1級山岳ピアンカヴァッロに上り詰めるジロ第2週最終日をサンウェブが支配した。テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がステージ優勝を飾り、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)が遅れたホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)に総合成績で肉薄している。



トップガンナことフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がフレッチェ・トリコローリと記念撮影トップガンナことフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がフレッチェ・トリコローリと記念撮影 photo:CorVos
34.1kmの個人タイムトライアルを終えてもなお、103回ジロ・デ・イタリア第2週の総合争いに直結する重要ステージは終わらない。フリウリ・ベネチア・ジュリア州にあるバーゼアエレアリヴォルト、つまりリボルト空軍基地を出発し、北部の山岳地帯に沿って走る第15ステージには10km前後の登坂を持つ4つの山岳が詰め込まれている。

10月18日(日)第15ステージ バーゼアエレアリヴォルト〜ピアンカヴァッロ 185km(山頂)☆☆☆☆10月18日(日)第15ステージ バーゼアエレアリヴォルト〜ピアンカヴァッロ 185km(山頂)☆☆☆☆ photo:RCS Sport10月18日(日)第15ステージ バーゼアエレアリヴォルト〜ピアンカヴァッロ 185km(山頂)☆☆☆☆10月18日(日)第15ステージ バーゼアエレアリヴォルト〜ピアンカヴァッロ 185km(山頂)☆☆☆☆ photo:RCS Sport


とにかく厳しい第3週の足慣らしと言えるだろう。2級山岳3連発を越えた後、185kmコースのラスト14.5kmは平均7.8%最大14%という1級山岳ピアンカヴァッロ。前日TT中に落車負傷したフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を除く141名の選手たちは、リボルト空軍基地に拠点を置くイタリア空軍が誇る曲技飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」と記念撮影をこなし、トリコローリのカラースモークを焚くパフォーマンスに見送られてスタートを切った。

フレッチェ・トリコローリのパフォーマンスに見送られてスタートを切るフレッチェ・トリコローリのパフォーマンスに見送られてスタートを切る photo:CorVos
アラレちゃんポーズ(?)で滑走路を翔ぶマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ)アラレちゃんポーズ(?)で滑走路を翔ぶマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ) photo:CorVos
この日スタート前インタビューで逃げ切りの可能性があることを話していたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)を含む12名がエスケープ。総合成績で大きく遅れたメンバーによる逃げを、ホアン・アルメイダ(ポルトガル)のマリアローザ防衛に意気込むドゥクーニンク・クイックステップは容認した。

逃げグループを形成した12名
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール)
ルーカ・キリコ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ・シデルメク)
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ)
マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・マクラーレン)
ネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス)
ダニエル・ナバーロ(スペイン、イスラエル・スタートアップネイション)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
マシュー・ホルムズ(イギリス、ロット・スーダル)
セルジオ・サミティエル(スペイン、モビスター)
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、モビスター)
ローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)

逃げ切りを狙うデヘントのペースメイクによって7分リードを得た先頭グループ内では、マリアアッズーラ(山岳賞)ランキング首位でルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング)に次ぐ11ポイント差で2位につけるヴィスコンティが2級山岳キアンズタン(全長10.6km・平均5.4%)、2級山岳フォルチェッラ・ディ・モンテレスト(全長7.4km・平均7.5%)で連続先頭通過を果たし、狙い通りランキング首位浮上に成功する。

逃げ切り勝利を狙ったトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)だが、叶わず逃げ切り勝利を狙ったトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)だが、叶わず photo:CorVos
メイン集団のペースアップを行うサンウェブメイン集団のペースアップを行うサンウェブ photo:CorVosマリアローザを着用するホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)マリアローザを着用するホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos

独走に持ち込むローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)独走に持ち込むローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:RCS Sport
2015年ジロでマリアアッズーラを獲得しているヴィスコンティは続く2級山岳フォルチェッラ・ディ・パーラマルザーナ(全長13.3km・平均4.4%)の先頭通過も狙ったものの、登り中腹にある第2中間スプリントポイント(135.9km地点)でデヘントとデニスの先行を許してしまう。前日の個人TTで2位に甘んじたデニスはすぐにデヘントを切り離し、淡々とハイペースを刻んで頂上通過を果たした。

この日メイン集団を率いたのは56秒差の2位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)で勝負をかけたいサンウェブだった。序盤からメイン集団のペースメイクを担い、1級山岳ピアンカヴァッロを目指す残り20km地点で先頭デニスとの差を2分21秒にまで縮める。山岳区間で先頭から遅れたボアーロはメイン集団吸収後に牽引役を担った。

強力なチーム力でメイン集団を絞り込むサンウェブは、アルメイダにプレッシャーを与えつつ、ピアンカヴァッロ序盤区間で逃げから遅れた選手たちを次々と飲み込み、個人TT状態で逃げるデニスとの差を残り10kmで35秒にまで削り取り、さほど時間を要さずして吸収。レースが振り出しに戻ったタイミングで2分11秒遅れの総合3位ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)が遅れを喫した。

3つの2級山岳を越え、1級山岳ピアンカヴァッロを目指す3つの2級山岳を越え、1級山岳ピアンカヴァッロを目指す photo:CorVos
ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ)がケルデルマンのためにペースを上げるジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ)がケルデルマンのためにペースを上げる photo:CorVos
マイペース走法で遅れを最小限に留めるホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)マイペース走法で遅れを最小限に留めるホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
前を追いかけるヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)やペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)前を追いかけるヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)やペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) photo:CorVos
ケルデルマンの山岳アシストを務めるクリス・ハミルトンとジェイ・ヒンドレーのオージーコンビがペースアップを図ると、追従できたのはアルメイダと総合6位ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、総合8位ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、総合11位テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)という4名のみ。最後まで粘っていた総合5位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)も遅れ、ビルバオや総合9位パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)と第2グループを作って粘り強く登坂を続けた。

牽引役がハミルトンからヒンドレーにバトンタッチすると更なるペースアップが行われ、ここまで安定した走りを披露してきたアルメイダが遂に遅れる。しかし舌を出し、歯を食いしばりながらも「限界を越えつつ、けれどレッドゾーンには入らないよう自分のペースを意識して走り続けた」と振り返るアルメイダは大崩れすることなく遅れを最小限に留めていく。残り1kmでのタイム差は先頭(ヒンドレー、ケルデルマン、ゲイガンハート)から35秒遅れでアルメイダ、その40秒後方にマイカ、さらに20秒後方にニバリグループが続いた。

天のポルタル監督を指差してフィニッシュするテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)天のポルタル監督を指差してフィニッシュするテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
アルメイダを突き放しフィニッシュしたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)はボーナスタイム6秒を獲得アルメイダを突き放しフィニッシュしたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)はボーナスタイム6秒を獲得 photo:CorVosマリアローザを死守したホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)マリアローザを死守したホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos


フィニッシュ直前の平坦区間に入ると、ヒンドレーのペースメイクに唯一耐え抜いたゲイガンハートがケルデルマンを置き去りにしてスプリント。かつてマルコ・パンターニが1998年ジロで勝利を収めたピアンカヴァッロのフィニッシュライン上で、天のニコラ・ポルタル監督を指差してフィニッシュした。

「総合で遅れていたけれど、どうしてもステージ優勝が欲しかった。キャリアでほんの少ししか勝ったことがないぶん、今回の結果はどこか本当に信じられないよ。この勝利は春に亡くなったニコに捧げたい。彼をなくしてからというものチームは本当に厳しい時を過ごしてきたと思う。今大会も含めて浮き沈みの激しいシーズンを経てきたので、本当に格別の勝利だ」とゲイガンハートは想いを言葉にしている。

ステージを通してチームメイトの好アシストを受けたケルデルマンは2秒遅れ、ヒンドレーは4秒遅れ。一人になってからも7kmを耐え抜いたアルメイダは37秒遅れのステージ4位に入ったことで、ケルデルマンに15秒差まで詰め寄られながらも総合首位を死守。グランツール初挑戦の22歳がマリアローザを守った状態で2度目の休息日を迎えることとなった。

マリアローザを死守したホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) マリアローザを死守したホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:RCS Sport
「ライバルたちがアタックしてくるだろうと読んでいたので驚くことはなかった。ここまで最も厳しいステージであり、苦しみに苦しみ抜いた最後に耐え抜いた自分に対して大きな自信と喜びを覚えている。まずは休息日を楽しんで、残るステージも全力で戦い続けたい」と、予想を上回る走りを見せたアルメイダは話している。

第2週最終ステージを終え、ヒンドレーは総合10位から3位へのジャンプアップに成功し、サンウェブは総合2位&3位でアルメイダへのプレッシャーを強める形に。ビルバオは総合3位から5位に、ニバリは5位から7位に、そしてマクナルティは4位から11位にランキングを落とすこととなった。

ジロ・デ・イタリア2020第15ステージ結果
1位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 4:58:52
2位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:02
3位 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) 0:04
4位 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:37
5位 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 1:22
6位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 1:29
7位 ジェームズ・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 1:36
8位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)
9位 ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)
10位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)
83位 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) 32:02
DNF ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) -
DNF ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) -
DNF ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード) -
DNS フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) -
マリアローザ 個人総合成績
1位 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 59:27:38
2位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:15
3位 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) 2:56
4位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 2:57
5位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) 3:10
6位 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 3:18
7位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) 3:29
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) 3:50
9位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 4:09
10位 ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4:12
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 221pts
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 184pts
3位 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 90pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ヴィーニザブKTM) 118pts
2位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング) 87pts
3位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) 48pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 59:27:38
2位 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) 2:56
3位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 2:57
チーム総合成績
1位 イネオス・グレナディアーズ 178:33:42
2位 ドゥクーニンク・クイックステップ 1:24
3位 サンウェブ 6:52
text:So Isobe

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