雨吹きすさぶ厳しいコンディションで開催されたパリ〜ニース(UCIワールドツアー)第7ステージ。濡れたコースで落車が多発し、リタイア者が続出する中、終盤にアタックを成功させたレミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ)が逃げ切り勝利を飾った。

雪の残る山岳地帯を走るプロトン雪の残る山岳地帯を走るプロトン photo:Cor Vosパリ〜ニース最終日前日の3月12日、南フランスのビリニョルをスタートし、山岳地帯を抜けてコートダジュールの町ビオにゴールする215.5kmで第7ステージは開催された。この今大会最長のコースには2つの1級山岳を含む5つのカテゴリー山岳が設定されている。

最後のカテゴリー山岳はゴールから64km離れているものの、最後は絶えずアップダウンを繰り返すビオの周回コースを2周。雨と風によってレースはその難易度を増した。

集団を率いるリーダージャージのトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)集団を率いるリーダージャージのトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) photo:Cor Vosこの日はロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)がスタートせず。同日開催されたティレーノ〜アドリアティコ第4ステージと同様に、東北地方を襲った東日本大震災の犠牲者に捧げる1分間の黙祷がスタート前に行なわれた。

ハイスピードでビリニョルを発った集団は、トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アスタナ)らのアタックで幕開ける。アタックが決まらないまま集団は30km地点のスプリントポイントに差し掛かり、ポイント賞ジャージのハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)が先頭通過した。

1つ目の2級山岳テュイルリー峠を前にローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)が飛び出し、3名が追いついて先頭グループを形成。しかしアスタナ率いるメイン集団は61km地点でこれを封じ込める。

その後も断続的にアタックがかかり、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)を含む13名の先頭グループが形成されたが、これも決まらない。リタイア者が続出する中、86km地点でカルステン・クローン(オランダ、BMCレーシングチーム)とエリック・ベルトゥ(フランス、ブルターニュ・シュレー)の2人が飛び出しに成功した。

序盤の山岳でアタックを仕掛けるローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)序盤の山岳でアタックを仕掛けるローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vos逃げを試みたエリック・ベルトゥ(フランス、ブルターニュ・シュレー)とカルステン・クローン(オランダ、BMCレーシングチーム)逃げを試みたエリック・ベルトゥ(フランス、ブルターニュ・シュレー)とカルステン・クローン(オランダ、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos山岳地帯を一塊になって進むプロトン山岳地帯を一塊になって進むプロトン photo:Cor Vos

最大6分50秒のリードを得て、1級山岳カブリ峠と1級山岳フェリエ峠をクリアした先頭のクローンとベルトゥ。雪の残る山岳地帯でリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)が飛び出して先頭2名を追ったが、落車によってチャンスを失ってしまう。

ガーミン・サーヴェロに代わってモビスターが集団牽引を開始するとタイム差は縮小傾向に。やがてビオの周回コース(1周19kmを2周)に入ると、ゴールまで35kmを切ってクローンが独走開始。クローンは独走で最終周回に差し掛かったが、モビスター率いるメイン集団にゴール14km手前で吸収された。

レース終盤にかけてメイン集団をコントロールするモビスターレース終盤にかけてメイン集団をコントロールするモビスター photo:Cor Vos120kmに渡って逃げたクローンの吸収後に飛び出したのはディグレゴリオ。アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ)とリーナス・ゲルデマン(ドイツ、レオパード・トレック)の追走を振り切ったディグレゴリオは、20秒弱のリードを得て逃げ続ける。

リーダージャージのトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)らを含むメイン集団はモビスターが牽引したが、雨に濡れたテクニカルコースで思うようにペースを上げることが出来ず。下りコーナーを攻めたディグレゴリオは、あわや落車の危機を切り抜けてフラムルージュ(ラスト1km)へ。

何度も両手を挙げてゴールするレミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ)何度も両手を挙げてゴールするレミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ) photo:Cor Vosゴール前の登りで何度も後方を確認し、追撃が届かないことを悟ったディグレゴリオ。最後までペースを落とさず走り切ったディグレゴリオが、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)を5秒振り切ってゴールに飛び込んだ。

ディグレゴリオはマルセイユ生まれの25歳。昨年まで所属していたフランセーズデジューと契約更新できず、今年アスタナに移籍した。フランスのリシャール・ヴィランクの後継クライマーとして注目を集めながら、ビッグレースでの勝利を手に出来ずにいたディグレゴリオが、地元近くのステージで勝利を飾った。

「この瞬間を待ち続けていた。こんな素晴らしいステージでの勝利が手に入るまで長い間待ったよ。本当に素晴らしい勝利だ。ここに辿り着くまで試行錯誤の連続だった。自分を信頼し続けてくれている人々に感謝している。」

チームリーダーのヴィノクロフは最後の2級山岳で落車して集団から脱落。しかしアスタナはディグレゴリオのアタックにGOサインを出した。「ヴィノを待とうかと思ったけど、調子が良かったので、グリブコとロマン(クロイツィゲル)の指示で集団に残ったんだ。このチャンスを逃すわけにはいかなかった。僅差での逃げ切りにはリスクを伴う。ラスト100mを切ってようやく安心できたんだ。ヴィノのような偉大なリーダーから学ぶことは多い。プロ7年目だけど、彼の走りは非常に多くのことを教えてくれる。」

結局ヴィノはルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)らとともに5分57秒遅れでゴール。ヴィノは「レミにとってエモーショナルな勝利であるのと同時に、チームアスタナにとってシーズン1勝目。自分が落車したとき、メカトラを抱えていたので集団復帰を諦めた。我々はレミを信頼して先頭に送り込んだんだ。彼はキャリアに足りなかった自信を取り戻すことができたと思う。」と、チームに今シーズン初勝利をもたらした新加入フレンチクライマーの走りを讃えた。

総合上位陣は集団内でゴールしたため、順位に大きな変動は無し。リーダージャージを守ったマルティンは、アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)から36秒、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)から41秒のリードをもったまま最終ステージに挑む。

また、この日は序盤から終盤までリタイアする選手が続出。フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)は胃腸のトラブルにより無理せず終盤にリタイア。落車したペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)やマルティン・マースカント(オランダ、ガーミン・サーヴェロ)らを含め、エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)、サンディ・カザール(フランス、FDJ)ら、実に19名がレースを去った。

選手コメントはチーム公式サイトより。

パリ〜ニース2011第7ステージ結果
1位 レミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ)        5h46'23"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)        +05"
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
4位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)      +07"
5位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)
6位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)    +09"
8位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
9位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
10位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)   +11"

個人総合成績
1位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)       30h46'17"
2位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)      +36"
3位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)        +41"
4位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)        +1'10"
5位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)  +1'21"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)       +1'29"
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)   +1'34"
8位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)   +1'36"
9位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)          +1'53"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)           +2'04"

ポイント賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)

山岳賞
レミ・ポリオル(フランス、FDJ)

新人賞
レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)

チーム総合成績
レディオシャック

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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