イタリア人選手の多くがそうであるように、マッテーオ・カラーラ(ヴァカンソレイユ)は北部のロンバルディア州出身だ。2001年からプロ選手として走っている中堅選手だが、意外にもその知名度は低い。幾つものチームを渡り歩いたカラーラは、ツール・ド・ルクセンブルクでキャリア最大の勝利を手にした。

リーダージャージに袖を通したマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)リーダージャージに袖を通したマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ) photo:Cor Vos先週ルクセンブルクで、UCI(国際自転車競技連合)の超級カテゴリーを冠したビッグレース、ツール・ド・ルクセンブルクが開催された。

そこでカラーラは個人総合成績のトップに輝き、表彰台の真ん中に上った。そう、右側にフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、左側にランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)という偉大な選手を両手に従えて。

話し込むフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)話し込むフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Cor Vos「ロードレース界を代表する選手たちに打ち勝った偉大な勝利だ。シュレクやアームストロングの存在が、この勝利の価値をより一層高めてくれている」。カラーラは喜びを隠しきれない。

かつてシュレクやアームストロング、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ)が総合優勝したルクセンブルクで、表彰台の真ん中に立ったカラーラ。しかしそこに至るまでの道は決して平坦なものではなかった。

リーダージャージを着て走るマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)リーダージャージを着て走るマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ) photo:Cor Vosベルガモの北部に位置するアルツァーノ・ロンバルド出身のカラーラ。ロードバイクとの出会いは幼少期まで遡る。父サルヴァトーレは息子マッテーオを連れて近所の山道を走り回った。母ガブリエッラはプロ選手の道を歩むことを決めた息子の背中を押し、陰で支え続けた。

「ロードバイクに乗るまではサッカーが好きだったんだ。でもロードバイクと出会って全てが変わった。一度乗るともう止まらなかった。完全にロードレースに打ち込むようになったんだ」。

大雨の中を走るリーダージャージのマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)大雨の中を走るリーダージャージのマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ) photo:Cor Vosインタビューの最中、部屋の外から叫び声が聞こえて来た。4歳になるカラーラの息子、ヤンの声だ。

「若い時は良い指導者に恵まれなかった。でももし周りに良いアドバイスを与える人物がいて、良い環境に恵まれ、良いチームに巡り会うことが出来れば、偉大なチャンピオンになることは可能だったと思う。自分の息子にはそんな環境で育ってほしい」。

総合表彰台、左から2位フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、優勝マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)、3位ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)総合表彰台、左から2位フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、優勝マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)、3位ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Cor Vosカラーラはこれまで幾つものチームを渡り歩いて来た。コルパック、ランプレ、バルロワールド、ユニベット.com、そしてクイックステップ。現在はオランダのヴァカンソレイユに居場所を見つけている。2009年に同チームに加入したカラーラは、すでに2011年までの契約を済ませている。

「自分に適したチームを見つけるのは時間のかかる仕事。協調性に富んでいて、嫉妬心で溢れていないようなチームで走りたいと常々思っている。イタリアチームは選手の役割が決まっていないことが多いけど、今のヴァカンソレイユは選手一人一人にしっかりとした役割が振り分けられる。他のチームでは、仮に25名の選手が所属していたとすると、役目が決まっているのは大抵3〜5人だけ。他の選手たちはただチームリーダーに尽くせと言われ続け、それでいてシーズンが終わったら契約更新が無い。それが現状なんだ」。

「その反面、チームスカイやレディオシャック、アスタナ、そしてヴァカンソレイユは選手一人一人に役割が振り分けられ、それぞれの仕事を完遂すれば、仮にそれが小さなことだとしても、評価され、報われる」。

昨年ヴァカンソレイユはブエルタ・ア・エスパーニャ出場と言う大きな一歩を踏み出した。ブエルタがオランダで開幕したという事実がチームの出場を後押ししたことは確かだ。チームは昨年のツール・ド・フランスでアルカリス頂上ゴールを制したブリース・フェイユ(フランス)を含む重要なフランス人選手たちを獲得。しかしまだブエルタから招待を受けていない。

グランツールに出場出来ない悔しさを、ヴァカンソレイユは春のクラシックシーズンにぶつけた。そして今、ツール・ド・スイスに向けてモチヴェーションを上げている。ルクセンブルクで総合優勝したばかりのカラーラは2007年のスイスで総合4位。1週間のステージレースでヴァカンソレイユのチームリーダーを担う予定だ。

今週、カラーラは毎日のようにチームスタッフから電話を受けている。チームの首脳陣の気がかりは、カラーラがルクセンブルクからどれだけ回復しているか。そしてトレーニングの進捗状況。

「グランツールに出場出来ないヴァカンソレイユにとって、ツール・ド・スイスは重要な一戦。最も重要なレースだと言ってもいい。来シーズンに向けてのチームの目標は、世界トップ17のチームに入ることなんだ」。

スイスで総合優勝を狙うカラーラの前には、再びアームストロングとシュレクが立ちはだかる。カラーラはタイムトライアルで持ち堪え、山岳でリードを広げなければならない。「今年のスイスには2つの個人タイムトライアルが設定されていて、自分向きだと思っている」。カラーラにはルクセンブルクで得た大きな自信がある。

text:Gregor Brown
photo:Cor Vos
translation:Kei Tsuji

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