ)の背後に位置するペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Makoto.Ayanoやがて最後まで粘りを見せたグリブコが残り6.5km地点でイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)率いるメイン集団に吸収されると、ここからゴールに向けての争いが激化することになる。

ペースが緩んだ一瞬のスキを付いたのは、2011年に同じゴール地点で開催されたフランスナショナル選手権を制したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)。残り5.5km地点から勢い良くアタックを掛けると、得意の独走に持ち込むことに成功した。

低い姿勢で踏み続けるシャヴァネルだったが、残り700mから始まるブローニュ・シュル・メールの上りでペースが落ち、BMCレーシングチームらが高速を維持する集団に飲み込まれる。そして間髪をいれずアタックしたワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)の動きも後続を引き離すには至らない。

勝負は残り250mの上りコーナーへ。インをついたミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)がわずかに失速する一方、アウトラインを選んで勢い良く抜き去ったのはサガン。その勢いをゴールまで維持すると、後方を振り返る余裕を見せながら先頭でガッツポーズを繰り出した。

ジョギングポーズでゴールへと飛び込むペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ジョギングポーズでゴールへと飛び込むペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) (c)CorVosまさに圧倒的な爆発力。上りスプリントで他を全く寄せ付けない強さを見せるサガンは、第1ステージに続く今大会2勝目を飾ることに成功した。2位にはエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)が入っている。

マイヨジョーヌを着るファビアン・カンチェラーラはステージ4位に入り、総合首位を守ることに成功している。

なお、残り350mで落車が発生し、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)らがストップを余儀なくされたものの、救済処置によりタイム差はつかなかった。

新城幸也も60名の先頭集団に残り、ステージ39位に。これによって総合順位は54位となっている。

翌第4ステージは、アブヴィルからルーアンにかけての214.5km。第4・5・6ステージと3連続でスプリンター向きのコースが続くため、マイヨヴェール争いのメンバーが絞りこまれていくだろう。

マイヨジョーヌはファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)がキープマイヨジョーヌはファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)がキープ photo:Makoto.Ayano落車で分断され、ステージ7分27秒遅れの148位に終わったトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)落車で分断され、ステージ7分27秒遅れの148位に終わったトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Makoto.Ayano



ツール・ド・フランス2012第3ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)4h42'58"
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)+01″
3位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)
5位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
7位 ニコラ・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
8位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
9位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
10位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
39位 新城幸也(ユーロップカー)

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)14h45′30″
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)+07”
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)+10″
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)+11″
6位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)+13″
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+17″
8位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+18″
9位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
10位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)+19″
13位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)+22″
16位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)+23″
22位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+26″
23位 ユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)+28″
26位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)+35″
30位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)+38″
32位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+40″
37位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)+45″
54位 新城幸也(ユーロップカー)+02′03″

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)

新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
チームスカイ

敢闘賞
ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,CorVos

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