2012年モデルとして、リドレーが送り出したアルミシクロクロスマシンがX-BOW(ボウ)だ。エントリーユーザーを対象として設計され、完成車で16万円以下というリーズナブル価格ながら各所にシクロクロスの本場ベルギーらしい作りこみが光るこのバイクに今回はフォーカスを当てていく。

リドレー X-BOWリドレー X-BOW (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

自転車競技が国技とされるベルギー。"キング・オブ・クラシック"と称されるロンド・ファン・フラーンデレンを始めとした自転車レースへの観衆、レーサー、スタッフの熱狂ぶりたるや、日本では想像できないほど。石畳に代表される悪路を含むコースをレーサーたちは駆け抜け、平日でも至るところでレースが開催されている。

レースの条件が厳しくなるほどに、観客たちは美しさを見出し、レーサーはその声に応えようと全力を尽くすのがベルギーという国である。そのベルギーで、1990年にジョシム・アールツがブリュッセル北東の街、テッセンデルロで塗装会社を創業したのがリドレーの始まりだ。

フォルツァ製のカーボンフォークを採用フォルツァ製のカーボンフォークを採用 インテグラルヘッドチューブの造作インテグラルヘッドチューブの造作 ストレートチューブを使用した堅実なフレームワークストレートチューブを使用した堅実なフレームワーク


当時はアルミフレームが台頭し始めていたが、ベルギーではスチール製フレームが流通の大半を占めていた。そこで息子ヨキム・アールツはベルギーの若手選手にアルミ製バイクで活躍して欲しいという思いからフレーム製造に乗り出したのである。
そして時代は彼の先見通りアルミの時代へ。その後の世界屈指の強豪プロチームへの機材供給、主力マテリアルのカーボン化などを経てリドレーブランドの急成長は誰もが知るところだ。

美しい仕上がりを見せるチューブの接合部分美しい仕上がりを見せるチューブの接合部分 端整なフォルムを見せるホリゾンタルトップチューブ端整なフォルムを見せるホリゾンタルトップチューブ


ハンドル周りはリドレーと関係深いフォルツァ製で固められるハンドル周りはリドレーと関係深いフォルツァ製で固められる ワイヤー類は泥汚れから守るために上引きとされるワイヤー類は泥汚れから守るために上引きとされる


そしてロードレースと同等に、やもするとそれ以上の絶大な人気を誇るのが冬季に開催されるシクロクロス競技。ジュニア選手たちはロードレースと並行して積極的にシクロクロスへ参戦しすることでライディングテクニックを磨くのが伝統だ。専門のプロチームも存在し、プロレースの会場はホットワインやビール、フリッツを片手にした観客たちの熱気に包まれる。
そんな国柄を反映し、リドレーはシクロクロスマシンのラインナップが豊富に揃う。ベルギーのシクロクロストップチーム、「テレネット・フィデア」、「サンヴェブ・プロジョブ」へと供給されるトップマシン、Xナイトや、セカンドトップモデルのカーボンバイク、Xファイア。そして2012年モデルとして新たに登場したのがX-BOW(Xボウ)である。

アルカンシエルカラーが各所にアッセンブルされるアルカンシエルカラーが各所にアッセンブルされる 基本に忠実な造りを見せるボトムブラケット周り基本に忠実な造りを見せるボトムブラケット周り


X-BOWは、フレームにダブルバテッドの7000アルミニウムを使用した、同社CXラインナップ中エントリーグレードに当たるマシンだ。 これからシクロクロス競技を始めたいユーザーを対象に、レースからや通勤・通学まで幅広く使えるように造られたこのXボウは、リドレーらしい堅実な造りが各所に光る。

レース使用を前提に踏まえたホリゾンタルスタイルのスケルトンは、上位モデルと比べホイールベースを長く取ることで直進安定性を求め、ビギナーでも安心して走りに集中できるように工夫がされる。ストレート形状の各チューブ接合部は確かな造りを感じさせる美しい仕上がりだ。

完成車価格で16万円を切る買い求めやすいプライスを実現しながら、アッセンブルするパーツの構成にも手を抜いていない。メインコンポーネントは信頼のシマノ・105が組まれ、ブレーキセットはテクトロ・992AG、クランクはFSA・ゴッサマー(歯数46×36)だ。

ステム・ハンドル、シートポストやサドルなどはリドレーと関係の深い4ZA(フォルツァ)製パーツがアッセンブルされ、全体のコーディネイトを高めている。

フィデアチームのロゴがあしらわれるフィデアチームのロゴがあしらわれる ストレートチューブを採用するリア三角ストレートチューブを採用するリア三角 サドルもフォルツァ製とされ、全体でコーディネイトを高めているサドルもフォルツァ製とされ、全体でコーディネイトを高めている


カラーリングはホワイトをベースにイエローとブルーの差し色が美しい、2011年のシクロクロス世界選手権を制したフィデアチームのレプリカカラーと、ブラックをベースにリドレーの本拠地ベルギーのナショナルカラーがあしらわれる「フィデア・ベルギー」の2カラーだ。

さて、このリーズナブルな価格を実現しながらシクロクロスレーサーテイストを盛り込んだX-BOWを、2名のテストライダーはどのように評価するのか興味は尽きない。早速インプレッションをお届けしよう。





―インプレッション

「安定性が高く、シクロクロスビギナーにお薦めできる一台」鈴木祐一(Rise Ride)


「安定性が高く、シクロクロスビギナーにお薦めできる一台」鈴木祐一「安定性が高く、シクロクロスビギナーにお薦めできる一台」鈴木祐一 入門用のシクロクロスバイクとしてはすごく良いと思いました。コンポーネントを含めてオフロードに耐えられる耐久性のあるバイクとして仕上げられていますね。値段も16万円を切る手頃な価格に設定されていて、シクロクロスバイクを始めて手にする人にはとてもお薦めできると思います。

入門用のアルミフレームですので、非常にがっしりと造られています。重量感もありますが、コストを踏まえれば目をつむれるポイントですが、乗った際の軽やかさを設計で出そうとしている点も見受けられます。例えばBBは通常よりも位置が高く配置されていたり、ヘッドチューブも比較的短く設計されているので、少しロードバイクに似ているでしょうか。

若干ポジション出しがシビアになるかと思いますので、シクロクロスバイクを熟知しているショップやメカニックに相談しながら自分のセッティングを出していくのが良いでしょう。そうしていけば、このバイクの持つ良さをしっかりと出していけると感じます。

リドレーのカーボンバイクを以前テストしたことがありますが、比較してハンドリングに関しては安定志向にふられていると感じました。シクロクロスはオフロードをドロップハンドルで走リます。高い技術力やバイクコントロールが問われる競技ですので、こういった味付けはビギナーライダーにとってとても親切ですね。しっかりとエントリーライダーの事を意識したバイクづくりがされています。

プロチームのレプリカカラーにペイントされていますが、ホワイト、イエロー、ブルーの配色はどんなジャージにも合わせやすいですね。このバイクを乗り込んで、次のステップアップにつなげていく、ライダーの技量を養ってくれるバイクといえばよいでしょうか。ビギナーにとって非常にオススメの一台です。

 
「シクロクロスのみならず、奥深い楽しみ方ができるバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)


「シクロクロスのみならず、奥深い楽しみ方ができるバイク」戸津井俊介「シクロクロスのみならず、奥深い楽しみ方ができるバイク」戸津井俊介 リドレーは幾つかのプロチームに機材供給をしており、シクロクロスに強いブランドというイメージがあります。世界選手権やワールドカップを観ていても使用率は非常に高いですし、その点このエントリーモデルのXボウにしても、安心感というのは非常に強く感じました。

オフロードを走る上で、バイクには安定感が求められますね。ビギナーになるほどそれは顕著ですし、ピーキーな乗り味のバイクはとても乗れたものではないでしょう。鈴木さんも挙げていましたが、このX-BOWはシクロクロスビギナーが安心して乗りこなすことのできる安心した乗り心地が付けられていると感じました。

各チューブは肉厚のパイプで構成されているため、それなりの重量は正直あります。しかしそれが転んでも大丈夫、という安心感を生み出していることは事実ですし、この価格を踏まえれば問題にはならないポイントと言えるでしょう。硬めのフレームで突き上げが少々強めではありますが、路面のインフォメーションを学ぶ意味では良いと思います。

上りや下りの性能は何かが突出しているわけではありませんが、ホイールを替えれば大きく乗り味も軽くすることができるでしょう。徐々にパーツをアップグレードしていけば、幅広いレベルのレーサーが使える素質を充分に持ったしっかりとしたフレームだと感じました。

デザインはとても格好いいですよね。シクロクロスのレースだけでなく、街乗りや通勤で使用しても浮きすぎずマッチしてくれそうです。毎日の通勤から週末レースまで、これ1台でこなせてしまうポテンシャルが秘められていると感じました。

もちろんシクロクロスを始めてみたい方がターゲットユーザーですが、スポーツバイクに乗ってみたいけれど、バリバリな感じのするロードレーサーに抵抗のある人って意外と少なくないんです。でもマウンテンバイクだとちょっと重い。そんな方には非常に強くおすすめできる1台だと感じました。

8割ロードで走るけど、ちょっとオフロードも遊んでみたい、という方にはベストマッチといえるでしょう。ロード用タイヤを装着すればより快適な走行も可能です。このバイクは、シクロクロスのみに因われず、もっと広い目線で楽しむことのできる奥の深いバイクですね。ユーザーの使い方に併せてどんなシチュエーションにも対応してくれることでしょう。

リドレー X-BOWリドレー X-BOW (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
リドレー X-BOW 完成車
フレーム:ダブルバテッド7000アルミ
フォーク:4za ZORNYC(カーボン)
カラー:FIDEA、FIDEA-Belgium
サイズ:41、48、52、54
ヘッドセット:FSA integrated
コンポーネント:シマノ・105
クランクセット:FSA Gossamer 46x36 41size 165mm 48.52.54size 170mm
ブレーキセット:Tektro 992AG
チェーン:KMC
ホイール:Shimano R501A
タイヤ:Continental Cyclocross Race - THE CX Racing Clincher 35c
カセット:Shimano Tiagra 12-28T CS4600
ステム・ハンドル・シートポスト:4ZA
価 格:158,550円(税込)




インプレライダーのプロフィール


戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
OVER-DOバイカーズサポート


鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


ウェア強力:PISSEIエアロ・アズール

text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO