ヴィンゲゴーのフィニッシュ直後に涙を流したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)はその胸中を語り、マイヨジョーヌを手に入れたヴィンゲゴーはチームメイトを”兄弟”と表し感謝を述べた。個人TTで争われたツール第20ステージを選手たちの言葉で振り返ります。



区間優勝&マイヨヴェール ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)

今大会3度目のステージ優勝を飾ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)今大会3度目のステージ優勝を飾ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto AYANO
チームとして総合優勝を挙げたことに感動している。また、夢のようなシナリオに思わず感情が溢れ出てしまった。ヨナス(ヴィンゲゴー)は強く、また素晴らしい人間性の持ち主なんだ。チームとしてこの過酷な3週間を戦い抜くことができて、本当に信じられない思いがある。

(涙の理由は)この3週間、疲れ果てるまで頑張ったからだろう。また今日も全力を尽くし、望んでいた自分のステージ優勝とヨナスのマイヨジョーヌ獲得を叶えることができた。本当に特別な瞬間だよ。

今日はハイスピードのタイムトライアルで、残り6km地点からはじまる2つの厳しい登りに向けて力を温存しながらペーシングをした。思い描いていた通りのペースを刻むことができたので最後に加速した。また技術的なミスもなく、この可愛らしい村の頂上にたどり着くことができた。本当に素晴らしい日だ。

レース後の記者会見

区間3勝を挙げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)区間3勝を挙げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto AYANO
多くの自転車選手は自分の可能性を自ら狭めてしまっている。例えば「山岳を登るのに自分は大きすぎる」と言うようにね。僕は挑戦することが好きなんだ。不可能だと自分自身でも思うようなことへの挑戦が好きなんだ。

そうやって自分が不可能と思うものに挑むことは魅力的で、最もモチベーションが上がること。それが僕の走りの秘密かもしれない。

区間2位&マイヨジョーヌ&マイヨアポワ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)

自身の娘と共に表彰台に上がったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)自身の娘と共に表彰台に上がったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto AYANO
素晴らしすぎて上手く言葉にすることができない。自転車界最大の栄誉だ。また妻と娘の前で総合優勝を決めることができたなんて信じられない。昨年からずっと総合優勝できると信じていた。それがいま叶い、素晴らしい瞬間だよ。ホッとしたという感情もあるが、とにかく嬉しいし誇りに思う。

今日、チームの皆の頭には2年前の出来事があった。(それが再び起こるかもしれないと)恐れていたわけではないが、2度とその悲劇を繰り返してはなるものかと全力を尽くした。

記者会見でインタビューに答えるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)記者会見でインタビューに答えるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:Makoto AYANO
ー君の涙はもちろん、ワウト・ファンアールトが君の総合優勝に涙を流していた。

これはチーム全体で掴んだ結果だからね。(彼の涙は)僕たちチームメイトの関係性がいかに近いかを表している。それはこのチームにある特別なこと。お互いがお互いの結果に喜び、僕もワウトの勝利が本当に嬉しい。彼らは僕の友。兄弟と呼んだ方が近いかな。

ユンボ・ヴィスマとしてスペシャルな日となったので、今日は皆で祝いたい。また今日はチームの皆に感謝を伝えたい。チームメイトだけではなくチームスタッフの力あっての結果だからね。

母国デンマークでどのような報道がされているか分からないが、きっとクレイジーなほど盛り上がっているはず。上手く言葉にできなくてすまない。ありがとう。

区間3位&総合2位&マイヨブラン タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

総合2位とマイヨブランを確定させたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)総合2位とマイヨブランを確定させたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto AYANO
ヴィンゲゴーと対峙するとても激しい3週間だった。また、チームを襲った不運により山あり谷ありのツールとなったね。昨年からヨナスは成長を遂げ、今大会で最も強かった彼を祝福したい。強くなって再びここに戻ってくるモチベーションを与えてもらったよ。

ツール・ド・フランスで総合2位はそれほど悪い結果ではない。またステージ3勝を挙げることができ、それら勝利を十分に楽しむことができた。

レース後の記者会見

このツールで彼ら(ユンボ・ヴィスマ)には何の弱点もなかった。最終的に彼らは2人の選手を失ったものの、その影響が全く見えなかった。もしからしたら僕らが4人になっていたからかもしれないけどね。

(第11ステージの)グラノン峠で犯したたった1つのミス。全員のアタックに反応しようと思ったら、最後の脚がなくなってしまったんだ。それは僕自身のミス。しかしその他にも敗因はあるので、ツールの後にしっかり分析したい。またツール前と最中にコロナによる不運もあった。敗因を挙げていったら日が暮れてしまうほどだよ。

今回のツールでは多くを学ぶことができた。僕自身とチームによる小さなミスが沢山あった。どれも大きなものではなかったものの、それらを改善していきたい。

グラノン峠での遅れは僕自身のミスによるもの。だが、あの状況を考えれば仕方がなかったことに思う。彼ら(ユンボ・ヴィスマ)はとても賢く、また強かった。敗因となったのはあのステージだけだが、それ以外ではとても良い走りができた。レースを楽しむことができた。だからこそ、僕はこのスタイルを改めるつもりはない。

来年は運を味方についてくれるといいね。また、小さな改善を積み重ね、ユンボ・ヴィスマに挑みたい。

区間4位&総合3位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:INEOS Grenadiers
もちろんスタートする前はステージ優勝も可能だと考えていた。だが1kmを過ぎて無線が故障してしまったんだ。コーナーが多く、特に最後2つの下りでタイムを失った。もちろん攻めることもできたが総合3位という順位を失いたくなかった。幸いガーミン(サイクルコンピュータ)には先の地形が表示されていたので、それを確認しながら走り、上手くまとめることができたよ。

もちろんタイム差を知ることができればもっと良いタイムでフィニッシュできたかもしれない。また中間計測地点でタイム表示を確認しようとしたが、目がかすんでよく見ることができたなかったんだ。だからひたすらペダリングに集中したよ。

今大会は必ずしも毎ステージを安定して走ることができたわけではない。(総合で大きく遅れた)昨年から、今年自分がどんな走りができるか未知数だった。だからこそこの結果には満足している。表彰台に上がるのはスペシャルな気持ちがするよ。

今年限りで現役を引退するフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)

フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
(長く現役生活を続けるためには)まずは忍耐力が必要だ。また昔と違い選手への重圧も大きく、練習も厳しい。冬の期間でさえハードなトレーニングを積まなければならない。それを行いながら、僕のように15年やそれ以上の現役生活を続けることは簡単ではないだろう。

僕の時代とは違い、プロ選手でやってくことができるかを見極める3、4年の猶予なんていまの若い選手たちには与えられない。いまは3ヶ月単位で結果が求められるだろう?彼らの能力はもちろん、それに伴うプレッシャーも大きくなった。僕の行ってきたスポーツとはまるで別物だね。

今大会はとても早いスピードでレースが進行したため、プロトンの中で若い選手と会話する機会があまりなかったよ。また、今日のタイムトライアルもタイムカットのこともあり過去を振り返る余裕もなかった。

ツールが楽しかったと言えるのは勝利した時だけ。これは僕の仕事であり、成功を掴むことができなかった僕に大きな喜びなんてものはない。でもツールを走るということは、人生の中でも特別な体験だよ。

text:Sotaro.Arakawa

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