ベトナムで開催された女子の10日間ステージレース「BIWASE CUP」。唐見実世子選手による後半6〜10ステージのレポートをお届け。日本の3選手の活躍で総合、山岳賞、チーム総合の3つを1位で折り返したビワセチームだったが...。

レース前のアジア各国の選手たちの和やかな雰囲気レース前のアジア各国の選手たちの和やかな雰囲気
第6ステージ
2つのスプリントポイント、4つのKOMが存在し、距離は全ステージの中でも最長の129kmあるステージ。選手個々の力も必要だが、それよりもチーム力がとても大切になるステージでもある。またこのステージでKOMが決定するので、チームにとっても重要なステージでもあった。ビワセとしては、序盤は若手選手に集団をコントロールしてもらい、中盤のKOMは主力選手が全員集団に残るくらいのペースでコントロールしつつ、終盤の平坦区間でのアタックに備える、というものだった。

山岳ステージで絞り込まれる集団山岳ステージで絞り込まれる集団
スタートしてすぐにアニョンチームを中心にアタックが開始されるが、総合にもKOMにも関係のない選手の逃げなのでそのまま行ってもらい、すぐに逃げ集団が形成される。メイン集団は若手選手がしっかりとコントロール。1つ目のKOMを過ぎたあたりから、アニョンチームがビワセの隊列を崩そうとして集団前方まできて足を止めるなどの危険な行為を繰り返す。この行為にはとても驚いたが、ビワセも冷静に対処し、アニョンは無駄に足を使う結果となる。レースは淡々と進み、75km地点にある2回目のKOMも大きくペースを上げることもなく登りきる。

馬が集団を追いかける場面もあった馬が集団を追いかける場面もあった
ここで若手選手の仕事は終わり。海岸線のアップダウンは主力でリーダーを守りながら引き続きビワセがコントロール。約20名に絞られた集団はそのままの勢いで3回目のKOMを通過。その後の下りで逃げ集団をキャッチする。

4回目のKOMは風も強く、みんな前を引きたがらない状況なのだが、できるだけビワセが前々でチェックに入り、KOM手前でコイに勝負してもらう形を取り、コイは2番手で通過。この結果からKOMはコイが手中に収めた。

タイナショナルの一人逃げが決まる。ベトナム交通事情の関係から機材や食料の補給はオートバイから受け取るタイナショナルの一人逃げが決まる。ベトナム交通事情の関係から機材や食料の補給はオートバイから受け取る
下ってすぐにタイナショナルの一人逃げが決まる。逃げと集団とのタイム差は約1分。集団からは前を走る選手が時々見えるはずなのに、急に消える。先頭交代を続けるが前を行く選手が見えないと思ったら、落車したとの情報が入る。どうやら犬とぶつかったらしく鎖骨を折ってしまったようだった。その後も追い風に乗ってハイペースで集団コントロールを続けて、ゴール勝負へ。

優勝はティタ(アニョン)。2位、3位はタイナショナルのヌンタナ、ジュタティブがが入った。最後までコントロールし続けたビワセにとっては消耗の激しいステージとなり、残り4ステージをいかにアシスト達の体力を消耗せずにこなすかが最大の課題となった。

マッサージの他に2チーム分の補給食やボトルの管理、選手のケアを全て担った森マッサーマッサージの他に2チーム分の補給食やボトルの管理、選手のケアを全て担った森マッサー
第7ステージ
地味に足を削る小刻みなアップダウンが続く第7ステージ。すでに6ステージをこなし疲労も見え隠れし始めるからこそ、これまでのステージで足を使っているか、そうでないかも問われ始めるステージとなる。

いつもと同様、スタートからアタックが決まりチームからはバイクが乗り、ビワセが集団をコントロールする展開。ビワセがコントロールし続ける以上、アニョンのペースを乱そうとする不可解な動きは止まない。いつか落車が起きるのではないかと心配しつつレースが進行する。

集団内を走る牧瀬翼と唐見実世子集団内を走る牧瀬翼と唐見実世子
30km過ぎた辺りで、逃げと集団とのタイム差が縮まったこともきっかけとなって、再びアタックがあり、10人くらいが逃げ集団にジョインする。ホーチミンが逃げに5人ものせている。そのままホーチミンが中心となって逃げ集団をコントロールすれば決定的なものになるであろうと思われたが、全く前を引かない。タイナショナル2人、ビワセ2人が主に集団を引く形になったので、ホーチミンに前を引くように促すが、話を聞いてくれない。そこに気を取られている間にタイを中心に行かれてしまって、チームからはバイクが逃げに乗るが、私は取り残されてしまい、結局それが勝ち逃げとなる。完全に後手に回ってしまい、後追いする状況。

逃げ集団との差は開く一方で、中盤以降はビワセが必死になって追うが差は縮まらない。そのうちタイが逃げているという情報が入り、アニョンチームにも一緒に追うべきではないかと伝えるが、あまり危機感を感じてない様子。終盤になってもう一度話をしてようやく事の重大さを理解したのか、1人だけ一緒に回ってくれるが、時すでに遅し。タイナショナルチームのソムラートが集団とのタイム差3分45秒をつけてゴールした。結果、リーダージャージはソムラート(タイナショナル)に移り、8秒差でコイ(ビワセ)が追う形となった。

第8ステージ
リーダージャージがタイナショナルに移り、守りから攻撃へ立場が変わったビワセチーム。スタートアタックで5人の逃げができ、ビワセからはヌーが乗る。タイがコントロールして集団も淡々と踏むが、逃げとの差は2分前後を保ったまま。スプリントポイントを通過した頃に逃げ集団が見え、それをきっかけに逃げ集団にソムラートを含む数名が追いつき、後追いで吉川選手を含む数名もジョイン。

最後はコイからソムラートにリーダージャージが渡った最後はコイからソムラートにリーダージャージが渡った
そこから吉川選手の単独アタックの単独アタックが決まり、タイナショナルは総合に関係のない吉川選手の逃げを容認。しかし、何故かビワセの若手数名が先頭を引き、その動きでいくつかに分断された集団はやがて一つになる。そのような動きもあって吉川選手はゴール手前3kmで集団に捕まってしまい、混沌としたステージをモノにしたのは台湾のティンティン。

チーム内でも考え方の違いに戸惑いを隠しきれないステージとなり、そのチーム内のゴタゴタとした動きが他チームにもバレてしまうステージとなった。

第9ステージ
長かったビワセカップも残すところ2ステージ。疲労を隠しきれない選手も多く、スタートアタックが決まりやすい事もわかっていたので、総合に関係のある選手の誰かが必ず逃げに乗るように意識して臨んだ第9ステージ。

力強い走りでチームを引っ張った牧瀬翼力強い走りでチームを引っ張った牧瀬翼
アタック合戦に対応していると、ティタを含むアニョン2名、牧瀬選手の計3名の逃げが決まる。地脚のある3人の逃げは一気にタイム差を広げ、タイナショナルが先頭交代をして必死に追いかけている姿が背後からも見て取れる。仮に逃げが捕まったとしても、リーダーチームを消耗させる事はできているし、タイが崩壊しリーダーが裸にされた時のカウンターに備えて足を休める必要があった。

一人が落車して鎖骨骨折で戦線離脱し、リーダー以外の3人で集団をコントロールしていたタイナショナルだったが、逃げを追いきれず、いよいよリーダーも先頭交代に加わり始め、ビワセとしてはリーダージャージを奪還するチャンスと思われた。ところがビワセの若手選手が集団からアタックをしてみたり、不可解な動きを見せ始め、挙句の果てには2人の選手が先頭交代に加わり始める。

最大3分まで開いた逃げ集団との差も、2分から2分20秒くらいを推移している。これらは全て監督からの指示なので、自分達がどれだけ引き止めても、聞き入れてくれない。

集団をコントロールするビワセチーム集団をコントロールするビワセチーム
ラスト20kmに差し掛かり、リーダーのタイは勝利を確信し全開で引くのを止め、ビワセチームの体力が無くなってきた頃、アニョンが攻撃を開始。このままいくとビワセはリーダージャージ奪還を果たすどころか、チーム総合まで失う事になる。アニョンの主力選手の数回に及ぶ攻撃をギリギリのところで潰し、やっとの思いで集団ゴールへ。

2分弱のタイム差で優勝したのはティタ(アニョン)。牧瀬は同着の2位となったが、リーダージャージに袖を通す事はできなかった。また、アニョンチームが逃げ集団に2名送り込んだ事により、2位から大きな差があったチーム総合も30秒まで縮められてしまった。

本来ならば、ビワセがリーダージャージを奪還し、チーム総合をライバルチームのアニョンが獲得し、お互いにとってハッピーなステージだったにも関わらず、それが果たせず。悔やんでも悔やみきれないステージとなった。

第10ステージ
いよいよ最終ステージ。海沿いのリゾート地から112kmかけてふりだしに戻る。チームとしてはリーダージャージ奪還は難しいと判断し、2位から約30秒差のチーム総合成績を守る動きを徹底する方向でスタートした。

序盤からアニョンチームの激しいアタックが続くが、それぞれ主力選手を中心にマークを外さないように気を付ける。やがてビワセ1人、アニョン1人を含む数名の逃げができるが、すぐにタイがチェックに入ったり、逃げ集団のメンバーが変わったり、激しい展開が続く。30km過ぎた辺りで唐見、吉川、アニョン1人、アニョン下部組織1人、ホーチミン1人、計5人の逃げが決まる。

後半戦はティタの鋭いスタートアタックが目立った後半戦はティタの鋭いスタートアタックが目立った
吉川選手が逃げに乗ってくれた事でゴールまで逃げ切った場合、ステージ優勝の可能性が高く、私自身はアニョンの選手を逃さないようにマークすれば良いので絶好の逃げとなった。逃げ集団はタイに1〜2分の間でコントロールされている事は走っていてすぐに分かった。

ラッキーな逃げなのに、先頭交代に加わらずにスプリントポイントだけもがいてくる選手もいて難しい面もあったが、ビワセ2人が中心となって逃げ続ける。やがてアニョン下部チームの選手が逃げから千切れ、その動きでアニョンの選手がほとんど引かなくなり、「着きイチ」を始める。

2回目のスプリントを終えたところからアニョンの選手が攻撃を開始する。アニョンとしてはチーム総合が欲しいので、とにかく私から30秒のタイムギャップをつけてゴールしたいところ。私としては、彼女を徹底マークすればチーム総合を守り、吉川選手のステージ優勝も獲得できるので、願ったり叶ったりだと思った。

ラスト10km付近で吉川とホーチミンの選手に行ってもらって、アニョンとのタイマン勝負の時間。蛇行してアタックしてはゼロになっての繰り返し。アニョンチームの執念が感じられると共に、ビワセカップもあと10kmを切って、早くゴールしたいのに、こんなところで何をやっているんだろう...と虚しくなる。

ラスト3km付近で無事にメイン集団に吸収され、チーム総合は決定。吉川選手はステージ優勝! 有終の美を飾った。タイナショナルは総合力と経験値で難なくリーダージャージを守り切った。

ステージ優勝した吉川美穂ステージ優勝した吉川美穂
終わりがないと思うくらい長く苦しく、嬉しい思い、悔しい思い。いろいろあったビワセカップも怪我なく無事に終える事ができてホッとした。今年はコロナウイルスの影響でディフェンディングチャンピオンチームのジャパンナショナルチームを始め、多くのチームがキャンセルしため、例年のビワセカップとは違った展開が多く、とても良い経験になった。

チーム総合優勝を飾ったビワセチームチーム総合優勝を飾ったビワセチーム
多くのサイクリングイベントが中止になる中、大会を開催してくださったこと、またホストチームへ3人の日本人選手を招待してくださったビワセにはとても感謝している。来年以降のビワセカップの行方もとても楽しみだ。

10回大会となったビワセカップ。回を重ねる毎に大会が発展すると共に、若いベトナム人ライダーのレベルも確実の底上げされており、彼女達だけでなく海外選手のモチベーションの一つとなっている。日本国内でも海外チームを招待してこのような規模のレースが開催されれば、国内のレベルも上り、またロードレースを楽しさを知ってもらう良い機会になると思う。日本で多くの日本人選手が活躍できるような国際大会が開催されることを切に願う。


リザルト
個人総合成績

1位 ソムラート(タイナショナル)28:17:54
2位 コイ(ビワセ)28:18:02
3位 ティト(アニョン)28:18:49
4位 牧瀬翼(ビワセ)28:19:28
7位 唐見実世子(ビワセ)28:21:38
26位 吉川美穂(ファンヴォンドン)28:43:00

ポイント賞 ティタ(アニョン)
山岳賞 コイ(ビワセ)
ヤングライダー賞 ティキンコン(ベトナムナショナル)
チーム総合 ビワセ

text:唐見実世子/Miyoko.Karami
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