リカルド・リッコはカオスの王様だ。1週間のうちに2つのチームと契約したと言った。18日、オランダのヴァカンソレイユがリッコとの契約をプレスリリースで公式に発表した。まるでサーカス。彼はようやく落ち着くのだろうか? イタリアからグレゴー・ブラウンが伝える。

ヴァカンソレイユと契約したリカルド・リッコ(イタリア)ヴァカンソレイユと契約したリカルド・リッコ(イタリア) (c)Vacansoreil pro cyclint teamリッコはヴァカンソレイユのプレスリリースの中で次のようにコメントしている。
「(トップチームに戻れて)とてもハッピーだ。誰もが2度目のチャンスを与えられるべきだと信じている。これからはファンに対して、アグレッシブで誠実な素晴らしいレースを見せることを目指す。チームを選ぶに当たっては、ヴァカンソレイユがドーピングに対して透明性を掲げ、クリーンなスポーツにすることを目標にしているチームだから選んだ。その目標を掲げていることは、サイクリストとして第2の人生を歩もうとしている僕にとっては好ましいものだ」。

ヴァカンソレイユはリッコとの契約が2012年までのものであること、そして8月22日に開催される"GP西フランス・プルエー"でUCIの認可が下りれば早速リッコを出場させることを発表した。

まるでシーソーゲーム 人騒がせリッコのどんでん返し

しかし、先の金曜日の話は違っていた。リッコはイタリアの新聞ガゼッタ・デロ・スポルトに2011年までクイックステップと契約したと話したのだ。

彼の代理人であるジュゼッペ・アックアルド氏とクイックステップのパトリック・ルフェーブル氏は、リッコの発言した内容を否定した。別の言い方をすれば、彼に嘘をつかせたということか?
アックアルド氏はリッコの発言の翌日、「我々はまだ話し合っている段階だ」とコメント。

これは、2008年ツール・ド・フランスを追い出された時と似ているとしか言いようがない。

リッコは「ブエルタ・ア・エスパーニャに出場したい」と話した。それが「自分にとってもクイックステップチームにとっても良いことだ」とも。

しかしクイックステップは同意していなかった。ルフェーブル氏は8月28日に始まるブエルタの一次選考選手のなかにリッコの名前を入れてさえいなかったのだ。

嘘つきリッコはリスクがいっぱい?

ヴァカンソレイユの広報担当のフランク・クワンティンは言う「クイックステップとの間に何らかの問題があったとは聞いている。クイックステップとの契約が完了していないことは確認した。ゼネラルマネジャーのルイクスは、バカンス中で地球の裏側に居たが、彼との交渉のために舞い戻ったんだ。ルイクスは、リッコをチームに迎えることのリスクも考えた」。

ヴァカンソレイユのゼネラルマネジャーであるダーン・ルイクス氏は、17日の夜にリッコに契約書にサインするようオファーした。翌年のグランツールにチームが出場できる可能性は、リッコを獲得することで跳ね上がる。ヴァカンソレイユは来季のプロツアーライセンスを獲得するための申請を現在UCIに行っているが、リッコの獲得はそのチャンスを引き上げるのだ。

UCIプロツアー委員会は、現在14チームからのUCIプロツアーライセンス更新・新規申請を受けている。そのなかから8チームがプロツアーチームとなることができる。UCIは各チームの競技レベル、倫理性(アンチドーピングへの姿勢)、財政状況などを考慮して、11月20日に決定を下す。

リッコの過去は、良くも悪くもヴァカンソレイユのチャンスに影響するだろう。リッコは言う。「チームとのミーティング中に、彼らは厳しい条件を提示してきたが、それが公正なものであり、僕らが協力しあえることに自信を持っている。僕はその信頼とイメージを危険にさらすことなく、素晴らしい結果を残すことでお返しをしたいと思っている」

ルイクス氏は言う「我々は2011年に向けてホンモノのクライマーを探していたから、契約はトントン拍子に進んだ。メインスポンサーのヴァカンソレイユ社とも話し合った結果、リッコと会うことを決めた。リッコとのミーティングは、前に進むことを決心させた」。

しかしルイクス氏はこう付け加える。
「他の選手達と同じように、もしも不道徳な行為に及んだら、即刻契約を解消して、天文学的な契約金を返すことにリッコは同意している。
2010年は、リッコが過去の負債を返し、未来向かう選手になれるかどうかを見守らなければならない。ここ数年、ドーピングによる出場停止を経て、このスポーツがクリーンになるために力を尽くした選手が数人いる。リカルドは彼らのグループに入らなければならない」。

ルイクス氏はイタリアのイヴァン・バッソを例に挙げる。バッソはオペラシオン・プエルトへの関与を認め、2年間の出場停止処分を受けたバッソ。償いを済ませ、今年ツール・ド・フランスに復帰した。過ちを認め、反ドーピングへの姿勢を明らかにしている。

しかし、ここ過去2年を見る限り、リッコはバッソとは少し違うようだ。

負けては自転車を投げ捨てるほど感情の起伏が激しいリッコ。彼の妻であるヴァニア・ロッシのCERA陽性が発覚したとき、リッコは彼女と子供の元から立ち去った。ロッシの第2検体は後に陰性であったことで疑いは晴れたが...。そしてリッコは契約していたチェラミカ・フラミニアチームを1年早く捨てると、クイックステップと契約したという嘘をついた。

リッコは金曜日に、チェラミカ・フラミニアとの契約を強制終了させるための75,000ユーロを用意するために、イタリアのシューズメーカーのノースウェーブの資金支援を受けたと話した。その翌日、リッコの現在のシューズスポンサーであるヴィットリア・シューズ社から、2011年まで契約していることを思い出すように警告された。

同社のエドアルド・ヴェルチェッリ社長はこの件について、「我々の契約が尊重されることを希望したい。これからどうなるか弁護士と共に見守りたい」と話した。

ヴァカンソレイユのルイクス氏の賭けが正しかったかどうかは、自身のチーム内に潜む「蛇」に試されることになる。"イル・コブラ"の異名をとるリカルド・リッコに。

report:GregorBrown
translation:Makoto.AYANO