第9ステージで折り返し、北上を開始したジロ・デ・イタリアは、そのままドロミテ山塊に突入する。第13ステージから3つ連続する山頂フィニッシュはどれも厳しさが際立つ。未舗装のコッレ・デッレ・フィネストレの難関山岳を経て、ミラノにゴールするまでの後半ステージをここでチェック。

5月19日(木)第12ステージ ★
カステルフィダルド〜ラヴェンナ 184km →コースマップ

第12ステージ・コースプロフィール第12ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport最終日まで10日を残して、早くもスプリンターたちの最後の晴れ舞台がやってくる。翌日からドロミテやアルプスの本格山岳が始まるため、この第12ステージが実質的に最後のスプリントステージとなる。

アドリア海沿いを北上する184kmのコースは真っ平らそのもの。84km地点の丘を越えると、残り100kmは完全にフラットだ。終盤にかけて故マルコ・パンターニ(イタリア)の縁の地であるチェゼナティコを駆け抜け、広大なポー平原に位置するラヴェンナにゴール。最後のチャンスを掴むため、トレインを組んだスプリンターチームがハイスピードでゴールに突進する。ゴール後はドロミテの麓スピリンベルゴまで300kmの移動が待っている。


5月20日(金)第13ステージ ★★★★
スピリンベルゴ〜グロースグロックナー(オーストリア)167km(頂上) →コースマップ

第13ステージ・コースプロフィール第13ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport今年のジロは実に山岳が厳しい。ミラノに至るまでのラスト9ステージには、難関山岳が詰め込まれており、一日たりとも気が抜けない。ドロミテ山岳シリーズの先陣を切るのは、オーストリア最標高のグロースグロックナーの中腹にゴールする第13ステージ。79km地点で標高1336mの2級山岳モンテクローチェ・カルニコ峠を通ってオーストリアに入国し、3級と2級のGPMを越えてから標高2137mのゴールを目指す。

グロースグロックナー自体にGPMは設定されていないが、ラスト7km地点で1級山岳カザレクをパスし、そこから更に平均勾配6.3%の登りを5km走ってようやくゴールを迎える。標高2137mは今大会の最標高ゴール。しかしこれはドロミテ決戦の序章に過ぎない。翌日も、その翌日も、超級山岳ステージが待っている。


5月21日(土)第14ステージ ★★★★★
リエンツ(オーストリア)〜モンテ・ゾンコラン 210km(頂上) →コースマップ

第14ステージ・コースプロフィール第14ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport3連続ドロミテ山岳ステージの2つ目は、悪名高きモンテ・ゾンコランの山頂フィニッシュ。31km地点でイタリアに戻ると、2級と3級のGPMを越えて決戦地に向かう。ゴールまで52kmを残して始まるのが、1級山岳モンテ・クロスティスの登り。路面状態の悪い平均勾配10.1%・最大勾配18%という急勾配の登りが14kmに渡って続くが、それよりも注意したいのが未舗装の下りだ。山肌に沿った未舗装の下りが8kmに渡って続く。この下りで全てを失う有力選手も出てくるだろう。

そして最後に待つのが、2年連続登場のモンテ・ゾンコラン。平均勾配11.9%・最大勾配22%・登坂距離10.1kmという激坂の先にゴールが待つ。中盤にかけて勾配が15%以上をコンスタントに刻む急峻なこの登りで総合成績は更に絞り込まれる。


5月22日(日)第15ステージ ★★★★★
コネリアーノ〜ガルデッチャ/ヴァル・ディ・ファッサ 230km(頂上) →コースマップ

第15ステージ・コースプロフィール第15ステージ・コースプロフィール image:RCS Sportモンテ・ゾンコランの翌日、ドロミテ3連戦の最後を飾るのが、超ど級の厳しさを誇る第15ステージ。序盤から1級山岳ピアンカヴァッロ、2級山岳フォルチェッラ・チビアーナを越え、チーマコッピ(大会最標高地点)の標高2236mジャウ峠をクリア。そこから1級山岳フェダイア峠と対峙し、最後は1級山岳ガルデッチャを駆け上がってゴール。ガルデッチャは平均勾配10%で登坂距離6.2km。ゴール手前に未舗装区間も登場する。

グランツールで一日の獲得標高差が5000mを超えるのは稀だが、この日の獲得標高差は驚異の6320m(ツール・ド・ロマンディの合計獲得標高差は6100m)。しかも前日にモンテ・ゾンコランを走っており、総合争いだけでなく、完走を懸けたタイムオーバーとの闘いも熾烈。近年のグランツールの中で最も厳しい山岳ステージだと断言できる。難易度は文句無しの5つ星。ジロの厳しさはここに極まる。


5月23日(月)休息日


5月24日(火)第16ステージ ★★★★
ベッルーノ〜ネヴェガル 12.7km(山岳個人TT) →コースマップ

第16ステージ・コースプロフィール第16ステージ・コースプロフィール image:RCS Sportアンジェロ・ゾメニャン氏がレースディレクターに着任した2005年以降、ジロ主催者RCSスポルトは山岳個人タイムトライアル(以下TT)を毎年欠かさず採用している。今年はベッルーノから街を見下ろすネヴェガルまでの全長12.7km・標高差705mの登りが用意された。

前半は短い下り区間を含んでおり、本格的な登りは中間計測ポイントを通過してから始まる。後半の7.3kmは登りっぱなし。平均勾配8.2%・最大勾配14%の九十九折りの登りで、選手たちは登坂力を競い合う。

主催者による優勝予想タイムは27分半前後で、スピードになおすと平均27.7km/h。3連続ドロミテ山岳ステージで疲労困憊し、前日の休息日でリズムを崩した選手は、確実に総合争いから脱落するだろう。






5月25日(水)第17ステージ ★★★
フェルトレ〜ティラーノ 230km →コースマップ

第17ステージ・コースプロフィール第17ステージ・コースプロフィール image:RCS Sportドロミテ南部の山岳地帯を東から西へ、230kmかけて移動する第17ステージ。渓谷に沿って標高を上げ、166km地点で2級山岳トナーレ峠、211km地点で3級山岳アプリカをクリアする。一帯にはジロ名物のガヴィア峠やモルティローロ峠が佇んでいるが、今年は両方ともコースに取り入れられていない。

ステージ優勝を狙うハンターたちが、序盤から果敢にアタックするだろう。総合に関係の無い選手で逃げメンバーが構成された場合は、大逃げが決まる可能性も。3級山岳アプリカ通過後のダウンヒルはテクニカルで、短い平坦区間を経てスイス国境にほど近いティラーノにゴールする。距離の長さから、おそらくレース時間は6時間を超える。


5月26日(木)第18ステージ ★★
モルベーニョ〜サンペッレグリーノ・テルメ 151km →コースマップ

第18ステージ・コースプロフィール第18ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport前後の本格的な山岳ステージと比較すると、第18ステージは距離も短く、しかもGPMは一つだけ。最終週の中では最も難易度が低いと言える。とは言ってもスプリンターが立ち向かえるような優しいステージではない。そもそもこの時点でレースに残っているスプリンターはごく少数のはずだ。

前半はジロ・ディ・ロンバルディアにも登場するコモ湖沿いの平坦路。ベルガモでロンバルディア平原に一瞬触れるが、再びコースは山岳地帯へ。ゴールの30km手前に登場する2級山岳ガンダ峠は、平均勾配7.3%・最大勾配15%・登坂距離9.2kmという本格的な登り。温泉の保養地サンペッレグリーノ・テルメでは、逃げグループ、もしくは登りで縮小した小集団によるスプリントが繰り広げられるだろう。


5月27日(金)第19ステージ ★★★★
ベルガモ〜マクニャーガ 209km(頂上) →コースマップ

第19ステージ・コースプロフィール第19ステージ・コースプロフィール image:RCS Sportいよいよマリアローザ争いは最終章へ。ベルガモをスタートし、前半は大都市ミラノの北部をかすめるようにして平坦路を東から西へ。マッジョーレ湖を見下ろす1級山岳モッタローネの平均勾配は6.2%だが、下り区間を含むため、実質的な勾配は10%近い。テクニカルなダウンヒルを経て、今大会6つ目の山頂フィニッシュ、3級山岳マクニャーガに向かう。

カテゴリーだけを見ると他の山頂フィニッシュより見劣りするが、3級山岳マクニャーガは登坂距離が28.3kmに及ぶ。刻々と変動する勾配の中にリズムを見つけ、標高差1106mを駆け上がってゴール。総合上位陣は翌日からの決戦に備えてエネルギーセーブに励むだろう。


5月28日(土)第20ステージ
ヴェルバニア〜セストリエーレ 242km(頂上)★★★★★ →コースマップ

第20ステージ・コースプロフィール第20ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport242kmというロングコースのうち、最初の200kmは平坦路。3週間前に華々しくスタートした開幕の地トリノを通り、フランス国境に跨がるアルプス山脈を目指す。まず選手たちの前に現れるのは、2005年に初登場して話題を振りまいた未舗装区間を含む1級山岳コッレ・デッレ・フィネストレだ。

平均勾配9.2%・登坂距離18.5kmという厳しさを誇るコッレ・デッレ・フィネストレは、6年ぶり2度目の登場。勾配は常に9%オーバーで、選手たちに休む暇を与えない。スイッチバックの数は45カ所で、しかも頂上手前の7.8kmが未舗装のダート。砂埃にまみれながら標高2178mの峠を越えると、一旦標高1410mまで下り、標高2035mのセストリエーレまで駆け上がる。マリアローザを懸けた山岳決戦はこの日クライマックスを迎える。


5月29日(日)第21ステージ ★★★
ミラノ〜ミラノ(個人TT)31.5km →コースマップ

第21ステージ・コースプロフィール第21ステージ・コースプロフィール image:RCS Sport最終日は北イタリアの中心都市ミラノの街中個人TT。ミラノ〜サンレモのスタート地点でもあるスフォルツェスコ城をスタートし、郊外で折り返して中心街に戻ってくる。コースはほぼ完全にフラット。無数のコーナーと凸凹の路面に注意を払いながら、最後はミラノの象徴でもあるドゥオーモ(教会)の周りを半周してゴール。3週間、3524.5kmに及ぶ長い長い旅路にようやく終止符が打たれる。

前日までの厳しい山岳ステージで疲労し尽くした脚が悲鳴を上げる。山岳をグルペットで乗り切ったTTスペシャリストがステージ優勝を飾る可能性が高いが、それによりも注目はマリアローザの行方。最終日に劇的な大逆転が起こることは充分に考えられる。


text:Kei Tsuji in Torino, Italy

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