モルベーニョ~サンペッレグリーノ・テルメ151kmで争われたジロ第18ステージはゴール手前30kmの2級山岳ガンダ峠で飛び出した3人が逃げきり、スプリントを制したエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がステージ優勝を飾った。

3人のスプリントを制したエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)3人のスプリントを制したエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) (c)RCS Sports

別府史之(日本、レディオシャック)と歌手のパオロ・ベッリ氏別府史之(日本、レディオシャック)と歌手のパオロ・ベッリ氏 photo:Kei Tsuji最終週を迎えているジロも残すところ4ステージのみ。待ち構える難関ステージを前に、少し難易度が低い、距離の短いステージだ。全体にコース設定が厳しいこのジロにおいて、数少ないつなぎステージの一つ。そして、多くの選手にとって、ステージ優勝を狙う実質的に最後のチャンスになる。

この日設定されたGPMは一つだけで“平坦ステージ”に分類されている。しかし、コースは平坦と言えるほどやさしくはない。
前半はジロ・ディ・ロンバルディアにも登場する、北イタリア随一の保養地コモ湖沿いの平坦路。そしてベルガモでロンバルディア平原に一瞬触れるが、再びコースは山岳地帯へと入る。

ゴールの30km手前に登場する2級山岳ガンダ峠は、平均勾配7.3%・最大勾配15%・登坂距離9.2kmという本格的な登り。
落車したオリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)落車したオリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Riccardo Scanferla有名な炭酸ミネラルウォーターの産地にして温泉保養地であるサンペッレグリーノ・テルメでは、逃げグループもしくは登りで縮小した小集団によるスプリントが繰り広げられるだろうと予想された。

スタート直後からアタックの応酬となる。多くの選手が今日が最後のチャンスと知っている。そして、多くの選手が逃げに乗ろうとアタックが繰り返された。
無数のアタックがかかり、集団はアメーバのように長く伸びては縮み、分断しては再びつながるという動きを繰り返した。最初の1時間の時速は53km/hにのぼった。

コモ湖沿いの平坦路ではすべての動きが吸収され、グルッポ・コンパット(集団はひとつ)に。その集団が崩壊する集団の中程に下がった状態でベルガモ旧市街を登るアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)集団の中程に下がった状態でベルガモ旧市街を登るアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) photo:Kei Tsujiきっかけになったのが古都ベルガモ旧市街、チッタ・アルタへの登りだ。

丘の上にコムーネと呼ばれる旧市街を形成するベルガモ。そこへ上り詰める昔ながらの狭い石畳の道の出現が、慣れないイタリア国外選手たちを驚かせる。春のクラシックのような難しい石畳と上り勾配が集団を分断する。
旧市街を出た集団は3つほどのグループに分かれた。ゴールまで残り50km、コンタドールを含む集団は追走を止め、動きが落ち着く。先頭グループからは逃げのチャンスとばかりさらにアタックがかかる。

20人の中集団から、残り45kmでメンバーは6人に絞られる。

ベルガモ出身のマルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)が逃げグループを率いるベルガモ出身のマルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)が逃げグループを率いる photo:Riccardo Scanferla絞られた6人のメンバー
マルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)
エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)
ラッセル・ダウニング(イギリス、チームスカイ)

勝負を分けた2級山岳ガンダ峠

この日唯一の山岳ポイント、平均勾配7.3%・登坂距離9.2kmという2級山岳ガンダ峠に登りだすと、この6人からカペッキ、ピノッティ、シールドライヤースの3人が抜け出しに成功した。

エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ら3人が2級山岳ガンダ峠で抜け出すエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ら3人が2級山岳ガンダ峠で抜け出す ガンダ峠には大勢の観客が詰めかけ、さながら山岳ステージのようだ。後方第2グループからパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がアタックし、ハイペースを保ちながら前の3人を追う。

しかしカペッキら逃げる3人は厳しい勾配の続くガンダ峠を、うまく協力し合いながら逃げ続ける。
ガンダ峠の下りは、テクニカルなコーナーが続くハイスピードダウンヒルだ。3人は先頭交代を繰り返しながら、コンタドール集団に4分ほどの差を持って逃げ続ける。

ティラロンゴは先頭から遅れたブランビッラに合流し、ふたりで追う。しかし下りがテクニカルすぎて思うように差を詰めることはできなかった。

カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)が率いる追走グループカルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)が率いる追走グループ photo:Riccardo Scanferla下りきった3人はゴールまで残り5.5km。この平坦区間の勝負でステージ優勝者が出ることが明確になった。3人は残り3kmまでうまく協力体制で走り、後続を寄せ付けなかった。

興味は3人のうち誰がスプリントに勝つか。3人ともがスプリンターでなく、あえて言えばTTスペシャリストのマルコ・ピノッティにスピードがあることぐらい。さらにピノッティは地元ベルガモ出身。勝利へのモチベーションとともに、コースを熟知していることで有利だ。

ラスト200mまでお互いを睨み合う牽制を続けた3人。まず口火を切って先行したのはピノッティ。最後尾につけていたカペッキがタイミングを見計らって前に出ると、そのままゴールまで先頭で入った。迫力のないスプリントの末、カペッ先行するマルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)に並ぶエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)先行するマルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)に並ぶエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiキが歓喜の勝利を手にした。このジロで勝利のなかったリクイガスにとっても初のステージ優勝だ。

前の3人に1分22秒届かなかったブランビッラとティラロンゴが4、5位でフィニッシュ。ラッセル・ダウニング(チームスカイ)がスプリントでリードする中集団は4分35秒遅れでゴールした。メイン集団は6分4秒遅れでゴール。有力勢は全てこの中にいて、総合上位にまったく変動はなし。コンタドールは難なくマリアローザを守った。

長く勝利に恵まれなかったカペッキ キャリア最大の勝利

エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) (c)RCS Sportsリクイガスのアシスト選手である長身の若手カペッキは、2008年のビシクレタ・バスカ(UCI-2HC)第3ステージで勝利し、総合優勝を飾っているが、勝利はそれ以来。これが間違いなくキャリア最高の勝利となる。トスカーナ地方出身の選手としては、昨ステージのディエゴ・ウリッシ(ランプレ)とあわせ2日連続となった。

カペッキは2010年はフートン・セルヴェットに所属し、ツール・ド・フランスにも出場しているクライマータイプのアシスト選手。リクイガスに今季移籍した。2009年はジャパンカップに出場が決まっていたが、パスポートのトラブルで来日をキャンセルしたうっかり選手と言えば思い出す人もいるだろう。彫りの深いマスクのイケメン選手として日本のファンの間でも人気が高い。

カペッキのコメント
マリアローザを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)マリアローザを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 慌ただしいステージという気がした。時速50kmに近い速度だったから、逃げが決まるのはガンダの登りしかないと思っていた。とにかく、一度でも離れてしまうと、どんな状況であれ、そこで終わってしまっていただろう。しかも、死ぬほど疲れたうえに。

コンタドールのコメント
最初の1時間は54km/h、次の1時間は51km/hという、信じられない平均速度だった。ずっと混乱した状態だったけれど、ライバルたちが動かなかったから、問題なく彼らをチェックできた。
今はまだ、ツールや他のレースについて考えてはいない。今頭にあるのは、ミラノでのジロ総合優勝だけだよ。この結果を手に入れることだけを考え、そのために日々を送っている。


第18ステージ結果
1位 エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)3h20'38"
2位 マルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)
3位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)
4位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)+1'20"
5位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)
6位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)+2'49"
7位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)+3'46"
8位 ラッセル・ダウニング(イギリス、チームスカイ)+4'34"
9位 オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
10位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)

個人総合成績 
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 70h45'09"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+4'58"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+5'45"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+7'35"
5位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+9'12"
6位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+9'18"
7位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+9'22"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+9'38"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+9'47"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+10'25"
74位 別府史之(レディオシャック)+1h50'35"

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)

山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)

新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos

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