山岳三連戦の中日となった第14ステージ。残り2kmでアタックしたターラマエが山頂ゴールを制し、コフィディスのブエルタ2勝目を上げた。総合ではチームスカイのウィギンズとフルームが1位・2位を独占。ホアキンが大きく順位を落とし、総合優勝線戦から離脱した。同じくニーバリも大きく後退した。

ステージ優勝したレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)

グランツール初勝利を挙げたレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)グランツール初勝利を挙げたレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) photo:Cor Vos(スタート前)
(第11ステージでは)体温が39度あった。幸いなことにチームメイトのサラモティンがずっと助けてくれた。そうじゃなかったらゴールできなかった。今は良くなってきた。昨日は最初の山頂では先頭集団の25人に入っていたんだけど、まだすっかり回復したとは言えなかった。うまくいけば、近いうちにまた逃げに入るつもりだよ。

ターラマエ、デラフエンテがリードするこの日の先頭集団ターラマエ、デラフエンテがリードするこの日の先頭集団 photo:Tour of Spain/Graham Watson(ゴール後)
——3日前から病気だったというのは?
本当だよ。先週末から喉が痛くて、休養日には本当に病気になっていた。体温が39度まで上がって、とても具合が悪かった。その翌日は1人で走った。その日ステージ優勝したチームメイトのダヴィ・モンクティエから、はるかに遅れてしまった。ブエルタからの撤退も考えて、自分をサポートするスポーツディレクターのステファヌ・オジェのところまで感謝を伝えに下がったんだ。オジェ監督には「君の気持ちはわかる。自分も同じ経験をしたことがある。でも、レースに残るんだ。ゴールまで食いしばれ!」と励まされた。それで、残り35kmでスプリンターたちのグルペットに合流したけれど、残り15kmで置いていかれた。ひどかったね。絶対に回復しないとも思った。翌日(第12ステージ)もまったく回復していなかった。昨日はよくなってきて、今日は勝った。ちょっとした奇跡だよ……。

——今朝のスタート時のプランは?
静かにしているつもりだった。でも、最後のアタックでは、その動きに反応した。メイン集団も同じように追走するだろうと思った。うしろを振り返ると、僕らは18人だった。逃げ集団になってしまっていて、最後まで保たないんじゃないかと気がかりになった。残り5kmまでは、デラフエンテと一緒に走った。僕たちは捉まるだろうと思っていたよ。デラフエンテを警戒して、残り2kmでアタックした。彼がコーボを待ったのか遅れたのかはわからないけれど、このステージでは勝てると確信したんだ。

——この勝利の意味は?
こういう風に勝ちたかった! 最後に勝ったのは2年前のツール・ド・ランだった。ワールドツアーのレベルでの勝利は逃してきた。ステージレースで着順がよくても、優勝はなかった。自分にはレースに勝つ力がないかもしれないと思うこともあった。でも、今日はすべてがうまくいった。


総合&ステージ5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)

マイヨロホを守ったブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)マイヨロホを守ったブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosチームにとっていい日だった。でも、自分は流れに任せただけだ。今日はトップ10を目指した。調子はよいけど、身体へのダメージはある。グランツール中は、誰もがダメな日を経験することがある。ニーバリのような選手が遅れたのも驚くことじゃない。明日の僕にも起こるかもしれない。騒ぐべきことではないんだ。こういうレースでは、トップに躍り出た翌日に遅れてしまうのは、よくあることなんだ。

壊れたテープのように繰り返すけど、チームがまたすばらしい仕事をしてくれた。彼らがいなかったら、この場所にはいなかっただろう。最終日に向けて、明日はとてもきついステージだ。最後までずっと戦い続けるつもりだし、うまくいけばマイヨロホを守れるかもしれない。

調子もよかったし、登りでも手応えを感じた。もちろんダメージはあったし、簡単じゃなかったけれど、他のみんなも同じようにダメージを受けていた。このレースは、誰が一番長く耐えられるかを競うものなんだ。

アングリルは極めて難しいものになりそうだ。でも、さっき言った通りに、誰にとっても難しいし、僕もまたずっと戦うことになる。今日タイム差を稼げたのは、大きな自信になった。状況も少しはよくなったと思う。


ポイント賞を維持・総合18位に大きく後退したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

補給を受け取るホアキン・ロドリゲス(右、スペイン、カチューシャ)とバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)補給を受け取るホアキン・ロドリゲス(右、スペイン、カチューシャ)とバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vos(スタート前)
きつい登りだ。レースは混沌とするだろう。今日と明日で、ぼくが総合での3分の遅れを取り戻すのは、不可能じゃない。


(ゴール後)
ブエルタでの総合優勝の夢がついえてしまった。最後の登りはひどく苦しかった。今日はあれ以上には走れなかった。明日もまた苦しいことになるだろうと思う。だけど、総合上位に絡む権利をすっかり失なった。別のチャンスを探すしかないね。



エストニアカラーのショーツを履くダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)エストニアカラーのショーツを履くダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) photo:Unipublic山岳賞のダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)

(スタート前)
今朝はかなり疲れを感じた。山岳賞ジャージの大きなライバルのマッテオ・モンタグティへの対応は、チームに任せたい。自分ではやるつもりはない。


(ゴール後)
理想的なシナリオだったよ! 逃げ集団にチームメイトのレイン・ターラマエがいて、ステージと山岳ポイントを獲ってくれた。そのおかげで山岳賞を維持できた。昨日から疲れていて、今日のステージで争う気はなかった。レインが僕のためにやってくれたんだ。これまでにステージ2賞と山岳賞ジャージを獲得できて、コフィディスにとってはすばらしいブエルタになっているよ。



複合賞・総合3位のバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)

今日の自分の働きには満足している。ブラドレー・ウィギンズとクリス・フルームの後ろにずっとついているのは、かなり苦しかった。ニーバリとロドリゲスがついてきていないのを聞いて、自分がいい走りをしているのがわかった。今日はぼくにとって完璧な一日だった。日に日にトップ3に近づいてきているからね。


2番手でラ・ファラポーナを登るダビ・デラフエンテとファンホセ・コーボ(ともにスペイン、ジェオックス・TMC)2番手でラ・ファラポーナを登るダビ・デラフエンテとファンホセ・コーボ(ともにスペイン、ジェオックス・TMC) photo:Kei Tsuji第14ステージ敢闘賞・総合3位のダビ・デラフエンテ(スペイン、ジェオックス・TMC)

最後の登りはじめでは、追走集団に捉まると思っていたけれど、そうならなかったので驚いた。ひどく疲れていたけれど、チームメイト(コーボ)が後ろからやって来て、総合で大成功しそうだとわかったら、無線で指示された通りに止まって待つのは当然だ。

こういう状況では、もう力が残っていなくても、なんとか力を絞り出さなければならない。チームメイトの誰が来たとしても、同じことをしただろう。チームはぼくの犠牲に報いてくれると思うよ。


総合2位・ステージ6位と好調のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

完璧な走りを見せたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が手を挙げる完璧な走りを見せたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が手を挙げる photo:Tour of Spain/Graham Watson(スタート前)
ボーナスタイムは考えてない。体力の無駄づかいになるからね。僕はブラドレー(ウィギンズ)の順位を維持したいだけだ。今日は自信があるかって? みんなと同じで、昨日のステージで脚が疲れ切っている。あれは厳しかった。

(ゴール後)
無線で、他の総合のライバルたちが脱落していったのを聞いて、とても気分がよかった。ブラドレー(ウィギンズ)はすばらしかった。ものすごく調子がいいんだ。彼はこのブエルタで優勝するのにふさわしい選手だ。今日の僕たちの目的は、ライバルに対するタイム差を少しでも稼いで、明日のアングリルに備えることだった。それはうまくやれたと思う。個人的なことだけど、契約がまだで、来年のことが決まっていない。でも、近いうちに決まってほしいね。


区間2位に入り総合で4位まで浮上したファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)区間2位に入り総合で4位まで浮上したファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC) photo:Tour of Spain/Graham Watson総合4位・ステージ2位のファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)


ここ数日、調子がよかった。今日のステージは仕掛けるのに最適な日だったし、明日もそうなりそうだ。スポーツディレクターのマチン・フェルナンデスと話したところ、残り4〜5kmでアタックしろと指示された。有力選手たちが僕のアタックには反応しなかったのは、注意力がなかったんじゃなく、体力がなかったんだ。


これで総合のタイムを少し取り戻せた。これが目的だったんだよ。最有力選手のニーバリやプリト(ホアキン・ロドリゲス)を上回ったことが重要なんだ。明日は総合優勝候補4人の様子を見たい。アングリルは僕向きというわけではないけど、ウィギンズ向きでもない。自分自身ではトップ3が目標で、そうなれば上出来だ。



総合7位に後退したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)

ラ・ファラポーナで失速したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ラ・ファラポーナで失速したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiサンロレンソ峠の登りでは調子がよかったんだけれど、ステージ最後の登りで気力が尽きてしまった。たぶん補給がうまくいっていなかったんだと思う。


でも、もう補給を摂取する時間はなかった。遅れてからは、ダメージを回避しようとした。こういう衰弱は、誰にでも起きることだ。たとえ最高の選手たちにもね。明日は明日だ。きつい一日だろうし、また別の戦いが起きるだろう。



果敢にアタックしたダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)

実は、スカイとジェオックスが並外れたリズムでペースを作っていたんだ。チームとしてベストは尽くした。いい仕事をしたけれど、ライバルたちが強力すぎて、計画を崩されてしまったんだ。この先不可能なことは何もないけれど、総合での順位を守るのはとても難しくなってしまったね。


総合6位に後退したフレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)

昨夜はよく眠れなかったんだ。だから今日のタイムロスを抑えることができて、ほっとしている。もっと悪いことになる可能性もあったんだ。それでも現時点の総合順位でこの位置につけているのはすごいことだと思う。もう1日、アングリルを苦しんで登る日が残っている。それが終われば休めるし、最終週は少し楽になるだろう。



ソースは現地取材、記者会見、主催者公式サイト、チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。


translation & text : Taiko.YAMASAKI + Seiya.YAMASAKI
photo:Kei Tsuji,Cor Vos,Unipublic