スイス、デューベンドルフ空軍基地で開催された2020年シクロクロス世界選手権の現地レポート後編。オランダに一泡吹かせたベルギー、そしてマチュー・ファンデルポールが圧倒的な王者ぶりを見せつけた2日目を、現地で取材したフォトグラファーの田辺信彦さんが振り返ります。



毎年会場で見かけるベルギー人サポーター。ジュニアレースではベルギーに期待がかかるため雨にも関わらずテンションは高い毎年会場で見かけるベルギー人サポーター。ジュニアレースではベルギーに期待がかかるため雨にも関わらずテンションは高い (c)Nobuhiko.Tanabe
コーチ、メカニックと入念にコースチェックをするスヴェン・ネイスコーチ、メカニックと入念にコースチェックをするスヴェン・ネイス (c)Nobuhiko.Tanabeレジェンド、スヴェン・ネイスの息子ティボーが男子ジュニアの優勝最有力候補。ベルギー国内での人気も非常に高く会場でも一目見ようとキャンパーの前には大勢が集まっていたレジェンド、スヴェン・ネイスの息子ティボーが男子ジュニアの優勝最有力候補。ベルギー国内での人気も非常に高く会場でも一目見ようとキャンパーの前には大勢が集まっていた (c)Nobuhiko.Tanabe


葉巻をくゆらせレースを待つ紳士。世界選手権はこういう側面こそ面白い葉巻をくゆらせレースを待つ紳士。世界選手権はこういう側面こそ面白い (c)Nobuhiko.Tanabe明けた日曜日は一転、現地会場はしとしとと雨が降る悪天候だった。昨夜から降り続いた雨によってコースは超マッドコンディションへと姿を変えた。最初に行われるレースは男子ジュニアだ。

ジュニアでもっとも優勝候補に近い選手はシクロクロスレジェンド、スヴェン・ネイスの息子であるティボー・ネイスだ。昨日はオランダがアルカンシエルを独占しており、大国ベルギーとしては何としてもチャンピオンが欲しいところ。ベルギー人ファン、ベルギーメディアが彼に対して大きく注目していることを感じた。

会場がオープンするや否や、彼のキャンパーを囲う溢れんばかりのベルギーファン。父ネイスはメカニックと打ち合わせ、そしてコースチェックを共に行うなど入念にサポートに徹した。午前11時、雨が降る中男子ジュニアがスタートする。ホールショットこそアメリカのマグナス・シェフィールドが奪ったが、今シーズン一際目立つ強さを見せているティボーが一枚上手だった。

男子ジュニアスタート。スイスのリッロが好スタートを切る。ネイスは出遅れ少し後方男子ジュニアスタート。スイスのリッロが好スタートを切る。ネイスは出遅れ少し後方 (c)Nobuhiko.Tanabe
悲願のアルカンシェルに感極まるティボー悲願のアルカンシェルに感極まるティボー (c)Nobuhiko.Tanabeゴール後、父スヴェンも息子の勝利を祝い駆けつけたゴール後、父スヴェンも息子の勝利を祝い駆けつけた (c)Nobuhiko.Tanabe

アルカンシェル獲得に吠えるティボー・ネイスアルカンシェル獲得に吠えるティボー・ネイス (c)Nobuhiko.Tanabe
ベルギー勢のポディウム独占に湧くベルギー人サポーター。オランダに押されていたがようやく盛り返したベルギー勢のポディウム独占に湧くベルギー人サポーター。オランダに押されていたがようやく盛り返した (c)Nobuhiko.Tanabe
ベルギーの期待を背負うネイスジュニアは1周目後半から先頭に立ち、どんどんとペースを上げていく。マグナスは無念の失速。代わってスイスのダリオ・リロ、ベルギーのレナート・ベルマンスとエミール・フェルストリング、オランダのティボー・デルグロッソが続く。

昨日から一転してのベルギー勢による応酬に、これまで大人しくしていたベルギー人サポーターが大きく湧いた。ネイスは2位以下を大きく引き離す完璧な独走態勢に持ち込み、2位以降もサポーターの後押しを受けたベルギーが表彰台県内を独占。ネイスは涙を浮かべながらフィニッシュし、ジュニア2年目で自身初となるアルカンシェルを手にした。

フィニッシュ後、父スヴェンは息子に駆け寄り勝利を祝った。ベルギーが表彰台を独占したことでようやくライバルであるオランダへ一矢報いることに成功。これに安堵したのか、やっとベルギー人サポーターに元気が戻ってくるのを感じた気がした。

圧倒的な強さを見せたマリオン・ノーブルリブロール(フランス)圧倒的な強さを見せたマリオン・ノーブルリブロール(フランス) (c)Nobuhiko.Tanabe後半に強い追い上げをみせ3位へと食い込んだアンナ・ケイ(イギリス)後半に強い追い上げをみせ3位へと食い込んだアンナ・ケイ(イギリス) (c)Nobuhiko.Tanabe

ゴール後バイクを投げ捨て母の元に駆け寄るマリオンゴール後バイクを投げ捨て母の元に駆け寄るマリオン (c)Nobuhiko.Tanabe
フィニッシュ後に笑顔を見せてくれたケイティ・クロース。フィニッシュ後の顔はプロ、アマチュア関係なく同じで一番好きな瞬間だフィニッシュ後に笑顔を見せてくれたケイティ・クロース。フィニッシュ後の顔はプロ、アマチュア関係なく同じで一番好きな瞬間だ (c)Nobuhiko.Tanabeフランス国家を高らかに斉唱するフランス人サポーターフランス国家を高らかに斉唱するフランス人サポーター (c)Nobuhiko.Tanabe


ジュニアレース終了後雨足はさらに強まり、女子U23のレースはこの日一番となる悪天候の中行われることとなった。優勝候補筆頭はやはり昨年王者インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ)で、ライバルとなりそうなのはイギリスのアンナ・ケイやオランダのマノン・バッカー。このレースも多くのドラマが生まれそうな雰囲気の中スタートが切られた。

好スタートを切ったのはアメリカのケイティー・クロースで、そこに続いたのはフランスのマリオン・ノーブルリブロールだった。昨年大会では中盤にトップに立つなど強い走りを見せたが、オランダ勢に敵わずレース後に涙したノーブルリブロールがこの日は圧倒的な強さを見せた。

1周目中盤からトップに立ち、そこからは誰も寄せ付けず独走へと持ち込んだ彼女は、フランスにポリーヌ・フェランプレヴォ以来となるアルカンシェルをもたらした。

2位以下の争いはかなり熾烈なものとなり、スタートで出遅れたケイ、ハンガリーのカータ・ヴァス、そしてバッカーらが激しく競り合った末、泥さばきに抜きん出ていたヴァスがハンガリーに初めての世界選手権表彰台をもたらす快挙。ケイも3位に入り、フィニッシュラインでは笑顔を見せている。

息子のサポートに徹する父アドリ・ファンデルプール息子のサポートに徹する父アドリ・ファンデルプール
明らかに今までと違う気合いを放つマチュー・ファンデルフポール(オランダ)明らかに今までと違う気合いを放つマチュー・ファンデルフポール(オランダ) (c)Nobuhiko.Tanabe
そして、トリを飾るのは男子エリートだ。雨脚が弱まったことでコースのコンディションは変化し続ける状況だ。今シーズン無敵の強さを誇るオランダのマチュー・ファンデルポールはアルカンシエルに一番近い存在であり、泥レースを得意とするベルギーのトーン・アールツ、そしてツール・ド・フランスでの大怪我から奇跡の復活を遂げたワウト・ファンアールトが対抗馬だ。

今回、例年と違う雰囲気を纏っていたのはファンデルポールだった。それは連覇にかける並々ならぬ気合いの現れなのだろう。彼は会場にレース当日までほとんど姿を見せず、試走していたのもレース当日のわずかな時間だけ。これは余計なストレスを感じさせず完璧な状態でレースへと臨むためだろう。一方、(おそらくマチューの情報提供役として)兄のデイヴィッドは金曜から試走を重ねていたほか、父アドリ・ファンデルポールを中心としたチームは慌ただしく準備を重ねる。マチューに用意されたのは、今回のために用意されたスペシャルペイントのバイクが2台と、通常バイクが3台ほど、そして無数のホイールたち。静寂のマチューと、慌ただしいその周辺とのコントラストは鮮明だった。

ホールショットからの圧巻の走りに会場の誰もが魅了されたホールショットからの圧巻の走りに会場の誰もが魅了された (c)Nobuhiko.Tanabe
泥さばきに長けるトーン・アールツ(ベルギー)がマチューを追うも全く歯が立たない泥さばきに長けるトーン・アールツ(ベルギー)がマチューを追うも全く歯が立たない (c)Nobuhiko.Tanabe素晴らしい力を見せたトーマス・ピドコック(イギリス)。エリート初挑戦で2位という熱い走りにはマチューに続くスターの可能性を感じた素晴らしい力を見せたトーマス・ピドコック(イギリス)。エリート初挑戦で2位という熱い走りにはマチューに続くスターの可能性を感じた (c)Nobuhiko.Tanabe

この堂々としたゴールシーン。今季のロードレース、そして東京オリンピックでも暴れてくれることを全身で感じたこの堂々としたゴールシーン。今季のロードレース、そして東京オリンピックでも暴れてくれることを全身で感じた (c)Nobuhiko.Tanabe
14時35分、いよいよ男子エリートレースがスタート。完璧な体制で臨んだファンデルポールのホールショットからレース動き出す。普段と違うなと感じることはここでもあった。今までのレース運びならば序盤は様子を見ながらレースを運んでいくのだが、この日は違った。ホールショットを奪ってから、1周目に関わらず猛烈なペースアップで2位以下を大きく引き離したのだ。

彼の調子が良かったというのもあるだろうが、その後は一度も合流を許さない、ホールショットtoウィンという完璧なレース運びと共に文句なしの世界選手権2連覇を達成した。ゴールで見せたお辞儀は彼の大きな自信の表れだったのだろう。2位に入ったエリート初挑戦トーマス・ピドコック(イギリス)の素晴らしい戦いにも心を打たれた。彼もマチューに並ぶスーパースターになるポテンシャルを秘めており、今後も期待している一人だ。

4位フィニッシュのファンアールト。ポディウムこそ逃してしまったが良い顔だ4位フィニッシュのファンアールト。ポディウムこそ逃してしまったが良い顔だ (c)Nobuhiko.Tanabe
泥だらけでフィニッシュしたマチューの兄デイヴィッド泥だらけでフィニッシュしたマチューの兄デイヴィッド (c)Nobuhiko.Tanabe
新しいアルカンシェルに袖を通す瞬間。世界選手権はやはり特別だと強く感じる新しいアルカンシェルに袖を通す瞬間。世界選手権はやはり特別だと強く感じる (c)Nobuhiko.Tanabe
オランダが大勝利を納めた2020年のシクロクロス世界選手権だったが、全てのレースには世界一を目指して戦った、ドラマチックで、感動的なドラマがあった。

その中でもやはり印象に残ったのはシクロクロスが産んだスーパースター、ファンデルポールだ。彼が今年のロードレース、そして東京オリンピックでのMTBでも大旋風を巻き起こすのは間違い無いが、レース後のインタビューではMTBのエンデューロレースにも出たいというコメントが飛び出た。このままあらゆるジャンルでその才能を見せて欲しい、と思うのは僕だけでは無いはずだ。

来年の世界選手権はシクロクロスの本場ベルギーに戻る。今年1勝のみに終わったベルギー勢は威信と共に猛攻を掛けてくるだろう。また来年、再び素晴らしいドラマを見るのが今から楽しみだ。



田辺信彦aka”NB”プロフィール

フリーランスフォトグラファー。自転車を中心としたあらゆるスポーツや、音楽などの中心に宿るカルチャーを、写真を通じて美しく切り取る。ヨーロッパのシクロクロスに魅せられ、それを切り取った写真集プロジェクト「CROSS IS HERE」を進行中。

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