ジロ・デ・イタリア第4ステージはドロミテ山岳決戦第1戦。口が閉まらないような美しい山々に見下ろされた山岳リゾートで、殺し屋「キラー」の異名をもつダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)がハイスピード上りスプリントを制した。

アームストロングの注目度は絶大!

アスタナのチームバスの周りには幾重にも人垣ができたアスタナのチームバスの周りには幾重にも人垣ができた photo:Kei Tsuji人口20万人オーバーの都市パドヴァで、ジロのドロミテ山岳決戦は動き始めた。スタート地点が置かれたのは、パドヴァ中心に位置するプラート・デッラ・ヴァッレ広場。300m四方の巨大な広場は、平日にも関わらず観客でごった返した。

相変わらずランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)の注目度は絶大だ。総合優勝候補の筆頭イヴァン・バッソ(イタリア)擁するリクイガスのチームバス周りも凄いが、アスタナのチームバスはもっと凄い。

9km地点で集団から飛び出したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)ら9km地点で集団から飛び出したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)ら photo:Kei Tsuji財政難で存続が危ぶまれているチームだが、“出待ち”する観客の熱狂ぶりを見ているとそんなことどこ吹く風。カザフスタンチームであることを忘れてしまうほど、すでにアームストロングチームという印象が強く、辺りは活気に満ちていた。

結局アームストロングがバスから出てきたのは出走サインのリミットぎりぎり。隣のマダムが「Il piu importante, sempre l'ultimo(主役はいつでも最後)」と、目を輝かせながらつぶやく。今回の取材は格言に溢れている。
今大会最初の頂上ゴール、悪魔おじさん登場

グランツールの山岳でお馴染みの悪魔おじさんグランツールの山岳でお馴染みの悪魔おじさん photo:Kei Tsujiこの日のゴール地点サンマルティーノ・ディ・カストロッツァは、切り立った山々に見下ろされたスキーリゾート。ゴールが設定された標高1466mに向かって、サイクリストが我先に上っていく。

こちらは旅のお供である500(フィアット・チンクエチェント)のエンジンをかき鳴らし、警察にお尻をつつかれながら上りを進んでいく。

美しい山々を仰ぎ見るゴール地点美しい山々を仰ぎ見るゴール地点 photo:Kei Tsuji横目に美しい山々を見ながら淡々と6〜7%ほどの勾配を進むと、路面には見慣れた槍のマークが現れた。そう、グランツールでお馴染みの悪魔おじさんだ。時間が無かったのでパスするつもりだったが、目が合ったので呼び止められ、その雄姿を撮らせていただいた(撮らされた)。

圧巻の山岳風景が広がるゴール地点は、案の定、観客でごった返していた。撮影ポイント探しはラスト150mコーナーで時間切れ。爆音とともに中継ヘリが頭上に現れ、まもなく先頭マウリシオ・ソレール(コロンビア、バルロワールド)が単独で目の前に。

ソレールから数秒遅れて現れたダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)は、見るからに勢いがあった。選手に通過から数秒後、ゴール地点から聞こえる大歓声で、追撃者の勝利を確信した。
喜びに浸らず前を見据えるキラー

ステージ優勝を飾ったダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)ステージ優勝を飾ったダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) photo:Kei Tsujiステージ優勝を果たしたディルーカだが、記者会見で祝賀ムードは皆無だ。「今日の上りは難易度が低くてスプリントに持ち込まれたが、明日は違う。明日こそが本当のステージだ。アルペ・ディ・シウージの上りは今日みたいに甘くない」。すでに頭の中は第5ステージでいっぱいの様子。

「明日は自分がアタックしなくても、他のライバルチームが攻撃を仕掛けてくるだろう。自分も調子が良ければアタックしてみる」。2秒差の総合2位につけているディルーカだが、「最終日にマリアローザを着たいから、マリアローザを狙って攻撃を仕掛けることは無い」と淡々と語った。

シャンパンを開けるトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)シャンパンを開けるトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) photo:Kei Tsuji「最初はロジャースをアシストする予定だった。でも彼がトラブルで下がってから、僕が前に出た。結果的にチームとしてジャージを獲得出来てよかった」と語るのは、スウェーデン人として久々にマリアローザに袖を通したトーマス・ロヴクヴィスト(チームコロンビア)。

3年前からトレーニング環境を求めてスイスに移住し、山岳力の強化に努めてきたというロヴクヴィストは、モンテパスキ・ストラーデビアンケ・エロイカトスカーナに続くRCSスポルト主催レースでの活躍だ。「今年は過去に無いほど上れている。いつかはグランツールで表彰台に上りたいとは思っているが、まだ総合優勝を考えるのは時期尚早」と続ける。

アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)に明け渡したマリアローザを一日で取り返したチームコロンビアは、ロヴクヴィストを軸に総合争いの舞台に立つ。第5ステージは難関アルペ・ディ・シウージの頂上ゴールが牙を剥く。

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