ジェオックス・TMCを先頭にマドリード周回コースへジェオックス・TMCを先頭にマドリード周回コースへ photo:Kei Tsujiブエルタ・ア・エスパーニャの最終ステージとなる第21ステージは、ペーター・サガン(スロヴァキア、リクイガス・キャノンデール)がスプリントを制し今大会2勝目を挙げ、集団内でゴールしたファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)が総合優勝を飾った。

逃げるダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ら3名逃げるダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ら3名 photo:Kei Tsuji長かった3週間の激闘も、ついに最終日。スペインの首都マドリッドの周回コースを走る95.6kmで、このスペイン一周レースは終わりを告げる。ここまで走り抜いた選手たちによる祝福ムードは、マドリッドの周回コースに入る約20kmの間続く。

集団前方で走る土井雪広(スキル・シマノ)やペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)集団前方で走る土井雪広(スキル・シマノ)やペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiマドリッドに入ると選手たちの表情は一転。この3週間見せ続けた集中力と獲物を狙う鋭い顔つきになる。数多くのアタックから、一時は15人ほどが先行する場面も見られたが、この日の逃げは45km過ぎで決まる。ホアン・オラク(スペイン、カチューシャ)ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、アルベルト・ベニテス(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)の3名がこのブエルタ最後の逃げグループを形成した。

ステージ3勝目をアピールしてゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ステージ3勝目をアピールしてゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiこの3人は1分弱の差を保ったまま逃げ続けるが、これは集団を牽引するスプリンターチームのコントロール下。前日にステージ優勝を飾ったばかりのダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)を擁するレオパード・トレックや、今大会ステージ1勝を挙げているファンホセ・アエド(アルゼンチン)のサクソバンク、ここまで区間優勝無しのアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)のためにランプレ・ISDが代わる代わる集団を牽引。

日本人として初めてブエルタを完走した土井雪広(スキル・シマノ)日本人として初めてブエルタを完走した土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsuji残り10kmでその差が30まで縮まると、オラクがアタックで単独飛び出す。しかし集団の勢いには抗えず、残り8kmでこの日の逃げは全て吸収。スプリンターたちの時間が始まる。

最終盤にかけていいレオパード・トレックが主導権を握るが、昨日と違ってこの日は人数が足りない。レオパード・トレックのアシストが消えると、集団の先頭に立ったのはペタッキ。しかしゴールまで500mを残しての先頭に、ペタッキは足を止める。

一瞬スピードの緩んだ集団から、トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)がクーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)を伴ってスプリントの口火を切ると、そこにペタッキ、ベンナーティ、サガンが反応。デコルトとは違うラインからこの3名がデコルトに覆い被さると、最後は横一線のスプリントゴールに。

手を上げたのは3人の中で一番後ろからスプリントしたサガン。伸びのあるスプリントで今大会3勝目を挙げた21歳は怪物の名に恥じない鮮烈なグランツールデビューを飾った。

集団内で両手を上げたのはマイヨロホのファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)。13秒差という、史上まれに見る僅差での戦いを制し、第66代ブエルタ・ア・エスパーニャ王者の座に輝いた。13秒を取り返すために最終週に果敢な走りを見せたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は総合2位。しかしそのポテンシャルの高さは、今後の注目株筆頭と言えるだろう。3位にはチームスカイのリーダー、ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス)が入っている。

そして集団の中で手を上げたもう一人の選手がバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)。ステージ9位に入り、最終日にしてポイント賞ジャージの奪取を決めた。

土井雪広は147位で完走

土井雪広(日本、スキル・シマノ)は56秒遅れの147位で最終日を終え、総合は4時間30分47秒遅れの150位で初のグランツールを完走。第6ステージでは逃げを決め、その後はチームのための仕事を着実にこなした土井。

ブログには「伝えたいことがありすぎて今の時間では足りないので、応援して下さったすべての方に、ありがとうだけ言わせてください!」と万感の思いを綴っている。厳しいブエルタを完走した経験が、土井をさらに強い選手にするはずだ。

4年連続4度目の山岳賞に輝いたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)4年連続4度目の山岳賞に輝いたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) photo:Tour of Spain/Yuzuru Sunada総合優勝を飾ったファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)総合優勝を飾ったファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC) photo:Tour of Spain/Yuzuru Sunada逆転でポイント賞ジャージに輝いたバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)逆転でポイント賞ジャージに輝いたバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) photo:Tour of Spain/Yuzuru Sunada


総合優勝を飾ったファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)
「このブエルタにはカルロス・サストレとデニス・メンショフのアシストをするためにやってきた。3週間経って、僕がブエルタの総合優勝について質問を受けていることが信じられないね。18ヶ月に及ぶうつ状態の後でだったから、ブエルタに臨むのになんらプレッシャーもなかったし、ただ自分のできることをしようとしたことは、すごくいいことだったと思う。アングリルでマイヨロホを獲得してからは、もちろんストレスはあったけれど、毎日このジャージを楽しんでもいたんだ。

この優勝が、将来にもっとコンスタントに成績を出すための最初の一歩になればいいと思っている。今までもいくつかのレースでは勝ってきたけど、今回わかったのは、いいコンディションで臨めればグランツールで勝てるということだ。外国の大きなレースでも総合争いに顔を出せると思う。それは僕の望みでもあるね」


ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第21ステージ
1位 ピーター・サガン(スロヴァキア、リクイガス・キャノンデール)      2h20'59"
2位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)         
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)         
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)               
5位 ニコラス・マース(キュラソー、クイックステップ)                     
6位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ)               
7位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)     
8位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)       
9位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)       
10位 ヴィセンテ・レイネス(スペイン、オメガファーマ・ロット)                 
147位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                   +56" 


個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)              84h59'31"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                   +13"
3位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)               +1'39"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)                     +2'03"
5位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)                +3'48"
6位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)            +4'13"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)       +4'31"
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)        +4'45"
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                  +5'20"
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)                  +5'33"
11位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)           +5'50"
12位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)            +7'04"
13位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)          +7'22"
14位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)                +8'52"
15位 セルゲイ・ラグディン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ)           +8'57"
16位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)           +10'25"
17位 ワウテル・ポーエルズ(オランダ、ヴァカンソレイユ)              +11'42"
18位 ロバート・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)               +13'27"
19位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)                +15'07" 
120位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックスTMC)              +20'08"
150位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                      +4h30'47"

ポイント賞(プントス)
1位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              122pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)          115pts
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)    101pts


山岳賞(モンターニャ)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)         63pts
2位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)   56pts
3位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)       42pts


複合賞(コンビナーダ)
1位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)        9pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)           16pts
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)             17pts

チーム総合成績
1位 ジェオックスTMC       254h32'28"
2位 レオパード・トレック       +10'19"
3位 エウスカルテル          +16'44"


text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos, Unipublic