開幕から続いた晴天から一転、雨の中行われたロード世界選手権男子ジュニアロードレース。急勾配マウント・プレサントを含む周回レースはサバイバルな展開に持ち込まれ、アントニオ・モルガド(ポルトガル)とのマッチスプリントをエミール・ヘルツォーク(ドイツ)が制した。藤村一磨は57位、鎌田晃輝はDNFだった。



17.1kmコースを8周回する135.6kmで争われた男子ジュニアロードレース17.1kmコースを8周回する135.6kmで争われた男子ジュニアロードレース photo:UCI
2022年ロード世界選手権のロードレースは男子ジュニアから始まる。コースはウロンゴン市内に設定された個人タイムトライアルのコースをベースに、マウント・プレサント(距離1.1km/平均7.7%)を加えた1周17.1kmを8周するレイアウト。長い登りはないものの、総距離135.6kmの獲得標高差は2,016mと易しくない。

気温は初日から変わらず18度前後だが、大会初日から続いた晴天は消え、厚い雨雲が空を覆った。前回大会を制したノルウェーと2位フランスを先頭に、日本の藤村一磨と鎌田晃輝を含む106名の選手たちが午前8時15分にスタート。直後のラウンドアバウトで約9名が落車し、3日前のTTで優勝したジョシュア・ターリング(イギリス)や2位ハミッシュ・マッケンジー(オーストラリア)も巻き込まれた。

ターリングは右半身を打ちつけながらもレース復帰を果たしたが、4周回でリタイア。優勝候補筆頭が去ったレースは激しいアタック合戦の末、アメリカの2名を含む計6名が逃げグループを形成した。

スタート直後に落車し、途中リタイアしたTT王者のジョシュア・ターリング(イギリス)スタート直後に落車し、途中リタイアしたTT王者のジョシュア・ターリング(イギリス) photo:UCI
数回のアタックの末に独走態勢を築いたアントニオ・モルガド(ポルトガル)数回のアタックの末に独走態勢を築いたアントニオ・モルガド(ポルトガル) photo:UCI
数々の有力選手を輩出するハーゲンスベルマン・アクセオンへの加入が決まっているアルテム・シュミット(アメリカ)を中心に、逃げ集団は1分差で順調に周回を重ねる。それを追うプロトンではアタックが繰り返されるハイペースに、前日にイネオス・グレナディアーズへの移籍が発表された18歳のマイケル・レオナルド(カナダ)などが遅れていった。

止んでいた雨が再び路面を濡らすなか残り43km地点で逃げが吸収され、最後から2回目のマウント・プレサントでメノー・ハーシン(オランダ)がペースアップ。これによりプロトンは20名弱まで数を減らし、この年代屈指のクライマーであるアントニオ・モルガド(ポルトガル)がアタックするものの決まらない。だがモルガドは最終回に入る直前の平坦区間で再び飛び出し、独走態勢を築いた。

アントニオ・モルガド(ポルトガル)とのマッチスプリントを制したエミール・ヘルツォーク(ドイツ)アントニオ・モルガド(ポルトガル)とのマッチスプリントを制したエミール・ヘルツォーク(ドイツ) photo:UCI
20秒のリードで最後のマウント・プレサントをクリアしたモルガドに対し、追走集団からドイツのジュニアロード王者エミール・ヘルツォークが飛び出す。懸命に逃げるモルガドだったが、的確なラインで下ったヘルツォークは残り2.8kmで合流。フラムルージュ(残り1km)を通過時点で後続とは1分までタイム差が拡がったため、勝負は2人の一騎打ちに持ち込まれた。残り200mから先にスプリントを開始したのはモルガド。その動きを見たヘルツォークは冷静に腰を上げ、両者横並びとなったスプリントをヘルツォークが制した。

「いまだこの勝利が信じられないし、今日は全てが上手く行った。これで僕がワールドチャンピオンになった。現実とは思えないほど嬉しい」とレース直後に興奮気味で語ったヘルツォーク。これでドイツに男子ジュニアロードレースでは2014年以来となるアルカンシエルをもたらした。

3位表彰台を争い行われた追走集団のスプリントは、チームDSMの下部チームに所属するヴラド・ファンメクレン(ベルギー)が先着。また藤村一磨は57位(11分55秒遅れ)でフィニッシュし、鎌田晃輝はDNFで雨降るサバイバルレースを終えている。

3位スプリントはヴラド・ファンメクレン(ベルギー)が先着3位スプリントはヴラド・ファンメクレン(ベルギー)が先着 photo:CorVos
フィニッシュ直後に健闘を称え合うエミール・ヘルツォーク(ドイツ)とアントニオ・モルガド(ポルトガル)フィニッシュ直後に健闘を称え合うエミール・ヘルツォーク(ドイツ)とアントニオ・モルガド(ポルトガル) photo:CorVos
2位アントニオ・モルガド(ポルトガル)、1位エミール・ヘルツォーク(ドイツ)、3位ヴラド・ファンメクレン(ベルギー)2位アントニオ・モルガド(ポルトガル)、1位エミール・ヘルツォーク(ドイツ)、3位ヴラド・ファンメクレン(ベルギー) photo:CorVos
(※)9月23日12時53分追記
記事公開時に藤村一磨選手をDNFと表記しましたが、57位(11分55秒遅れ)の誤りでした。お詫び申し上げますとともに、訂正させていただきます。
ロード世界選手権2022男子ジュニアロードレース
1位 エミール・ヘルツォーク(ドイツ) 3:11:07
2位 アントニオ・モルガド(ポルトガル)
3位 ヴラド・ファンメクレン(ベルギー) +0:55
4位 ポール・マニエ(フランス)
5位 アルテム・シュミット(アメリカ)
6位 メノー・ハーシン(オランダ)
7位 ティボー・グリュー(フランス)
8位 フランク・アーロンラギロ(エストニア)
9位 ザカリー・ウォーカー(イギリス)
10位 パヴェル・ノヴァク(チェコ)
57位 藤村一磨 +11:55
DNF 鎌田晃輝
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos