開催中の2020年ツール・ド・フランスに出場しているニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)が、SNSにレース主催者に対する意見を投稿。過酷なコースレイアウトが逃げる選手の機会を奪っていると警鐘を鳴らした。



ツール第6ステージの出走サインを終えたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)ツール第6ステージの出走サインを終えたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ) photo:CorVos
「レース主催者は山岳ステージをクレイジーなコースにする為にエネルギーを費やしてきた。個人的に彼らは間違った戦いをしてしまったと思う」。

そう批判するのは通算23回目のグランツール出場となるツール・ド・フランスに参加中のニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)。36歳となったベテランオールラウンダーは、逃げが生まれず平穏なままスプリントに突入した第5ステージを終えた翌朝、自身のツイッターで長文を投稿した。

「連日スプリンターチームが(逃げ集団との差を)2分以内にコントロールする中、190kmの向かい風のステージで逃げるエネルギーが残っている選手なんて今のツールにはいない」。

第1ステージは100人以上が落車する悪天候に見舞われ、第2ステージは大会2日目にして1,500m級の峠が登場。第4ステージでは早くも山岳フィニッシュが設けられるなど過去に例をみないほど過酷な第1週目となっている。

狙い通り逃げに乗ったニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)狙い通り逃げに乗ったニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ) photo:CorVos
そしてロッシュが批判するきっかけとなった第5ステージでは、山岳ポイントが2つしか設定されていなかったこと、また途中のスプリントポイントを狙うドゥクーニンク・クイックステップやロット・スーダルが集団コントロールしていたこともあり、逃げが生まれにくい展開になっていた。

しかしロッシュは、それに加えツール開幕4日間で早くも選手たちに溜まった疲れが逃げる機会を奪っているのだと指摘する。

第5ステージで5位に入ったジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)もレース後のインタビューで、プロトン全体に疲れが見え、自身の疲労蓄積も例年のツールと比べて早いと語っている。その結果が第5ステージを疲労した選手たちによる休息日のような展開にしたと言うのだ。

また総合勢とスプリンターが目立ち、逃げ集団の見せ場がないコースレイアウトも再考すべきだとロッシュは言う。

「全てのチームは総合系とスプリントエースがいる構造になっている。TVに向けられた露出には良いかもしれないが、(逃げ選手よる)パフォーマンスも重要だ。例えばステージを短くしてはどうだろうか?逃げる選手にチャンスを与えてみては?未舗装路も、石畳も、クレイジーで吹きさらしのフィニッシュ区間もレースにストレスを増やすだけ。観るものをワクワクさせるレースにはならない」。

「(昨日のレースが)再度コース設定について考えるきっかけになることを願っている。僕は何か間違っているだろうか。僕と同じような考えの人はいるだろうか。それともみんな今日のようなトランジション・デイ(本格的なステージの前の移動ステージ)に満足しているのだろうか」。

敢闘賞を獲得したニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)敢闘賞を獲得したニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ) photo:CorVos
ロッシュはこのメッセージを投稿した数時間後の第6ステージで逃げに乗り、最終山岳でメイン集団に捉えられるも敢闘賞を獲得。同じく逃げに乗ったアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)が見事な逃げ切り勝利を上げている。

text:Sotaro.Arakawa