2010年9月29日、U23に続いてロード世界選手権エリート女子の個人タイムトライアルが行なわれ、直前のバイク検査で不備が見つかりながらも安定した走りを見せたエマ・プーリー(イギリス)は優勝。自身初のアルカンシェルに袖を通した。また、51歳のジャンニ・ロンゴ(フランス)が5位に入る驚きのパフォーマンスを見せた。

トップタイムで優勝したエマ・プーリー(イギリス)トップタイムで優勝したエマ・プーリー(イギリス) photo:Kei Tsuji29日午後に行なわれたエリート女子個人タイムトライアル。コースは翌日のエリート男子と共通の22.9km周回(エリート男子は2周)で、中盤にかけて2つの上りが設定されている。テクニカルコーナーやハイスピードダウンヒルを含むこのコースで、現イギリスチャンピオンのプーリーが最速タイムを叩き出した。

中間計測ポイントの通過時点でトップに立ったプーリーは、最後までペースを落とさずゴール。2位ユーディト・アルント(ドイツ)と3位リンダ・ヴィルムセン(ニュージーランド)を15秒上回る32分48秒で勝利した。

表彰台、左から2位ユーディト・アルント(ドイツ)、優勝エマ・プーリー(イギリス)、3位リンダ・ヴィルムセン(ニュージーランド)表彰台、左から2位ユーディト・アルント(ドイツ)、優勝エマ・プーリー(イギリス)、3位リンダ・ヴィルムセン(ニュージーランド) photo:Kei Tsuji「ファンタスティックな勝利。本当にまだ勝ったことが信じられない。今年から競技無線の使用が禁止されたので、全力で走るしか作戦が無かった。無心で走り続けたことが結果に結びついたのだと思う」。身長157cmの小柄なプーリーは、喜びの表情でアルカンシェルを受け取った。

イギリス人として初めてエリート女子個人TTの表彰台に上ったプーリー。他を寄せ付けない走りでの圧勝だったが、実はスタート前にUCI(国際自転車競技連合)のバイク検査でポジション設定に不備が見つかるというハプニングが発生。急遽ポジションを変更しての出場だった。

トップタイムで優勝したエマ・プーリー(イギリス)トップタイムで優勝したエマ・プーリー(イギリス) photo:Kei Tsuji15秒差の2位に甘んじたユーディト・アルント(ドイツ)15秒差の2位に甘んじたユーディト・アルント(ドイツ) photo:Kei Tsuji2年連続3位に入ったリンダ・ヴィルムセン(ニュージーランド)2年連続3位に入ったリンダ・ヴィルムセン(ニュージーランド) photo:Kei Tsuji

4位・37秒遅れのアンバー・ネーベン(アメリカ)4位・37秒遅れのアンバー・ネーベン(アメリカ) photo:Kei Tsuji「規定に沿わないセッティングだったので、ポジションの変更が必要だった。サドルを後退させて、ハンドル位置を少し上げて検査をクリア。いつものトレーニングと違うポジションだったので違和感が有ったけど、結果が出たので良かった」。プーリーはそう胸を撫で下ろす。

プーリーは北京五輪個人TTで銀メダルを獲得。近年はUCIワールドカップレースを中心に活躍し、今年フレーシュ・ワロンヌで優勝。イギリスのロードと個人TTのダブルチャンピオンに輝いた。2日後のロードレースでは、2008年チャンピオンのニコール・クックらとともにダブルタイトルを目指す。

51歳のジャンニ・ロンゴ(フランス)が5位に食い込む51歳のジャンニ・ロンゴ(フランス)が5位に食い込む photo:Kei Tsujiドイツのアルントは自身3度目の銀メダル。今年デンマークからニュージーランドに帰化したヴィルムセンは2年連続銅メダルを獲得した。3連覇が懸かったアメリカ勢の最高位はアンバー・ネーベンの4位だった。

この日一番のサプライズは、1958年生まれのジャンニ・ロンゴ(フランス)がプーリーと43秒差の5位に入ったことだろう。1995年、1996年、1997年、2001年に個人TT世界チャンピオンに輝いているロンゴ。来月52歳の誕生日を迎える鉄人の挑戦は続く。


ロード世界選手権2010エリート女子個人タイムトライアル結果
1位 エマ・プーリー(イギリス)       32'48"
2位 ユーディト・アルント(ドイツ)      +15"
3位 リンダ・ヴィルムセン(ニュージーランド) +15"
4位 アンバー・ネーベン(アメリカ)      +37"
5位 ジャンニ・ロンゴ(フランス)       +43"
6位 イヴリン・スティーブンス(アメリカ)  +1'00"
7位 タラ・ホイッテン(カナダ)       +1'05"
8位 シャラ・ギロー(オーストラリア)    +1'13"
9位 エミリア・ファリン(スウェーデン)   +1'22"
10位 タティアーナ・グデルツォ(イタリア) +1'25"

text&photo:Kei Tsuji in Geelong, Australia