世界最大のバイシクルレーシングタイヤメーカー、ヴィットリアがリリースするMTBクロスカントリータイヤ2種をインプレッション。今春コンパウンドをグラフェン2.0にアップデートし、性能を引き上げたトレイル&XCレースタイヤだ。



ヴィットリアの代表的XCタイヤ BARZOとMEZCALをテストヴィットリアの代表的XCタイヤ BARZOとMEZCALをテスト photo:Makoto.AYANO
バイシクルタイヤのリーディングブランド、イタリアのヴィットリア。ロードレースでスタンダードとなっているCORSAシリーズはもとより、自社製品以外のスポーツバイシクル用タイヤブランドの製品もOEM生産するなど、その技術力と規模で世界最大のバイシクルレーシングタイヤメーカーとなっている。

同社がグラフェンを含有するコンパウンドによってレーシングタイヤのラインアップを大幅刷新したのが2015年。それから3年余を経て今春「グラフェン2.0」と銘打った進化版の第2世代のコンパウンドを発表。ロードタイヤ、MTBタイヤのハイエンドラインナップを再びアップデートした。

MTB用タイヤとしては2014年8月まで「GEAX」のブランド名で展開していたため新興のイメージを受けてしまうが、MTBタイヤ部門でも長く定評あるスポーツライド用タイヤを生産してきた実績がある。

今回紹介するヴィットリアのBARZOとMEZCALは、おそらく日本のクロスカントリーレースやトレイルライドに適した代表的なマウンテンバイク用タイヤだ。新モデルとなって日本のXCレーサーにも急速にシェアを伸ばしており、今注目のタイヤだと言えるだろう。

グラフェン2.0を採用していることを示す赤いレターが入るグラフェン2.0を採用していることを示す赤いレターが入る photo:Makoto.AYANO
ヴィットリアが第2世代の「グラフェン2.0」と銘打つコンパウンドの進化は、ロードレース用タイヤの世界でさらにヴィットリアの地位を確実なものにした。G2.0によりスピード、ウェット時のグリップ、耐久性、耐パンク性など、特に狙ったパフォーマンスごとに性能を向上させることが可能になり、よりキャラクターの明快な製品づくりが可能になったという。

オフロードを走るMTBタイヤにおいては、転がり抵抗やグリップは路面や地形の影響を大きく受けるため数値化しにくい性能となるが、G2.0採用タイヤでは従来製品との比較でとくにウェット時のグリップや耐カット性、空気保持性を向上させているという。

4C構造のMTBタイヤのトレッド4C構造のMTBタイヤのトレッド photo:Makoto.AYANOMTBタイヤにおける第1世代と第2世代Graphene2.0の性能差グラフMTBタイヤにおける第1世代と第2世代Graphene2.0の性能差グラフ (c)vittoria


また、4つのコンパウンドから構成される「4Cテクノロジー」も技術的な核となる。トレッドのセンター、サイド、ショルダー部あるいは表層部、ベース部、MTBタイヤならノブの芯や表層部において、適材適所で異なるコンパウンドをレイヤリング(重ね合わせ)し、性能を追求する。ヴィットリアは世界で唯一、4種類のコンパウンドをひとつのタイヤトレッドにミックスして用いるメーカーだ。

今回インプレッションするMEZCALとBARZOは、クロスカントリーレースおよびトレイルライドに適した代表的モデル。ノブが低く連続的なパターンで走行抵抗が少なく、ハイスピードな走行に向くMEZCAL。そしてノブが立ち、ウェットとドライ路面をバランス良くこなすBARZO。しなやかな120TPIナイロンケーシングで、TLR=チューブレスレディ構造だ。

軽さを追求したレース用 XC-RACE TLRモデルと、サイドウォールに保護のレイヤーを追加したトレイルライド用の XC-TRAIL TNTモデルから選べる軽さを追求したレース用 XC-RACE TLRモデルと、サイドウォールに保護のレイヤーを追加したトレイルライド用の XC-TRAIL TNTモデルから選べる photo:Makoto.AYANOヴィットリア純正のPIT STOPシーラントを使用ヴィットリア純正のPIT STOPシーラントを使用 photo:Makoto.AYANO


そのそれぞれに、軽さを追求したレース用である XC-RACE TLRモデルと、サイドウォールに保護のレイヤーを追加してサイドカットに強いトレイルライド用の XC-TRAIL TNTモデルから選べる。両モデルを長期インプレッションした

BARZO
ヴィットリア BARZO G2.0 29 2.25 TLR ヴィットリア BARZO G2.0 29 2.25 TLR photo:Makoto.AYANO
BARZO G2.0 29 2.25 TLR
660g 7,300円(税別)

BARZO G2.0 29 2.25 TLR  しなやかなケーシングにより極上の乗り心地とオールラウンドな性能をもつBARZO G2.0 29 2.25 TLR しなやかなケーシングにより極上の乗り心地とオールラウンドな性能をもつ photo:Makoto.AYANO
29インチのXC用フルサスモデル(スコットSPARK RC、ホイールはDT X1700)にセットしてテスト。チューブレスレディのためヴィットリアのPIT STOPシーラントを使用した。その組み合わせでセルフディスカバリーチャレンジ王滝にも出場し、完走することができた。太さ2.25のTLRモデルということで、サイドプロテクションレイヤー無しの軽量クロスカントリーレースモデルの位置づけだ。ノブが適度に張り出しており、コーナリンググリップが高い。王滝のような土と土砂のザレ、大きめの石や岩でガレた林道にも対応できるオールラウンドなレーシングタイヤだ。

ヴィットリア BARZO G2.0 29 2.25 TLR ヴィットリア BARZO G2.0 29 2.25 TLR photo:Makoto.AYANO傾斜に沿って角度をつけたサイプ(ノブ上の溝)がグリップ力を発揮傾斜に沿って角度をつけたサイプ(ノブ上の溝)がグリップ力を発揮 photo:Makoto.AYANO


ケーシングがしなやかなことが大きな特徴で、サスペンションのストロークが小さなモデル(100mm)などでもサスペンション代わりとなるようなショック吸収性の良さがあるのがヴィットリアのXCタイヤの魅力だ。サイドがしなることで路面に食いつくため、とくにハードパック路面では効果を発揮してくれる印象。

小さめのブロックが配置されるトレッドで、センターにはエッジが効いたハイスピード・トレイルタイヤだ。逆V字型の溝によって土や泥がスムーズに除去されるため少しウェット&マッドな路面にも対応できる、日本の土質にあったタイヤだ。

ハードパック、ウェットともにこなせる万能タイヤハードパック、ウェットともにこなせる万能タイヤ photo:Makoto.AYANO
重量は29インチ・2.25で660gと軽量。もし岩などによるサイドカットが心配なら保護プロテクションレイヤーがサイドに内蔵されたTNTモデルを使用するのが使用するのが良いだろう。その場合は同じ太さなら+20gの680gとなる(カラーはAnthraciteとなる)。

MEZCAL
ヴィットリア MEZCAL G2.0 27.5x2.25 TNTヴィットリア MEZCAL G2.0 27.5x2.25 TNT photo:Makoto.AYANO
MEZCAL G2.0 27.5x2.25 TNT
670g 7,300円(税別)

MEZCAL は、かつてGEAXブランド時代の「Saguaro」というモデルからそのトレッドを踏襲しているモデルだ。 27.5x2.25 TNTをチョイスし、ハードテイルのXCモデル(アンカーXC-9、ホイールはXTR)にセットして使用。

MEZCAL は転がり抵抗が低いためジープロードなどで速いMEZCAL は転がり抵抗が低いためジープロードなどで速い photo:Makoto.AYANO
日本で人気が高いMEZCALは、小さく低いノブが連続的に刻まれるレーシングタイヤだ。交互ながらも繋がって配置されたセンターリッジにより転がり抵抗が非常に低く、林道やジープロードなど直線的に走るシーンでは非常に速く走れるハイスピードモデルだ。しなやかなタイヤサイドでグリップする印象で、上りのトラクションも低いノブの割によく掛かる印象。しかしノブの高さが低いため、ソフトな土系のトレイルなどでサイドグリップを稼ぎたいときには、ノブが刺さらず、エッジを利かす走りには物足りない印象だ。

グラフェン2.0採用のトレッド サイドに保護レイヤーが入るTNTモデルグラフェン2.0採用のトレッド サイドに保護レイヤーが入るTNTモデル photo:Makoto.AYANO低いノブが連続的に並ぶパターン低いノブが連続的に並ぶパターン photo:Makoto.AYANO


空気量が活かせるシーンではその全体のしなやかさのおかげで快適に走ることができる。また、ノブによるトレイルへのダメージが少ないため、トレイルにインパクトの少ない走り方を心がけている人には良い選択だろう。またこちらのモデルはタイヤサイドに保護レイヤーを内蔵したTNTモデルにしてみたが、ややサイドにコシが出て、低圧でもヨレない印象がある。カタログ重量ではTLRモデルに比べて+10gの重量差。ジープロードでのマラソン系の走り、つまりSDA王滝などには走行抵抗の少なさが大きな武器になるタイヤだ。

軽量なTLR(左)と、保護レイヤーをサイド部に内蔵するTNT(右)軽量なTLR(左)と、保護レイヤーをサイド部に内蔵するTNT(右) photo:Makoto.AYANO
BARZOとMEZCALの使い分けでは、よりアグレッシブなBARZOに対し、走行抵抗が低く転り重視なのがMEZCALとすれば、XCレースで前輪にBARZO、後輪にMEZCALというのも組み合わせの一例だ。両モデルともTLR、TNTほかサイズも多くラインナップされるため自分に適したモデルを選んで欲しい。

数種のタイヤを路面コンディションにあわせて使いこなすXCレーサーになれば、より転がり抵抗の少ないハードパック向けの「PEYOTE」、「TERRENO」、反対にトレイル向けでウェットにも強い「GATO」という選択肢もある。

また、今年からヴィットリアは今期からCJシリーズなどレースの現場でタイヤサポートのブースを展開しているため、レース派の選手は会場で同サービスを受けることができ、いざというときにも安心できると好評だ。


photo&text:Makoto.AYANO