カーボンファイバーの特性を最大限発揮すべく、チューブを大口径化し肉厚を調整することで剛性と軽さを両立させた現代カーボン製ロードバイクのスタイルだ。これを確立させたのがこのスコットCR-1といってもいいだろう。

スコット CR-1 TEAMスコット CR-1 TEAM (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

高い剛性を確保しながら振動吸収性も高めている高い剛性を確保しながら振動吸収性も高めている フレーム重量1000g未満の軽量フレーム

2004年に衝撃のデビューを飾ったCR-1。極端なまでに軽量化されたフレーム重量により、UCI規定の最低重量など簡単にオーバーする軽さを実現した。
それ以来ロードバイク界では軽さへの挑戦がヒートアップしていった。フレームの軽量化は、もう意味が無いように思えても、結果的には主要パーツに軽量化のリスクを負わさせずに済むというメリットを生んだことは確かだ。

大ボリュームのBBエリア大ボリュームのBBエリア 現在でこそロードバイクの軽量化に対する熱は沈静化しているが、同時に得た優れた質量比剛性は、CR-1の功績が少なからずあるだろう。

大口径化によるフレームのねじれにくさ、そして最適な肉厚の調整によって横剛性を高めながら、一定方向のしなりを最適化するSDS(コンフォートショックダンピングシステム)を採用することで、いたずらに硬質な乗り物ではなく、ライダーに優しいフレーム設計であったことも特徴だ。




高い評価を得たフロントフォーク高い評価を得たフロントフォーク 軽さだけではなく、あらゆる要素を多角的に考察したのがCR-1だといえる。間違いなく歴史に残る名車だろう。

現在はハイエンドモデルにアディクトが位置するが、ラインナップの中堅に位置し、根強い人気を誇っている。またリーズナブルなプライスで手に入れられる超軽量フルカーボンバイクであることは間違いない。



「さすが元プロバイク。エントリーモデルとしては完璧に近いパフォーマンス」(浅見和洋)「さすが元プロバイク。エントリーモデルとしては完璧に近いパフォーマンス」(浅見和洋)

インプレッション


ロングライフが期待できるハイスペックフレーム


浅見和洋(なるしまフレンド)

ロードバイクにはじめてチャレンジするライダーにとっては、「持って軽い、乗って軽い」という印象が強く残るはず。
価格やグレードから考えると運動性能は高め(当然のことながら!)。さすがにプロサイクリストに認められ、世界のトップレースシーンで鍛え上げられただけのことはある。

特に印象的だったのは加速性能だろう。切れ味がよく、エントリーユーザーをターゲットにしたパーツアッセンブルでも良質なフレームの性能を味わうことができる。

さらに登坂性能は、持ち前の軽さを全面に推しだし、軽やかに進む。反面、振動吸収性はすこぶる良いとはいえないが、路面の状況が伝わりやすく、扱いやすい。これは初心者がテクニックを上達する上で重要な要素に思える。

根本的な性能はレース向きだが、レースからロングライドまで幅広く使えるオールマイティなバイクだ。

まさにエントリーモデルとしては完璧に近いパフォーマンスではないだろうか。これから本格的にロードバイクに乗りたいと思っている人にオススメ。


「こんなに高性能でお買い得なセカンドモデルって、他に無い」(山本健一)「こんなに高性能でお買い得なセカンドモデルって、他に無い」(山本健一)

かつての名車は今もなお輝きが衰えない


山本健一(バイクジャーナリスト)

アディクトの存在によってセカンドグレードへとダウンしたCR-1。結論からすれば、それはエンドユーザーにとって大歓迎である。

かつてのプロスペックフレームは他社の追随もあり、当時テストしたときに感じたような鮮烈な印象はない。むしろ当時感じたピーキーなイメージは角が取れて丸くなり、乗りやすいモデルに変貌している。

パーツアッセンブルの影響も否定できないが、とても安定感が高く、エントリーユーザーでもCR-1の加速性能を楽しむことができるだろう。

バイクの安定性となるとフレームのジオメトリーはもちろん、ホイールやパーツの重量も影響してくる。乗りやすさという意味では多少重量感があるホイールが良く作用しているように感じた。

ライディングスキルが向上すれば、パーツ構成などが次第に物足りなくなるものなので、足回りのグレードを高めればさらに性能は磨かれることだろう。グレードアップに値するフレームの性能なので、ガンガン乗り倒して欲しい。

軽量ながらキビキビと走る剛性感はロードバイクの本質。個人的な好みを言えば、アディクトよりもこちらの方が脚質にあっていて好みだ。

スタイルこそ最新ではないものの、エントリーユーザーがミドルグレードのカーボンバイクを選ぶ上で、ぜひ選択肢のひとつに加えたいバリューモデルといえる。30万円という価格設定はとてもユーザーフレンドリーだ。


スペック


フレームマテリアル スコットCR 1 HMF CR 1カーボンテクノロジーロードジオメトリーインテグレーテッドヘッドチューブ
フォーク スコットカーボンCR1プロ1 1/8" カーボンステアラーインテグレーテッド・リアショック
ヘッドセット インテグレーテッドCartridge
リアディレイラー シマノ105
フロントディレイラー シマノ105
シフター シマノ105
ブレーキ シマノ105
クランクセット チーム:シマノ105 53×39T
チームCD:シマノ105コンパクト50×34T
ハンドルバー スコットロードドロップOSアナトミック31.8mm
ステム スコットロードチームOS1-1/8" / four Bolt 31.8mm
シートポスト リッチー カーボンプロ31.6mm
シート スコット ロードプロ
ホイール マヴィック・アクシウムブラック
チェーン シマノ 105
カセット シマノ 105
タイヤ ユッチンソン エクイノックスFOLD 700×23C
フレームサイズ XXS、XS、S、M、L、XL、XXL
カラー ブラック×ホワイト×イエロー
重量 8.20Kg(公称値)
希望小売価格:323,400円
※コンパクトドライブのTEAM CDもラインナップされている。


インプレライダーのプロフィール


浅見和洋(なるしまフレンド)浅見和洋(なるしまフレンド) 浅見和洋(なるしまフレンド)
プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド
山本健一(バイクジャーナリスト)山本健一(バイクジャーナリスト) 山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション2009(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。




text:山本健一
edit&photo:綾野 真




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