横風分断の危険をはらみながらハイペース進行したUAEツアー6日目。70km/hオーバーの高速スプリントバトルをサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が制した。



プロ初勝利を狙うダヴィド・デッケル(オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ)プロ初勝利を狙うダヴィド・デッケル(オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ) (c)CorVosタデイ・ポガチャル(スロベニア)を囲むUAEチームエミレーツタデイ・ポガチャル(スロベニア)を囲むUAEチームエミレーツ (c)CorVos

超高層ビルが立ち並ぶドバイ市街地を離れる超高層ビルが立ち並ぶドバイ市街地を離れる (c)CorVos
ドバイ中心街のデイラ・アイランドを出発し、海沿いを経由してから内陸のアルカドラサイクリングトラックへ。そして最後はヤシの木を象った人工島パーム・ジュメイラにフィニッシュする、165kmの平坦コースで争われたUAEツアー6日目。

最終日前日のスプリントステージは一見イージーだが、この日は30km/hに及ぶ風が吹き付けた。最終的に開幕初日のような横風分断こそ生まれなかったものの、各チームがペースアップを試みたことで終始緊張感を伴うレースが展開されることとなる。

逃げグループを率いるイニーゴ・エロセギ(スペイン、モビスター)逃げグループを率いるイニーゴ・エロセギ(スペイン、モビスター) (c)CorVos
この日、逃げ集団を形成したのは、前日惜しくも逃げ切り勝利叶わなかったアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)を含む6名。強力なメンバー構成ではあったものの、横風分断を狙ったチームがメイン集団のペースを上げ下げしたため、大きなリードを得ることは叶わなかった。

逃げた6名
トニー・ガロパン(フランス、AG2Rシトロエン)
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
マチュー・ラダニュ(フランス、グルパマFDJ)
アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ)
イニーゴ・エロセギ(スペイン、モビスター)

横風区間に入るたびにイネオス・グレナディアーズやドゥクーニンク・クイックステップ、そしてイスラエル・スタートアップネイションがペースアップ。それでも決定的な動きには繋がらず、逃げとメイン集団はハイペースを維持したままフィニッシュまでの距離を減らしていった。

イネオス・グレナディアーズがメイン集団のペースアップを図るイネオス・グレナディアーズがメイン集団のペースアップを図る (c)CorVos
レース中盤には横風分断が発生レース中盤には横風分断が発生 (c)CorVos
残り25kmというタイミングで逃げは捕らえられ、向かい風区間に入ると30km/hほどのスローペースに転じる。その隙をついたドミトリー・グルズジェフ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)はおよそ15kmを逃げて吸収。モビスターやボーラ・ハンスグローエの高速牽引で、超高級ホテルや住宅街が立ち並ぶパームジュメイラへと突入した。

残り6km地点で海底トンネルを通過し、ヤシの木揺れる海岸線の幹線道を60km/hに迫るペースで疾走。「海風吹き付ける難しいスプリント勝負だ。全ては位置取りが重要。風下の右側を一列で争うスプリントになるだろう」というエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)の言葉通り、熾烈なポジション争いが繰り広げられた。

マルティン・ラース(エストニア、ボーラ・ハンスグローエ)を利用して、ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が完璧なタイミングでサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)をリリース。ここからベネットが、最大1430ワット、平均1175ワットに及ぶ10秒間のスプリントを開始する。

ヴィヴィアーニやアッカーマンを寄せ付けずサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリントヴィヴィアーニやアッカーマンを寄せ付けずサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリント (c)CorVos
今大会2勝目を収めたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)今大会2勝目を収めたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
プロ初勝利が欲しいダヴィド・デッケル(オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ)は伸び切らず、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)や後方スタートのパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)も届かない。ライバルを封じ込めた元アイルランドチャンピオンが、第4ステージに続く今大会2勝目を掴んだ。

「アメージングな気分だよ。先日と同じように素晴らしい働きを見せてくれたチームメイト無しでは不可能な勝利だった。彼らと、速いバイクのおかげで勝つことができた。スプリントの回数をこなすたびにチームワークが良くなっているし、レース終盤にそれを繰り返すだけでいい。とにかくチームの結束力が素晴らしい」と、感謝するベネット。今後はパリ〜ニースを経由してミラノ〜サンレモ勝利を目指し、7月はツール・ド・フランスでの勝利量産を目指している。

高級リゾート「アトランティス ザ パーム」前で表彰台に上がるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)	高級リゾート「アトランティス ザ パーム」前で表彰台に上がるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) (c)CorVos
総合上位陣は危なげなく集団内フィニッシュし、赤いリーダージャージをキープしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は総合優勝に王手をかけている。
UAEツアー2021第6ステージ結果
1位 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 3:32:23
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)
3位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 ダヴィド・デッケル(オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ)
5位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
6位 ジャコモ・ニッツィーロ(イタリア、クベカ・アソス)
7位 カーデン・グローブス(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
8位 アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)
9位 ケース・ボル(オランダ、チームDSM)
10位 ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
個人総合成績
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 20:41:59
2位 アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:35
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 1:22
4位 クリス・ハーパー(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) 1:44
5位 ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーションNIPPO) 1:46
6位 マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) 2:37
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) 2:39
8位 マッティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 3:53
9位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス) 4:13
10位 ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 6:30
その他の特別賞
ポイント賞 ダヴィド・デッケル(オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ)
ヤングライダー賞 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ