8月21日、ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第2ステージが行われ、登り基調で混戦模様のスプリントをタイミングよく飛び出したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)が制した。マイヨロホはステージ6位のダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)の元へ渡っている。

ブエルタに日本人として初出場中の土井雪広(日本、スキル・シマノ)ブエルタに日本人として初出場中の土井雪広(日本、スキル・シマノ) photo:Cor Vos昨日の舞台ベニドルムの北にあるラ・ヌシアからプラヤス・デ・オリウエラ間の174kmで争われた第2ステージ。前半に3級山岳が待つものの、中盤から後半にかけてはほぼフラット。しかしコースプロフィールに大きく表れないゴール前の緩やかな登りがこの日の勝負を決めることになった。

現地時間13時30分にスタート。直後からアタックが連発し、ストゥヴ・ウアナール(フランス、アージェードゥーゼル)の動きに乗じたポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)、ヘスス・ロセンド(スペイン、アンダルシア・カハスール)、アダム・ハンセン(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)の4人が今ブエルタ最初の逃げグループを形成する。

25kmを過ぎて早くも5分近いタイム差を稼ぎだした先頭の4名。28.6km地点にある3球山岳レリャウではマルテンスが先頭通過を果たす。4人はまとまったまま下りを終えて平坦区間へと入っていく。集団ではしばらくコントロールしていたレオパード・トレックに替わってスプリンターのチームが牽引に加わりだすと、集団先頭には日本人の姿が。

日本人として初のブエルタ出場を果たしている土井雪広(日本、スキル・シマノ)がチームのエーススプリンター、マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)のために集団を引っ張る。現地放送局も小柄ながら力強い走りを見せる土井を大映しにする。グランツールの大舞台で、しっかりチームのための仕事を土井はこなす。

オリウエラの街をスタートしていく集団オリウエラの街をスタートしていく集団 Tour d'Espagne/Graham WatsonHTC・ハイロードやリクイガス・キャノンデールも選手を出し合った結果、逃げる4名とのタイム差は残り35kmで1分半にまで縮小。これにプレッシャーを感じたハンセンが残り32km地点で単独アタックを敢行。これにより逃げグループは崩壊し、集団対ハンセンの様相を呈す。

しかしハンセンの粘りも残り16kmで吸収され、勝負は集団スプリントに持ち込まれる。集団の主導権を握るのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を擁するHTC・ハイロード勢。しかしこの日はカヴの重要なスプリント列車要員のマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)がリタイヤするなど、不安材料も。

逃げグループを先導するストゥヴ・ウアナール(フランス、アージェードゥーゼル)逃げグループを先導するストゥヴ・ウアナール(フランス、アージェードゥーゼル) Tour d'Espagne/Graham Watson残り10kmを切り、早い段階で人数を費やしたHTC・ハイロードの統率が若干乱れると、ラボバンクやスキル・シマノ、そしてリーダーのヤコブ・フグルサング(デンマーク)を擁するレオパード・トレックが集団の前方へ。混戦状態のまま残り1kmで集団から飛び出したのはダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、レオパード・トレック)。その前方にはゴールまでの登りが待ち構える。

この登りがスプリンターを沈黙させた。トレインを失ったカヴェンディッシュを筆頭に、このようなスプリントを得意とするアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)やオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)らもポジション取りに失敗し後退する。


混戦の登りスプリントを制したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)混戦の登りスプリントを制したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ) Tour d'Espagne/Graham Watsonヴィガーノの後ろにつけていたトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)がスプリントでもがくが、タイミングが早すぎて失速。するとタイミングをうまく合わせたビセンテ・レイネス(スペイン、オメガファーマ・ロット)が一気に飛び出し集団を突き放す。レイネスを追えたのはクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)ただ一人。

サットンの存在に気づいていなかったレイネスはただ一心にペダルを踏むが、スプリント力に優れるサットンがゴール手前でかわして区間優勝を遂げた。レイネスは予期せぬ敗北の悔しさからハンドルを叩く。3位には注目の若手スプリンター、キッテルが入り、登り基調のスプリントもこなせる素質の片鱗を伺わせた。

マイヨロホを獲得したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)マイヨロホを獲得したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック) Tour d'Espagne/Graham Watson集団の牽引と逃げの吸収に尽力した土井は集団から離れて7分14秒遅れでゴール。自身のブログで「今日テレビの前で見ていた方もわかるかと思います。今日のような走りが今回のツアーの僕の仕事です。エースのために力を費やす。僕にやってくるチャンスは第2週からだと思います。」と語る通り、しばらくはキッテルのための走りになるだろうが、集団内で早くも存在感のある走りを見せてくれた。

スプリント勝負となったことで、マイヨロホはフグルサングからこの日ステージ6位に入ったチームメイトのダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)の元へと渡った。登りもスプリントもこなせるピーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が総合3位に浮上しており、明日以降のマイヨロホ獲得に目を光らせている。

翌第3ステージは後半に2つの3球山岳の待つ、平坦ステージと呼ぶには難易度の高いステージ。クラシックレースのような早い展開と混戦に持ち込まれる可能性が高そうだ。総合狙いの選手も思わぬタイムロスを警戒する必要がある。

ステージ2位のビセンテ・レイネス(スペイン、オメガファーマ・ロット
「勝てる足があったのに勝利を逃して失望している。最後の登りでは完璧なポジションを得ていたし、今日は自分の日だと疑うことはなかったよ。僕を追い抜いていったクリス・サットンの存在に気づいていなかったことは不運だったとしか言いようがない。普段はアンドレ・グライペルのためにもうかれこれ数年働いているが、カヴェンディッシュの牽引役もかつては同じようにしていた。マヨルカ島に住んでいるけれど、オリウエラの海浜には来たことがあるんだ。最後の登りは僕には何も目新しいものはなかった。これからの数日で違うチャンスが巡ってくるのを待つよ…」

区間3位に入ったマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)
今日の最終局面で起きたことに驚いている。最後の1kmでは2人のチームメイトに助けてもらった。最後の登りで僕が反応したとき、すでに先頭の2名はゴールラインに達していた。それでも僕にはこの初めてのグランツールの初めてのスプリントでの、ステージ3位という結果はうれしいものだよ。」

マイヨロホを獲得したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)
「グランツールのリーダーであることに喜びを感じるよ。これは僕のキャリアで5度目のことだけど、ステージ勝利とは違っていることは明らかだよね。これが今日の目標だったんだ。ジロの出場を無いものにしたケガと今シーズンを考えれば区間6位も悪い成績ではない。でももっとやれる自信は当然あるよ。ラスト3kmはいくつかの狭いカーブのせいで難しく、下りがあってレースを読みにくいものにした。このマイヨを獲得したことでがっかりしなくてすんだよ。それに明日も僕に勝機があると思う。ブエルタをリーダーとして走ることはとてもいいことだね。」


ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第2ステージ結果
1位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)        4h11'41"
2位 ビセンテ・レイネス(スペイン、オメガファーマ・ロット)        
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
5位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、ラボバンク)   
6位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック) 
7位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)     
8位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)
10位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード) 
194位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                        +7'14"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ダニエル・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)      16'30"
2位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)        
3位 ピーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)      +04" 
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)    
5位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)   
6位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)           +09" 
7位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)       +10" 
8位 マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)  
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 ロバート・キセロフスキ(クロアチア、アスタナ)
14位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)           +14"
21位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)  +18"
28位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)  +25"
29位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           +25"
35位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)           +28"
39位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)      +29"
41位 ステフェン・クルイシュウィック(オランダ、ラボバンク)       +30"
47位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)         +32"
63位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)      +42"
71位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックスTMC)           +43"
89位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)         +55"
100位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックスTMC)         +1'03"
141位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)       +1'47"
193位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                 +7'52"

ポイント賞(プントス)
1位 クリストファー・サットン(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) 25pts
2位 ビセンテ・レイネス(スペイン、オメガファーマ・ロット)      20pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)           16pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)             3pts
2位 ヘスス・ロセンド(スペイン、アンダルシア・カハスール)      2pts
3位 アダム・ハンセン(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)    1pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ヘスス・ロセンド(スペイン、アンダルシア・カハスール)      137pts
2位 ポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)             148pts
3位 アダム・ハンセン(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)    173pts

チーム総合成績
1位 リクイガス・キャノンデール     12h51'37"
2位 レオパード・トレック          +06"
3位 モビスター               +10"



text:Yufta Omata
photo:Cor Vos, Unipublic