いよいよ迎えた最終ステージ。灼熱の暑さのなかでの10日間のステージレースはとてもとても長く感じたが、こうして最終日を迎えると、あっと言う間に過ぎ去っていき、レースが終わってしまうことが淋しく感じてしまう。

レース前の4賞ジャージ着用選手たちレース前の4賞ジャージ着用選手たち (c)Sonoko.Tanakaスタートを待つ伊藤雅和(愛三工業レーシング)スタートを待つ伊藤雅和(愛三工業レーシング) (c)Sonoko.Tanaka

リラックスした雰囲気で迎えた最終日

レーススタートは内陸部のタシクケニル。チームはゴールとなるトレンガヌ州の州都クアラトレンガヌに宿泊しており、そこから1時間半コースを逆走するようにしてスタート地点へと向かった。そしてこの日は距離が114.8kmと短いため、レーススタートはいつもより3時間ほど遅い午後1時。そのためスタート地点に到着すると、すでに真上に昇った太陽から、溶けてしまいそうなほどの強烈な日差しが降り注いだ。

スタート前に談笑する西谷泰治と別府匠監督(愛三工業レーシング)スタート前に談笑する西谷泰治と別府匠監督(愛三工業レーシング) (c)Sonoko.Tanaka地元の応援を集めるマレーシア籍トレンガヌプロアジア地元の応援を集めるマレーシア籍トレンガヌプロアジア (c)Sonoko.Tanaka

UCIアジアツアーリーダージャージを着た西谷泰治UCIアジアツアーリーダージャージを着た西谷泰治 (c)Sonoko.Tanakaスタート地点は、釣りの名所で知られる大きな湖の畔。日曜日も重なって、小さな子どもたちが釣り竿を片手に会場へと集まってきた。
今大会スプリント6勝目、ポイント賞ジャージがかかるアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)からはややナーバスな印象を受けたが、大部分の選手は終わりが見えた安堵感から、非常にリラックスした雰囲気だった。総合リーダー、ホセ・セルパ(コロンビア)擁するアンドローニ・ジョカトリは笑顔で写真撮影やらサインやらに対応する。



アジアツアーリーダージャージを着た西谷泰治

愛三工業レーシングは、2月末のUCIアジア個人ランキングで首位となった西谷泰治がスイスから届いたばかりのUCIアジアツアーのリーダージャージに身を包んで、スタートサインへとやってきた。「特別なジャージを着られるのは名誉なこと。ジャージに恥じない走りをしていきたい」と語る。このホワイトジャージはランキングが更新される3月末まで着用していく予定だ。

クアラトレンガヌでのサーキットに向かう大集団クアラトレンガヌでのサーキットに向かう大集団 (c)Sonoko.Tanaka

こうしてレースはスタートを迎え、2時間半ほどでクアラトレンガヌのサーキットへと到着、8kmほどのサーキットを6周回したのち、またしてもグアルディーニが集団の先頭で両手を挙げた。もはや、ゴールラインの手前で手をあげる余裕っぷり。選手からは「グアルディーニが1人抜きんでていたので、他の選手たちは2番手・3番手争いをしているような状況だった」との声が出る。


福島晋一がトレンガヌのサーキットを沸かす

地元の応援を集めたのはやはり拠点をクアラトレンガヌに構えるトレンガヌプロアジア。エーススプリンター、ハリフ・サレー(マレーシア)を後方集団に残し、この日もチームのキャプテン福島晋一が逃げに乗った。サーキットコースの中に自宅があるという福島は、左右に曲がりくねるテクニカルなコースを知り尽くしている。3人のアジア人選手を率いて、サーキットを先頭で駆け抜けた。

ファルネーゼヴィーニのコントロールで進むクアラトレンガヌでのサーキットレースファルネーゼヴィーニのコントロールで進むクアラトレンガヌでのサーキットレース (c)Sonoko.Tanaka逃げに乗って会場を沸かせた福島晋一(トレンガヌプロアジア)逃げに乗って会場を沸かせた福島晋一(トレンガヌプロアジア) (c)Sonoko.Tanaka

結果的に残り2周回で吸収され、サレーはスプリントで惜しくも4位という結果になったが、福島は今回のレースをこう振り返る。
「シーズン最初のレースが、シーズンでもっとも重要なレースだった。チームとしてはステージ優勝を狙っていたので、それができなかったのは残念だと思う。何度も逃げたけど、やっぱり第4ステージ、残り100mで捕まってしまったときが最大のチャンスだったとも思う。でも一生懸命走った結果であり、そのステージでサレーが3位に入ったので悔いはない。

アンドレア・グアルディーニ(イタリアファルネーゼヴィーニ)が先頭でゴールラインに飛び込むアンドレア・グアルディーニ(イタリアファルネーゼヴィーニ)が先頭でゴールラインに飛び込む (c)Sonoko.Tanaka総合優勝を成し遂げたホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)と総合2位のホセ・ルハノ(ベネズエラ)とマネージャーのジャンニ・サヴィオ氏総合優勝を成し遂げたホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)と総合2位のホセ・ルハノ(ベネズエラ)とマネージャーのジャンニ・サヴィオ氏 (c)Sonoko.Tanaka

去年は落車の影響で完走するのがやっとだった。今年はこれだけ毎日逃げられて、たくさんの人に応援してもらうことができた。久しぶりの大歓声のなか走れたことは選手冥利につきる思い。本当にいい瞬間だったと思う。

そして、いつかこういう場で自分が本当に納得できる結果を出したいと思う。チームと一緒にこれからたくさんのアジアのレースに出場する予定で、チームを通してマレーシアやアジアの自転車界の発展に貢献していきたい」。

念願のステージ優勝は叶わなかった愛三工業

レースを終えた盛一大と西谷泰治(愛三工業レーシング)レースを終えた盛一大と西谷泰治(愛三工業レーシング) (c)Sonoko.Tanaka同じくステージ優勝を狙っていた愛三工業レーシングは、品川真寛の14位が最高位、大会を通しては第8ステージでの西谷泰治の6位が最高位という結果だった。アジア最高峰大会で「ステージ1勝」は難易度の高い目標だったとはいえ、これまでの2回の出場ではステージ優勝を成し遂げていただけに、またアジアナンバーワンをめざす同チームにとっては課題の残る結果となった。

チームを率いて2年目を迎えた別府匠監督は「一生懸命走りましたが、目標の“1勝”はできませんでした。平坦でのゴールスプリントが多かった反面、愛三工業はスプリント向きのメンバー編成ではなく、チームとしてうまく対応できませんでした。しかし全体的に見て統一感が足りていなかったようにも思います。トラック競技からの連戦で西谷、盛のコンディションが万全ではなかったので、ほかの選手にはこれをチャンスと思って、アピールするような走りをみせてほしかった。チーム一丸となって、もっと目標に向け、何をすべきかということを考えていきたいと思います。

ただこれは選手に伝え切れていなかった自分の責任でもあり、抽象的な作戦では伝わらないということがわかりました。今後チーム全体の意識改革が必要になってくると思います。今回の反省を次に生かしていこうと思います。

これから参戦していくレースはアジアツアー2.2クラスのものが続きますが、そこでは自分たちでレースを動かしていきたいですね。ランカウイで得た経験を生かし、またアジア最高峰のランカウイを走ったチームとして、しっかりと走って結果を出したいです」と話す。

現地スタッフも含めて記念撮影をする愛三工業レーシング現地スタッフも含めて記念撮影をする愛三工業レーシング (c)Sonoko.Tanaka西谷は言う「第5ステージでは、真剣にリタイアしようかと悩んだほど、コンディションが悪いなかでのレースでした。やめずに最終日まで走ったことで、精神的にも強くなれたように感じています。
しかし1勝することはやはり大きなことで、簡単にできることではないと改めて痛感しました。アジアのレースとは言え、ランカウイにはヨーロッパのトップチームが参戦してきているので、ここで勝つことはヨーロッパで勝つことと同じレベルになっていると思います。でもそれは世界で活躍できる可能性が広がっていることも意味しています。自分だけでなく、若い選手にも勝ちを狙ってほしいと思います。

勝てなかったことを今後の課題とし、チームの空気作りから見直していきたいと思います。レースに呼んでもらうチャンスを大事に、選手1人1人がもっと緊張感をもって、意識を高めて望みたいと思います」

愛三工業レーシングの次戦は4月1日から6日の「ツアー・オブ・タイランド(2.2)」。またUCIアジアツアーリーダー西谷泰治は3月10日から17日の「ツール・ド・台湾(2.2)」にナショナルチームとして参戦する。



photo&text:Sonoko.Tanaka