NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネのジャパンカップ・アフターパーティが月曜の夜、都内のイタリアレストランで催された。ジャパンカップの熱戦を振り返り、5年間の歩みを共有する。チームは今季で解散とあって熱心なファンが集まり、別れを惜しんだ。



登場したNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネの選手たち登場したNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネの選手たち photo:Makoto.AYANO
ジャパンカップの熱気冷めやらぬ月曜の夜、場所を都内に移し、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネのアフターパーティが開催された。日本人とイタリア人の選手やスタッフで構成された国際的なプロコンチネンタルチームということで、国内のファンの多さは他のチームの比ではないほど。今年いっぱいで解散を決めているチームと最後のひとときを一緒に過ごそうと、熱心なファンが多数詰めかけた。

ヴィーニファンティーニのワインがたくさん用意されたヴィーニファンティーニのワインがたくさん用意された どれも美味しそうなワインや発泡酒どれも美味しそうなワインや発泡酒


ワイン会社がスポンサーだけあって、本格イタリアンの料理にヴィーニファンティーニのワインがたっぷりと用意され、豪華なパーティに。MCはチームが今年出場したジロ・デ・イタリアにも現地観戦に行ったというMCノゾミさん(チームREAL)。熱のこもった司会で選手のコメントを引き出していく。

ペロージGMの掛け声とともにカンパイ!でパーティはスタートペロージGMの掛け声とともにカンパイ!でパーティはスタート 水谷壮宏監督水谷壮宏監督


まずはジロでも指揮を執った水谷監督が挨拶。まずは中根英登選手の6位と2年連続のアジア最高位賞を獲得したジャパンカップでの作戦を披露してくれた。「中根を勝たせる作戦でした。逃げに乗ったカノラのグループが逃げ切るんじゃないかとも思ったが、他の選手がアシストすることで最終局面まで中根を温存して、最後に中根で勝ちを狙う作戦でした。中根には『後半に重要なアタックがあるから準備をしておけ』と話していました。中根はよく頑張ってくれました」。

NIPPOのスマホケースが熱心なファンの証拠ですNIPPOのスマホケースが熱心なファンの証拠です たくさん用意されたチームジャージはプレゼント品だたくさん用意されたチームジャージはプレゼント品だ


そしてレースを総括。「最初からワールドツアーチームが本気で逃げて、今までの展開とは違っていましたね。日本人選手が活躍するシーンはなかった厳しいレースでした。でも厳しいレースをいつも走ってきた自分たちとしては有利でした。中根があのメンバーのなかであの位置に残れたことは凄いこと。皆がチームプレイを100%こなしてこそ中根が残れたんです。中根は今年怪我が多かったけど、最後に結果を残してくれてよかった」。

イラストのチームフラッグはがめんださん作イラストのチームフラッグはがめんださん作 マルコ・カノラにサインを貰いますマルコ・カノラにサインを貰います


そして、やはり今年のハイライトはジロでの初山翔の4時間に及ぶ大逃げと、ダミアーノチーマによる第18ステージの優勝だったという。「グランツールは自分にとっても初めて。未経験のことばかりでした。距離の長さ、熱狂的なファン、コースの厳しさ。ジロは本当に強くなければ勝てないってことを実感しました。初山の逃げは生放送を4時間独占ですからね。逃げに後から2、3人合流してくるかな?と思ったけど、一人でちょっとかわいそうでしたね(笑)。チーマのステージ優勝は3週間目の出来事でした。皆が疲れ切った頃、3週間と長いグランツールでは、強いワールドツアーチームでも戦い方が変わるんですよね」。

伊藤雅和。怪我はあったが全日本ロードで5位になるなど好調だった伊藤雅和。怪我はあったが全日本ロードで5位になるなど好調だった 伊藤雅和選手と、レースで使われたゼッケンと伊藤雅和選手と、レースで使われたゼッケンと


アンダー4年間をフル出場、今年で4回目のジャパンカップを終えた伊藤雅和は全日本選手権ロードでは5位に食い込んだ。怪我のためレースプログラムの変更があったが、ツール・ド・北海道ではザッカンティの総合優勝のためにアシストとしてよく仕事をしたのが思い出だ。

初山翔がジロ・デ・イタリアについて語る初山翔がジロ・デ・イタリアについて語る ジロスペシャルバージョンのウェアを入手し、初山翔にサインしてもらった高田さんジロスペシャルバージョンのウェアを入手し、初山翔にサインしてもらった高田さん


そしてお待ちかね初山翔の登場。質問はやはりジロについて。「いろいろな人に感動したと言ってもらえたのが嬉しかったですね。3週間のレースはとにかく長く厳しすぎる。走りきれるとは思っていなかった。毎日なんとかゴールしようと精一杯。大きな達成感がありました。自分の中でも大きなことでした」と振り返った。

「初山はジロではいつもオレより遅かったんだ」とマルコ・カノラ「初山はジロではいつもオレより遅かったんだ」とマルコ・カノラ
陽気なマルコ・カノラはマイクを握ると冗談交じりで喋りだす。「ジロの期間中、自分より遅い選手が居た。それが初山だった。ジロのすべてのステージでオレは初山より前でフィニッシュしているんだ! あるステージでは背中を押してやったから初山は完走できて、彼はゴール後にオレに感謝したんだ!」と、大げさに語り、一同爆笑。

チームを離れ来季はガスプロムに移籍するマルコ・カノラと一緒にチームを離れ来季はガスプロムに移籍するマルコ・カノラと一緒に
カノラはツアー・オブ・ユタでの勝利があるが、「今年は転んでばかり、リザルトについてはもう忘れたほうがいいんだ」と謙遜。しかし、やはり日本で活躍できたことがいちばんの思い出だと語る。

「2年前のジャパンカップでロードとクリテの両方に優勝できたことは、自分にとってキャリア最大の勝利だった。自分の国から離れた国なのに、日本でこんなに自分のことを応援してくれるとは思ってもみなかった」。

来季はロシアのプロコンチーム「ガスプロム」に移籍するカノラ。来季の目標については「まず最初の目標はチームのロシア人たちが何を喋っているかを理解することだ。そしてジロで初山を倒すことだ」と笑いを取る。しかし、「友人に日本を離れるときに寂しい気持ちになるよ、と言われたが、今まさにそんな気分。心から感謝しています」。

フィリッポ・ザッカンティとマルコ・カノラと一緒にフィリッポ・ザッカンティとマルコ・カノラと一緒に ザッカンティを冷やかすカノラザッカンティを冷やかすカノラ


今年ツール・ド・北海道に総合優勝し、嬉しい一年となったフィリッポ・ザッカンティ。「怪我が多くて、後半から成績が出た1年でした。ツール・ド・北海道の優勝は嬉しかった。アジアのレースは好成績が出せるようで、相性がいいみたいです」と、カノラに囃し立てながらのトーク。

来季はデルコマルセイユ・プロヴァンスとの契約が決まった石上優大来季はデルコマルセイユ・プロヴァンスとの契約が決まった石上優大 たくさんのチームグッズがプレゼントに用意されたたくさんのチームグッズがプレゼントに用意された


そして研修生としてチームに加入し、来季はデルコマルセイユ・プロヴァンスとの契約が決まった石上優大。 「AVCエクサンプロヴァンス、EQADS、そしてNIPPOと3種類のジャージと3つのヘルメットを使いまわして忙しかった1年です」と軽く笑いを取る。NIPPOの印象を聞かれると「イタリア人の絡みについていけない!キツイっす」と本音を暴露。「来年はまずフランス人と友だちになること」と、プロコンの選手としての一歩の抱負(?)を述べた。 

ジャパンカップ6位と2年連続アジア人最高位の中根英登ジャパンカップ6位と2年連続アジア人最高位の中根英登
そしてジャパンカップ6位と2年連続アジア人最高位の中根英登。「カノラが逃げに乗った時にもうキツくて、『もうそのまま行ってくれ!』と思いました。あと10周あるなんて?!メイン集団が追走して、これはこの集団で優勝争いが始まると、気を入れ直しました。今年のジャパンカップは海外トップチームが本気で臨んでいて、ヨーロッパのレース同様でした。その厳しいレースの中でトップ10に入れたのは良かった。でも表彰台が見えていただけに、残り200mで全身が攣って動けなかったのは悔しい。表彰台に上れなかったのはチームの皆にゴメンなさいという気持ち」と、レースを振り返った。

中根英登と一緒に中根英登と一緒に

フランチェスコ・ペロージGMフランチェスコ・ペロージGM チームエディションのサドルに選手たちのサインを集めましたチームエディションのサドルに選手たちのサインを集めました


最後にフランチェスコ・ペロージGMから締めの挨拶。「5年間ありがとうございました。5年間に挙げた勝利や素晴らしい結果も大事ですが、日本とイタリアが近くなって一緒になれたことはもっとも大事なことでした。私達イタリア人にとって日本の皆さんと触れ合ったことで、礼儀正しさや正確さなど、イタリア人にできないことを知ることができ、色々なことを学びました。心から感謝しています。今までの5年間に感謝しています。これでサヨナラではなく、ちょっとお休みという気持ちでいます。また会いましょう。これから選手やスタッフたちは違うチームジャージに身を包むことになるかもしれないけど、これからも変わらずに支えてください」と話した。

ジロ・デ・イタリアのタイムトライアルのネームボードをゲットした女性ジロ・デ・イタリアのタイムトライアルのネームボードをゲットした女性
チームは来季フランスのプロコンチネンタルチーム、デルコマルセイユ・プロヴァンスと合併(あるいは融合)することを前提としたスポンサーシップの合意に向けての協議に入っていることが明らかにされている。来季の体制はまだ発表できる段階ではなく、選手それぞれについての去就、つまり継続所属や移籍もまだ発表前の段階。会場に集ったファンたちはそのことを気にしながらも、サポーターとして見守るという姿勢で楽しんだ宴だった。

ジャパンカップのアジア人最高位ジャージがプレゼントに!ジャパンカップのアジア人最高位ジャージがプレゼントに!
チームからはウェアやグッズなどの大放出とも言えるプレゼントが提供され、抽選会で振る舞われた。また、パーティでふんだんに振る舞われたFANTINIのワインも帰りには皆にお土産として渡されるなど、「絶対損はさせない」という前触れ通りの大判振る舞いのパーティだった。

チームとともにファンも心を一つにしたこの5年間。来季は新たな展開が待っているが、NIPPOの支援は継続。おそらく日本人にとって応援したくなる国際的なプロチームとして継続するだろう。チームを支えるファンの気持ちも続くようであって欲しい。

ありがとうNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ! 未来に幸あれ!ありがとうNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ! 未来に幸あれ! photo:Makoto.AYANO

photo&text:Makoto.AYANO