山岳ポイントが連続した第5ステージで総合順位は大きく動いた。ステージ優勝を狙う愛三工業レーシングは西谷泰治が10位に入ったのが最高位。明日からに向け、より貪欲に勝利をめざす気持ちで一致団結する。

マラッカ名物のトゥクトゥクにコミッセールが乗り込むマラッカ名物のトゥクトゥクにコミッセールが乗り込む photo:Sonoko Tanaka大会最大の難所、超級山岳ゲンティンハイランドを翌日に控えた第5ステージ。今日が終われば、10日間の長いステージレースも折り返しとなる。

連日の暑さも相まって、すべて選手の表情にも疲労の色が滲むが、2級、2級、3級と山岳ポイントが連続する今日のレースは190kmと長く、逃げ切りや集団の絞り込みが予想できたため、ステージ優勝、さらに総合上位を狙う選手にとっては気の抜けない重要なステージとなった。

レース前に笑顔を見せる福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)レース前に笑顔を見せる福島晋一(トレンガヌ・プロアジア) photo:Sonoko Tanaka華やかなトゥクトゥクや、民族衣装に身をくるんだサイクリストも一緒にパレード走行に参加し、和気藹々とした雰囲気のなかでレースはスタートを迎えた。しかし、ニュートラル走行を終えると雰囲気は一変。この日の集団はそう簡単に逃げを容認せず、頻繁にアタックがかかるものの、すかさず吸収され、レースの序盤に集団は大きく縦に伸びた。

「どんな展開になっても、ステージ優勝を狙っていきたい」そう話す愛三工業レーシングの別府匠監督。

これまで愛三工業レーシングの得意な勝ちパターンはゴールスプリントが多かったが、とくに去年から、中堅選手への意識改革をはじめ、選手が持っているそれぞれの力、特長を生かした走りを強化し、そこから勝ちに結びつけることを目標のひとつとしている。そのため、この日も逃げの展開に持ち込みたい中島康晴らが頻繁にアタックをかける。

あくびをするデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)あくびをするデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) photo:Sonoko Tanakaレース後にポーズを取るネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・バラクーダ)レース後にポーズを取るネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・バラクーダ) photo:Sonoko Tanaka


愛三工業「勝てるチャンスがあったステージだった」

アタックを仕掛ける中島康晴(愛三工業レーシング)アタックを仕掛ける中島康晴(愛三工業レーシング) photo:Sonoko Tanaka結果として、愛三工業レーシングのステージ最高位は西谷泰治の10位。山岳ポイントを経て約半数ほどに絞られた先頭から24秒差のメイン集団でヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)に次ぐ2番手でゴールした。

ステージ優勝はホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)、残り6キロでアタックをかけたダレン・ラプソーン(オーストラリア、ドラパック)に残り1キロで合流し、ゴール前で先行した。

今日もヤシのプランテーションを駆け抜ける今日もヤシのプランテーションを駆け抜ける photo:Sonoko Tanaka別府監督はこの日のレースをこう振り返る。「勝てるチャンスのあるレース展開だった。西谷は勝負勘がいいので、最後のアタックに付いていけなかったことを悔やんでいて、“付いていければ勝てたと思う”と話しているが、コンディションがベストではなかったことが響いてしまった。同じメイン集団にいた伊藤雅和と鈴木謙一には、もう少し、勝ちを意識して走ってほしいな、というのが正直なところ。強いことと勝つことは違うので、よりどうやったら勝てるか、今日なら半分に絞られた集団でいかにして仕掛けて勝つか、チーム全体の課題にもなるが、これからさらに考えていきたい。

明日の超級山岳ゲンティンハイランドでのチームのオーダーは、山岳が得意な伊藤雅和と鈴木謙一が引き続きチームのエース。現在、伊藤は総合38位に付け、上位の選手が山岳で脱落することも予想できるので、総合ランクアップに繋がる好タイムでゴールしてくれることを期待したい。また伊藤はまだ若いので、一つ一つのレースを前で走って、自信を付けてくれたらいいと思う」。

先頭集団を単独で追走する福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)先頭集団を単独で追走する福島晋一(トレンガヌ・プロアジア) photo:Sonoko Tanaka沿道に集まった学生たち沿道に集まった学生たち photo:Sonoko Tanaka


山岳でエースを担う伊藤雅和

レース前に作戦を練る別府匠監督と伊藤雅和(愛三工業レーシング)レース前に作戦を練る別府匠監督と伊藤雅和(愛三工業レーシング) photo:Sonoko Tanakaチームの期待を背負う伊藤雅和は鹿屋体育大学出身、チーム所属2年目の若手選手だ。

明日のレースへの抱負をこう語る。「今日の登坂区間は有力選手たちがコントロールし、山頂手前になると一気にスピードアップする形だった。有力選手たちは他の選手の出方やコンディションを伺っているような感じだった。明日はそんなこともなく、みんな全力で勝負に出ると思うので、周りのペースに惑わされることなく、前の方でゴールしたいと思う。目標は20位以内。

去年1年、チームにおける自分の役割を模索しながら走ってきた。何ができるかを考えたとき、自分は総合順位を狙うことができると思うようになり、冬場は登坂区間を意識したトレーニングも行った。去年よりやることに迷いがなくなっているので、明日は頑張りたいです」。

明日のゲンティンハイランドにゴールするステージで、今年の総合順位はほぼ確定する。強豪チームにアジア勢がどう挑むのか、楽しみにしたいと思う。

photo&text:Sonoko Tanaka