2021/03/13(土) - 09:29
2日連続の登りフィニッシュでマチューとワウトの直接対決が実現。ティレーノ〜アドリアティコ第3ステージの集団スプリントで、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が前日の悔しさを晴らすステージ優勝を飾った。
トスカーナ州からウンブリア州まで、219kmかけて大きく東進するティレーノ〜アドリアティコ第3ステージ。前日同様に登りのフィニッシュレイアウトが設定されているものの、終盤のアップダウンは小さく、フィニッシュの勾配も緩い。第2ステージの難易度が3つ星だったのに対して第3ステージの難易度は2つ星。再びあのシクロクロッサーの2人が躍動することになると、誰もが予想していた。
気温11度の曇り空の下、ロンドとルーベの覇者ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)とマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)、トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、グルパマFDJ)、ギヨーム・ボワヴァン(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)、ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)という5名が序盤からロングエスケープを敢行した。
ステージの長さも手伝ってタイム差は最大9分をマーク。ステージ中盤の横風区間でアルペシン・フェニックスやドゥクーニンク・クイックステップがペースアップを試みた影響もあり、タイム差が4〜5分を推移した状態でレースは後半へと入っていく。第1ステージの集団スプリントで2位に入り、この日の優勝候補でもあったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)は胃腸炎によりレースを降りている。
逃げグループは特に争うこともなくエオーロ・コメタのバイスを先頭に山岳とスプリントポイントを通過し、早めに逃げを捕まえたくないメイン集団がペースを落とせば同じくペースを落として力を温存。ペースに緩急をつけながら、タイム差5分で残り50km、タイム差1分15秒で残り20kmを切る。しかしアルペシン・フェニックスとドゥクーニンク・クイックステップの集団牽引が着実にタイム差を削りとり、残り2km地点で逃げは飲み込まれた。
残り1kmのタイトコーナーを抜けて先頭に立ったのは『ウルフパック(狼の群れ)』ドゥクーニンク・クイックステップ。ゼネク・スティバル(チェコ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)の並びでリードアウトが始まると思われたが、アラフィリップが突如ペースを弱めたためスティバルが単独で抜け出した状態に。
ライバルたちに追走を強いるアラフィリップの戦略がはまったと見られた。しかし、海色のリーダージャージを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がすぐさま追撃モードに入り、残り250mの最終コーナーで先頭スティバルをキャッチする。ファンアールトの後ろにはもちろんマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の姿。勾配5%の最終ストレートで、ファンアールトとファンデルプールによる登りスプリント対決が始まった。
ジュニア時代から主にシクロクロスとロードレースで互いに切磋琢磨してきた26歳の2人による直接対決。爆発的に加速したファンデルプールが、スティバルの追走に力を使ったファンアールトに並び、そして置き去りにする。
勾配5%ほど登っているとは思えない60km/hに迫るトップスピードで、勝利を確信したファンデルプールが腕を組んでフィニッシュラインを駆け抜けた。腕を組むポーズに関してファンデルプールは「誰だか名前を忘れたけど、モトGPのライダーのポーズを真似たんだ。インスタグラムで見つけて、あのポーズをやってみるとチームメイトたちに約束していた」と、21歳のオートバイレーサーのファビオ・クアルタラロを真似たことを告白している。
これまで幾度となく繰り返されてきたファンアールトとの一騎討ちを制したファンデルプールは「昨日はフィニッシュで(ポジションが後ろすぎるという)ミスを犯した自分の走りに怒っていた。フラストレーションが溜まっていたし、チームメイトたちが逃げとのタイム差を詰めてくれたので、今日は何としても勝ちたかった。ジュリアン・アラフィリップがペースを落としてスペースを空ける走りは想定外だったけど、ワウト・ファンアールトがすぐに反応する展開は自分にとって理想的だった。奇妙な状況だった。でも結果的に勝ててよかった」と、2年連続のステージ優勝を喜ぶ。
前週のストラーデビアンケで圧勝したファンデルプールが改めて好調ぶりをアピール。当然関心はティレーノ〜アドリアティコ後のクラシックレースに注がれる。「ミラノ〜サンレモはまた別の話。でもこのステージ優勝は良い兆しだと思っている」。2020年にファンデルプールはミラノ〜サンレモで13位。10月に延期されたロンド・ファン・フラーンデレンで優勝している。
スプリントで敗れたファンアールトは「ゼネク・スティバルを先行させるジュリアン・アラフィリップの戦術によりステージ優勝のチャンスを逃してしまった。勝つためには自ら追いかけるしかなかった。マチューをリードアウトする形になってしまったけど、他に選択肢はなかったんだ。でもボーナスタイム(6秒)を獲得できたし、ネガティブな要素だけではなかった」と振り返る。ファンアールトはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)らに対して20秒の総合リードを得ている。
翌日の第4ステージは標高1,450mのプラーティ・ディ・ティーヴォにフィニッシュするクイーンステージ(最難関ステージ)。アペニン山脈を走る本格山岳ステージを締めくくるKOMプラーティ・ディ・ティーヴォは登坂距離14.6km・平均勾配7.0%という難所であり、最終日個人タイムトライアルでリードを奪うと予想されるファンアールトに対し、クライマーたちが攻撃を仕掛けてくるのは想像にたやすい。
「総合リーダーとして山岳ステージに挑むのは初めての経験。明日リーダージャージを守るのは極めて難しいと思っているけど、準備はできているし、チームは今日いくらか力を温存することができた。できるだけ長くクライマーたちに食らいつきたい。脱落してもタイムロスを最小限に抑える走りに徹するつもり。明日のステージが終わった時点で、総合優勝の可否が判明していると思う」。ファンアールトはその難しさを認めながらも一歩も引かない構えだ。
この第3ステージでタイムロスを被ったのがイネオス・グレナディアーズ勢。残り3.5kmで発生した落車で足止めを食らったエガン・ベルナル(コロンビア)が、ゲラント・トーマス(イギリス)とパヴェル・シヴァコフ(ロシア)とともに18秒のタイムを失っている。総合で37〜39秒遅れたイネオスのトリプルエースが翌日から挽回のアタックを仕掛けてくるだろう。
トスカーナ州からウンブリア州まで、219kmかけて大きく東進するティレーノ〜アドリアティコ第3ステージ。前日同様に登りのフィニッシュレイアウトが設定されているものの、終盤のアップダウンは小さく、フィニッシュの勾配も緩い。第2ステージの難易度が3つ星だったのに対して第3ステージの難易度は2つ星。再びあのシクロクロッサーの2人が躍動することになると、誰もが予想していた。
気温11度の曇り空の下、ロンドとルーベの覇者ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)とマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)、トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、グルパマFDJ)、ギヨーム・ボワヴァン(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)、ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)という5名が序盤からロングエスケープを敢行した。
ステージの長さも手伝ってタイム差は最大9分をマーク。ステージ中盤の横風区間でアルペシン・フェニックスやドゥクーニンク・クイックステップがペースアップを試みた影響もあり、タイム差が4〜5分を推移した状態でレースは後半へと入っていく。第1ステージの集団スプリントで2位に入り、この日の優勝候補でもあったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)は胃腸炎によりレースを降りている。
逃げグループは特に争うこともなくエオーロ・コメタのバイスを先頭に山岳とスプリントポイントを通過し、早めに逃げを捕まえたくないメイン集団がペースを落とせば同じくペースを落として力を温存。ペースに緩急をつけながら、タイム差5分で残り50km、タイム差1分15秒で残り20kmを切る。しかしアルペシン・フェニックスとドゥクーニンク・クイックステップの集団牽引が着実にタイム差を削りとり、残り2km地点で逃げは飲み込まれた。
残り1kmのタイトコーナーを抜けて先頭に立ったのは『ウルフパック(狼の群れ)』ドゥクーニンク・クイックステップ。ゼネク・スティバル(チェコ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)の並びでリードアウトが始まると思われたが、アラフィリップが突如ペースを弱めたためスティバルが単独で抜け出した状態に。
ライバルたちに追走を強いるアラフィリップの戦略がはまったと見られた。しかし、海色のリーダージャージを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がすぐさま追撃モードに入り、残り250mの最終コーナーで先頭スティバルをキャッチする。ファンアールトの後ろにはもちろんマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の姿。勾配5%の最終ストレートで、ファンアールトとファンデルプールによる登りスプリント対決が始まった。
ジュニア時代から主にシクロクロスとロードレースで互いに切磋琢磨してきた26歳の2人による直接対決。爆発的に加速したファンデルプールが、スティバルの追走に力を使ったファンアールトに並び、そして置き去りにする。
勾配5%ほど登っているとは思えない60km/hに迫るトップスピードで、勝利を確信したファンデルプールが腕を組んでフィニッシュラインを駆け抜けた。腕を組むポーズに関してファンデルプールは「誰だか名前を忘れたけど、モトGPのライダーのポーズを真似たんだ。インスタグラムで見つけて、あのポーズをやってみるとチームメイトたちに約束していた」と、21歳のオートバイレーサーのファビオ・クアルタラロを真似たことを告白している。
これまで幾度となく繰り返されてきたファンアールトとの一騎討ちを制したファンデルプールは「昨日はフィニッシュで(ポジションが後ろすぎるという)ミスを犯した自分の走りに怒っていた。フラストレーションが溜まっていたし、チームメイトたちが逃げとのタイム差を詰めてくれたので、今日は何としても勝ちたかった。ジュリアン・アラフィリップがペースを落としてスペースを空ける走りは想定外だったけど、ワウト・ファンアールトがすぐに反応する展開は自分にとって理想的だった。奇妙な状況だった。でも結果的に勝ててよかった」と、2年連続のステージ優勝を喜ぶ。
前週のストラーデビアンケで圧勝したファンデルプールが改めて好調ぶりをアピール。当然関心はティレーノ〜アドリアティコ後のクラシックレースに注がれる。「ミラノ〜サンレモはまた別の話。でもこのステージ優勝は良い兆しだと思っている」。2020年にファンデルプールはミラノ〜サンレモで13位。10月に延期されたロンド・ファン・フラーンデレンで優勝している。
スプリントで敗れたファンアールトは「ゼネク・スティバルを先行させるジュリアン・アラフィリップの戦術によりステージ優勝のチャンスを逃してしまった。勝つためには自ら追いかけるしかなかった。マチューをリードアウトする形になってしまったけど、他に選択肢はなかったんだ。でもボーナスタイム(6秒)を獲得できたし、ネガティブな要素だけではなかった」と振り返る。ファンアールトはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)らに対して20秒の総合リードを得ている。
翌日の第4ステージは標高1,450mのプラーティ・ディ・ティーヴォにフィニッシュするクイーンステージ(最難関ステージ)。アペニン山脈を走る本格山岳ステージを締めくくるKOMプラーティ・ディ・ティーヴォは登坂距離14.6km・平均勾配7.0%という難所であり、最終日個人タイムトライアルでリードを奪うと予想されるファンアールトに対し、クライマーたちが攻撃を仕掛けてくるのは想像にたやすい。
「総合リーダーとして山岳ステージに挑むのは初めての経験。明日リーダージャージを守るのは極めて難しいと思っているけど、準備はできているし、チームは今日いくらか力を温存することができた。できるだけ長くクライマーたちに食らいつきたい。脱落してもタイムロスを最小限に抑える走りに徹するつもり。明日のステージが終わった時点で、総合優勝の可否が判明していると思う」。ファンアールトはその難しさを認めながらも一歩も引かない構えだ。
この第3ステージでタイムロスを被ったのがイネオス・グレナディアーズ勢。残り3.5kmで発生した落車で足止めを食らったエガン・ベルナル(コロンビア)が、ゲラント・トーマス(イギリス)とパヴェル・シヴァコフ(ロシア)とともに18秒のタイムを失っている。総合で37〜39秒遅れたイネオスのトリプルエースが翌日から挽回のアタックを仕掛けてくるだろう。
ティレーノ〜アドリアティコ2021第3ステージ結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 5:24:18 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
4位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO) | |
5位 | グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン) | |
6位 | ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル) | |
7位 | イバン・ガルシア(スペイン、モビスター) | |
8位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | ゴンサロ・セラーノ(スペイン、モビスター) | |
10位 | ユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) | |
48位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:18 |
49位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:19 |
52位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:20 |
DNF | ネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス) | |
DNF | トム・ボーリ(スイス、コフィディス) | |
DNF | ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーション・NIPPO) | |
DNF | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) |
個人総合成績
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 14:01:47 |
2位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 0:00:04 |
3位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:10 |
4位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:00:19 |
5位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:20 |
6位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | |
7位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
8位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO) | |
9位 | ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル) | |
10位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) |
ポイント賞
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 30pts |
2位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 22pts |
3位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 12pts |
山岳賞
1位 | ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) | 13pts |
2位 | ヤン・バークランツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 11pts |
3位 | シモーネ・ベラスコ(イタリア、ガスプロム・ルスヴェロ) | 6pts |
ヤングライダー賞
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 14:02:07 |
2位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
チーム総合成績
1位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 42:06:21 |
2位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:00:20 |
3位 | アスタナ・プレミアテック | 0:00:52 |
text:Kei Tsuji
photo:LaPresse, CorVos
photo:LaPresse, CorVos
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