Mt.富士ヒルクライムの上位入賞者バイク紹介記事後編は、女子選抜クラス。初優勝を遂げた大石由美子を筆頭に、表彰台を掴んだ3人と、女子選手初の65分切りを達成した木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴)のバイクを、コメントと共に紹介します。
女子選抜クラス優勝:大石由美子/スペシャライズド S-WORKS Tarmac SL8

大石由美子/スペシャライズド S-WORKS Tarmac SL8 photo:So Isobe
「この年齢で優勝できるとは思っていませんでした(笑)」と、満面の笑みで喜びを語ってくれたのは、55歳にして女子選抜クラスを制した大石由美子。2合目あたりから早くも独走態勢を築き、そのままフィニッシュまで駆け抜けた。「まず目標は去年よりも速く走ることでした。独走になってから、今日のメンバーならもしかして勝てるかもしれないと思い、せっかくのチャンスをモノにしたいとそこからさらに踏ん張りました」とレースを展開を振り返る。
元々はトレイルランニングに取り組んでいたが、膝を壊したことをきっかけに5年前から自転車に転向。今回が5回目の富士ヒル出場だ。「モチベーションはとにかく自転車が楽しいから。このスピード感や、山頂にたどり着いたときのヒルクライムならではの達成感が魅力ですね」と、競技への純粋な情熱が原動力と言う。

デミ・フォレリングのルーツからインスパイアを得た、世界限定400台の特別モデル photo:So Isobe

SIGEYIのパワーメーターもフレームカラーとピッタリ photo:So Isobe 
ホイールはロヴァールのRapide CLX III photo:So Isobe
そんな女子チャンピオンのバイクは、男子の上位勢と同じくスペシャライズドのS-WORKS Tarmac SL8だ。昨年まではSL6に乗っており、当初は「SL8なんて高くて手が出ない!」と思っていたという。しかし、女子トッププロであるデミ・フォレリングの限定シグネチャーカラーが発表されるや否や、「その情報をお昼に見て、その日の夕方から受注開始。このグラフィックとデミのストーリーにすっかり共感してしまって、これは頼むしかない!と思って買っちゃったんです」と笑顔で振り返る。
ディスクブレーキ化による重量増を相殺するため、SIGEYIのクランクやロヴァールのRapide CLX IIIなど軽いパーツで統一。一方、角度の深いステムでハンドル位置を下げたりと小柄な体格に合わせる工夫も見て取れる。ハンドル幅はロードレース参戦にあたって380mmに変更したそうだが、本当はもともと使っていた340mm幅の方がずっと良い、とも。
今後はツール・ド・ふくしまで上位に入り、8月末に北海道ニセコで開催するグランフォンド世界選手権に入ることが目標と語っていたが、ふくしまでは混走の女子レースの先頭集団で展開し、55-59歳カテゴリーで見事に優勝。目標の世界選チケットを手に入れている。
女子選抜クラス2位:LI SI(中国)/トレック Madone SLR 9

LI SI(中国)/トレック Madone SLR 9 photo:So Isobe
中国から2年連続の富士ヒル参戦を果たし、選抜クラスで2位に入ったのがLI SI(李思)。プロレーサーではないものの、中国国内を中心にロードレースやタイムトライアル、ヒルクライムなどに参戦する実力派インフルエンサーだ。
トレック・チャイナのアンバサダーを務める彼女が駆るのはMadone SLR 9。トレックの創業50周年を祝う特別カラー「No. 76 Project One ICON」に乗る。「ものすごく乗りやすくて、今日もバイクがたくさん助けてくれました。カラーも飽きることが少ない落ち着いたデザインなのでとても気に入っています」とバイクを評価する。

トレックの創業50周年を祝う特別カラー「No. 76 Project One ICON」 photo:So Isobe

ホイールはボントレガーの新型AEOLUS RSL 43X(未発表) photo:So Isobe 
各種ボルト類はゴールドでコーディネイト photo:So Isobe
1976年当時のロゴ、真鍮製ヘッドバッジのグラフィックなど、ヘリテージデザインの車体に合わせるのはスラムのRED AXSで、クランクやチェーンリングを換装。ブレーキキャリパーなど、各所にあしらわれたゴールドパーツで統一感を高めている。なお、ホイールは発表が待たれるボントレガーの新型AEOLUS RSL 43Xだ。
女子選抜クラス3位:真鍋響子(EMU SPEED CLUB)/スコット ADDICT RC

真鍋響子(EMU SPEED CLUB)/スコット ADDICT RC photo:So Isobe
「大石さんがどんどんペースを上げていった時、3番手にいたのに反応できませんでした。限界ではなかったし、もう少し踏めたはずなのに、保身に走って積極的に追いかけることができなかった。3位でも嬉しいというより悔しい気持ちの方が強いです。結果的に大石さんには敵わなかったと思いますが、もっと粘れたんじゃないかと思います」と表彰台獲得にも悔しさを滲ませるのは真鍋響子(EMU SPEED CLUB)。
しかし、レース結果自体は自身のベストリザルトだ。初出場だった昨年からタイムを6分も短縮し、78分から72分へと大幅なジャンプアップを果たした。強豪チームであるEMU SPEED CLUBに加入してわずか1年。「いつも一緒に練習している兄(2022年大会覇者の真鍋晃さん)を、登りで待たせてしまっている。もっと速くならないといけないという強い思いがあったからこそ、このハイスピードで成長できました」と、急成長の背景を語る。

「よく走る、それでいて女の子っぽいかわいい自転車が欲しくて」というバイクチョイス photo:So Isobe

カセットは軽量品。車重は6kg台前半だという photo:So Isobe 
ヴィットリアのTT用タイヤ、CORSA SPEED photo:So Isobe
彼女にとっての自転車の面白さは「しんどい先の達成感」にあるという。「しんどさ以上の何かを得ることがとても楽しいです。いつも練習や機材の面倒を見てくれている兄に、結果で何かしら恩返しがしたいと思っています。言葉で伝えるのはいつでも誰でもできること。結果での恩返しという意味では、今回の表彰台でギリギリ、合格点かなと思います」と深い感謝を口にした。
そんな彼女が駆るバイクは、愛らしいカラーリングが目を引くスコットのADDICT RCだ。「女の子っぽいかわいい自転車にしたかったんです。まずは性能でバイクを選び、その中からこのカラーをチョイスしました」と語る。性能面についても「とにかく反応性がいい。登りも平坦もいけるオールラウンダーです」と全幅の信頼を寄せる。アッセンブルのセレクトは全面的にお兄様に任せており、レースに向けて軽量化を追求。タイムトライアル用タイヤや軽量カセットなど、そつのない仕上がりとなっていた。
一般女子クラス(コースレコード・ゴールド獲得):木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴)/キャノンデール SuperSix EVO LAB71

木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴)/キャノンデール SuperSix EVO LAB71 photo:So Isobe
一般女子クラスに出場し、1時間04分40秒という驚異的なコースレコードを叩き出した木下友梨菜。女子選手として史上初となる65分切りに成功し、2023年の初挑戦から4年目で悲願のゴールドリング獲得を成し遂げた。
「今年ゴールドが獲れなかったらスポンサーの方々に会わせる顔がないと思って、死に物狂いでチャレンジしました」と、安堵と達成感が入り混じった表情でレースを振り返る。
ヒルクライム出身の注目選手として急浮上し、全日本選手権2位などの実績を引っさげて欧州ロード界に挑戦した木下だが、パフォーマンスのみを追求する過酷な生活環境に気持ちが追いつかず、昨年は自転車を見たくないほどのメンタルにまで落ち込んで富士ヒル出場を断念していた。「でも、やっぱりここでゴールドを獲りたいという気持ちを再確認できた。そこに気付けたのはヨーロッパで活動したおかげでもあります」
復活に向け、今年はアプローチを180度変えた。「自転車を思いっきり楽しんで、楽しんだ先に結果がついてくるのが一番いい。だから今年はロードレースに出るのではなく、本来の自分のスタイルだった『旅』やロングライドを楽しみながら自転車に取り組んできました。そこに理解を示してくれたスポンサーの方々には感謝しかありません」と振り返る。

新型SuperSix EVOの最上級グレード、LAB71に乗る photo:So Isobe

「すごく軽くなって、鈍感な私でもわかるくらい振りが軽い」と言うSystemBar Road SLハンドル photo:So Isobe 
ゴールドを獲るためのタイム設定 photo:So Isobe

ガーミンが展開するペダル型パワーメーター「Rally」を使う photo:So Isobe 
タイヤはピレリのP ZERO RACE TLR RS photo:So Isobe
そんな快挙を支えたのが、フルモデルチェンジを果たしたばかりのキャノンデールのSuperSix EVO。その最高峰モデルであるLAB71を駆る。
「新しいSuperSixは本当に速い。私は機材に関してかなり鈍感なのですが、それでもバッチリ分かるほど速くて軽いです。特にハンドル周りがかなり軽くなったと感じます。これまで乗っていたバイクは7.5kgほどあったのですが、今回はハンドルだけでも200gくらい軽くなっていて、走り出しの軽さやダンシングの振りが全然違いますね。今年は会場でもキャノンデールのバイクに乗っている人がすごく多い気がします」と、最新機材のアドバンテージを絶賛する。
悲願のゴールドを獲得し、本来の走りと笑顔を取り戻した彼女の視線は、すでに次なる大舞台へと向いている。
「今年の目標は富士ヒルでのゴールドと全日本選手権の優勝。もちろんずっと先にはオリンピックに出たいという夢もありますが、まずは3週間後に迫った全日本選手権。出るからにはもちろん優勝を狙うので、そこだけを見据えてもう少しの間、集中して過ごしたいと思います」。
text:So Isobe
女子選抜クラス優勝:大石由美子/スペシャライズド S-WORKS Tarmac SL8

「この年齢で優勝できるとは思っていませんでした(笑)」と、満面の笑みで喜びを語ってくれたのは、55歳にして女子選抜クラスを制した大石由美子。2合目あたりから早くも独走態勢を築き、そのままフィニッシュまで駆け抜けた。「まず目標は去年よりも速く走ることでした。独走になってから、今日のメンバーならもしかして勝てるかもしれないと思い、せっかくのチャンスをモノにしたいとそこからさらに踏ん張りました」とレースを展開を振り返る。
元々はトレイルランニングに取り組んでいたが、膝を壊したことをきっかけに5年前から自転車に転向。今回が5回目の富士ヒル出場だ。「モチベーションはとにかく自転車が楽しいから。このスピード感や、山頂にたどり着いたときのヒルクライムならではの達成感が魅力ですね」と、競技への純粋な情熱が原動力と言う。



そんな女子チャンピオンのバイクは、男子の上位勢と同じくスペシャライズドのS-WORKS Tarmac SL8だ。昨年まではSL6に乗っており、当初は「SL8なんて高くて手が出ない!」と思っていたという。しかし、女子トッププロであるデミ・フォレリングの限定シグネチャーカラーが発表されるや否や、「その情報をお昼に見て、その日の夕方から受注開始。このグラフィックとデミのストーリーにすっかり共感してしまって、これは頼むしかない!と思って買っちゃったんです」と笑顔で振り返る。
ディスクブレーキ化による重量増を相殺するため、SIGEYIのクランクやロヴァールのRapide CLX IIIなど軽いパーツで統一。一方、角度の深いステムでハンドル位置を下げたりと小柄な体格に合わせる工夫も見て取れる。ハンドル幅はロードレース参戦にあたって380mmに変更したそうだが、本当はもともと使っていた340mm幅の方がずっと良い、とも。
今後はツール・ド・ふくしまで上位に入り、8月末に北海道ニセコで開催するグランフォンド世界選手権に入ることが目標と語っていたが、ふくしまでは混走の女子レースの先頭集団で展開し、55-59歳カテゴリーで見事に優勝。目標の世界選チケットを手に入れている。
女子選抜クラス2位:LI SI(中国)/トレック Madone SLR 9

中国から2年連続の富士ヒル参戦を果たし、選抜クラスで2位に入ったのがLI SI(李思)。プロレーサーではないものの、中国国内を中心にロードレースやタイムトライアル、ヒルクライムなどに参戦する実力派インフルエンサーだ。
トレック・チャイナのアンバサダーを務める彼女が駆るのはMadone SLR 9。トレックの創業50周年を祝う特別カラー「No. 76 Project One ICON」に乗る。「ものすごく乗りやすくて、今日もバイクがたくさん助けてくれました。カラーも飽きることが少ない落ち着いたデザインなのでとても気に入っています」とバイクを評価する。



1976年当時のロゴ、真鍮製ヘッドバッジのグラフィックなど、ヘリテージデザインの車体に合わせるのはスラムのRED AXSで、クランクやチェーンリングを換装。ブレーキキャリパーなど、各所にあしらわれたゴールドパーツで統一感を高めている。なお、ホイールは発表が待たれるボントレガーの新型AEOLUS RSL 43Xだ。
女子選抜クラス3位:真鍋響子(EMU SPEED CLUB)/スコット ADDICT RC

「大石さんがどんどんペースを上げていった時、3番手にいたのに反応できませんでした。限界ではなかったし、もう少し踏めたはずなのに、保身に走って積極的に追いかけることができなかった。3位でも嬉しいというより悔しい気持ちの方が強いです。結果的に大石さんには敵わなかったと思いますが、もっと粘れたんじゃないかと思います」と表彰台獲得にも悔しさを滲ませるのは真鍋響子(EMU SPEED CLUB)。
しかし、レース結果自体は自身のベストリザルトだ。初出場だった昨年からタイムを6分も短縮し、78分から72分へと大幅なジャンプアップを果たした。強豪チームであるEMU SPEED CLUBに加入してわずか1年。「いつも一緒に練習している兄(2022年大会覇者の真鍋晃さん)を、登りで待たせてしまっている。もっと速くならないといけないという強い思いがあったからこそ、このハイスピードで成長できました」と、急成長の背景を語る。



彼女にとっての自転車の面白さは「しんどい先の達成感」にあるという。「しんどさ以上の何かを得ることがとても楽しいです。いつも練習や機材の面倒を見てくれている兄に、結果で何かしら恩返しがしたいと思っています。言葉で伝えるのはいつでも誰でもできること。結果での恩返しという意味では、今回の表彰台でギリギリ、合格点かなと思います」と深い感謝を口にした。
そんな彼女が駆るバイクは、愛らしいカラーリングが目を引くスコットのADDICT RCだ。「女の子っぽいかわいい自転車にしたかったんです。まずは性能でバイクを選び、その中からこのカラーをチョイスしました」と語る。性能面についても「とにかく反応性がいい。登りも平坦もいけるオールラウンダーです」と全幅の信頼を寄せる。アッセンブルのセレクトは全面的にお兄様に任せており、レースに向けて軽量化を追求。タイムトライアル用タイヤや軽量カセットなど、そつのない仕上がりとなっていた。
一般女子クラス(コースレコード・ゴールド獲得):木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴)/キャノンデール SuperSix EVO LAB71

一般女子クラスに出場し、1時間04分40秒という驚異的なコースレコードを叩き出した木下友梨菜。女子選手として史上初となる65分切りに成功し、2023年の初挑戦から4年目で悲願のゴールドリング獲得を成し遂げた。
「今年ゴールドが獲れなかったらスポンサーの方々に会わせる顔がないと思って、死に物狂いでチャレンジしました」と、安堵と達成感が入り混じった表情でレースを振り返る。
ヒルクライム出身の注目選手として急浮上し、全日本選手権2位などの実績を引っさげて欧州ロード界に挑戦した木下だが、パフォーマンスのみを追求する過酷な生活環境に気持ちが追いつかず、昨年は自転車を見たくないほどのメンタルにまで落ち込んで富士ヒル出場を断念していた。「でも、やっぱりここでゴールドを獲りたいという気持ちを再確認できた。そこに気付けたのはヨーロッパで活動したおかげでもあります」
復活に向け、今年はアプローチを180度変えた。「自転車を思いっきり楽しんで、楽しんだ先に結果がついてくるのが一番いい。だから今年はロードレースに出るのではなく、本来の自分のスタイルだった『旅』やロングライドを楽しみながら自転車に取り組んできました。そこに理解を示してくれたスポンサーの方々には感謝しかありません」と振り返る。





そんな快挙を支えたのが、フルモデルチェンジを果たしたばかりのキャノンデールのSuperSix EVO。その最高峰モデルであるLAB71を駆る。
「新しいSuperSixは本当に速い。私は機材に関してかなり鈍感なのですが、それでもバッチリ分かるほど速くて軽いです。特にハンドル周りがかなり軽くなったと感じます。これまで乗っていたバイクは7.5kgほどあったのですが、今回はハンドルだけでも200gくらい軽くなっていて、走り出しの軽さやダンシングの振りが全然違いますね。今年は会場でもキャノンデールのバイクに乗っている人がすごく多い気がします」と、最新機材のアドバンテージを絶賛する。
悲願のゴールドを獲得し、本来の走りと笑顔を取り戻した彼女の視線は、すでに次なる大舞台へと向いている。
「今年の目標は富士ヒルでのゴールドと全日本選手権の優勝。もちろんずっと先にはオリンピックに出たいという夢もありますが、まずは3週間後に迫った全日本選手権。出るからにはもちろん優勝を狙うので、そこだけを見据えてもう少しの間、集中して過ごしたいと思います」。
text:So Isobe
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