ベルギーはブリュッセルで迎えるグランデパール。ツールが用意した第1ステージはロンド・ファン・フラーンデレンへの敬意を込めたコース。いつもと違う様相のカペルミュールで、金色をまとったロンドのスター「GVA」が躍動し、ステージに勝ったのはもうひとりのシクロクロス出身選手。悪路を制するものがロードも制する?



エディ・メルクスの描かれたマイヨジョーヌにすり寄るエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)エディ・メルクスの描かれたマイヨジョーヌにすり寄るエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Makoto.AYANOベルナール・イノー、レイモン・プリドール、ベルナール・テブネ、エディ・メルクスベルナール・イノー、レイモン・プリドール、ベルナール・テブネ、エディ・メルクス photo:Makoto.AYANO


ディメンションデータにバイクを供給するBMCのスタッフとしてサポートするカデル・エヴァンスディメンションデータにバイクを供給するBMCのスタッフとしてサポートするカデル・エヴァンス photo:Makoto.AYANOスイスからやってきたシュテファン・キュング応援団スイスからやってきたシュテファン・キュング応援団 photo:Makoto.AYANO


ブリュッセルのグランデパールにチーム光のジャージを着た日本人がブリュッセルのグランデパールにチーム光のジャージを着た日本人が photo:Makoto.AYANONTTイギリスの女性たちがディメンションデータをサポート。来季はメインスポンサーになるNTTイギリスの女性たちがディメンションデータをサポート。来季はメインスポンサーになる photo:Makoto.AYANO


グランデパール中のグランデパール。5日のブリュッセル滞在でいよいよ走り出すツール・ド・フランスがラインステージのスタートに選んだのはチームプレゼンテーションの会場ともなったグランプラス(La Grand-Place)だ。世界で最も美しい広場のひとつと呼ばれるユネスコ世界遺産に指定された広場。普段から観光客で溢れているベルギーいちの名所がツールのスタートになる。

ベルギー王族と握手を交わすエディ・メルクスベルギー王族と握手を交わすエディ・メルクス photo:Makoto.AYANO
ニュートラルスタートは市内の公園。パレード走行で数キロ走ってグランプラスで止まり、セレモニーの運び。30分先に出てなんとかプレスカーの駐車場所を1km先に強引に確保し、訪れてみるとすごい人口密度。
「ベルギー王族が来賓としていらっしゃるから、セキュリティは厳しい」とは事前に主催者から注意喚起されていた。ちなみに観光客も排除されるわけでなく、入場制限もなく誰もが入場無料で観戦もできる。なんとか辿り着くと、日本のファンの2人から「4時間待っています」と、柵の最前列から声がかかった。

グランプラスに詰めかけた観客の声援に応えるエディ・メルクスグランプラスに詰めかけた観客の声援に応えるエディ・メルクス photo:Makoto.AYANOセレモニーを終えグランプラスを走り出していく選手たちセレモニーを終えグランプラスを走り出していく選手たち photo:Makoto.AYANO


すごい数のSPが警備にあたるなか、総合ディレクターのプリュドム氏とともに赤い車に乗ったエディ・メルクスが選手たちを先導し、ルーフから身を乗り出して沿道の観客に手を振りながら広場に到着した。今日も巻き起こるEDDY!EDDY!コール。設定されたのは数分という短い時間。賛美歌隊が歌い、ベルギー王族とVIP、メルクス氏らが選手たちを迎える。

セレモニーを終えグランプラスを走り出していく選手たちセレモニーを終えグランプラスを走り出していく選手たち photo:Makoto.AYANO
その様子はSPや警備員たちとやや闘いながらなんとか撮影。世界一自転車競技熱が高いベルギーが、世界最高の自転車レースを迎えるのだから、その格式たるや。自分が今まで経験したなかでもっとも荘厳なスタートセレモニーだった。警備が厳重すぎてうまく撮影できなかったけれど。

セレモニーを終えグランプラスを走り出していく選手たちセレモニーを終えグランプラスを走り出していく選手たち photo:Makoto.AYANO
セレモニー撮影にチャレンジしたフォトグラファーは自分を入れても数名のみ。なぜならステージ序盤に今日のハイライトの「ミュール・ド・グラモン」があるからだ。セレモニーを撮っていては選手が到着する前にたどり着けない恐れがあったけれど、そこはロンド・ファン・フラーンデレン取材で培った土地勘で、先行に成功。

バリアが設置されたカペルミュール。珍しい光景バリアが設置されたカペルミュール。珍しい光景 photo:Makoto.AYANO
違和感たっぷりの「ミュール・ド・グラモン」という呼び名。「ミュール・カペルミュール」、あるいは「ミュール・ヘラールツベルヘン」は繰り返し言うまでもなく、ロンド・ファン・フラーンデレンでかつて使われた勝負どころの石畳の激坂。ロンドのアイコンであり、サイクリストが目指す聖地。しかし到着してみるとツールでの呼び名のように、違和感たっぷりのカペルミュールが待っていた。山岳賞マイヨアポアのシャツを着たファンががたくさん居て、「ここはアルプス山岳?」状態。(神聖な)教会前には広告ボードのバリアが設置され、山岳ポイントを示すアーチが架けられていた。ロンドのときは教会は「すっぴん」である。

カペルミュール前の丘には観客が鈴なりだカペルミュール前の丘には観客が鈴なりだ photo:Makoto.AYANO
2022年はヨークシャー(UK)でグランデパールを2022年はヨークシャー(UK)でグランデパールを photo:Makoto.AYANOミュールに観戦にやってきた観客達ミュールに観戦にやってきた観客達 photo:Makoto.AYANO


教会前の十字架の丘も、フランドリアンな人とツール特有のほのぼのとした(外国の)観客が混在して盛り上がっている。いつもは飾りっ気のないカペルミュールは、しっかりとツール色に染まっていた。ちなみに3日前に下見したミュールの(日常の)様子は現地レポート1で紹介しました。

ミュール・ド・グラモンでアタックするグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)ミュール・ド・グラモンでアタックするグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) photo:Makoto.AYANO
ロンド・ファン・フラーンデレンの聖地に一番乗りしたのは、ロンドのスター、GVAことグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)だった。驚くことにGVA含む4人の逃げはすぐに容認され、そしてミュールの走り方を知り尽くしたファンアーフェルマートが教会前の頂上山岳ポイントを当然のように奪取。

金色のヘルメットとバイクを駆り、一昨日発表されたスペシャルなホイールで足元を固めたGVAが舞うように先頭で走り抜けた。この地に詰めかけた観客達がここを観戦ポイントにわざわざ選んだ理由は、例外なくロンドにシンパシーをもつから。おまけにこの地からわずか30kmほどのローケレンが出身地というGVA。金色を身にまとった彼らのスターがやってくれたのだから、盛り上がらないはずがない!

ミュールを登るメイン集団ミュールを登るメイン集団 photo:Makoto.AYANO
CCCチームのファビオ・バルダート監督はGVAの逃げは予定されたものだったと言う。「グレッグが水玉ジャージをとることは作戦にあった。なぜ彼の逃げがすぐに容認されたのか?それに驚いたかと聞かれればイエスでありノーでもある。おそらく今日はスプリントステージになることが分かっていたし、4人の逃げならいいと集団が判断したんだろう。第2ステージのチームタイムトライアルに向けて皆が脚を温存しておきたいと思ったんだろうね」。

メルクスの時代を感じさせるPEUGEOTのサポートカーメルクスの時代を感じさせるPEUGEOTのサポートカー photo:Makoto.AYANO
2kmのパヴェは優しくはない2kmのパヴェは優しくはない photo:Makoto.AYANO
この日コースにもうひとつ加味された「ロンド風味」は、コースが最南端で折り返す地点にある名もなき2kmのパヴェ。到着してみると、そこは多国籍の観客で溢れて(どちらかといえば)雰囲気はパリ〜ルーベ風だった。

2kmのパヴェに突入するプロトン2kmのパヴェに突入するプロトン photo:Makoto.AYANO
パヴェではチームスタッフがパンクに備えてホイールを掲げるパヴェではチームスタッフがパンクに備えてホイールを掲げる photo:Makoto.AYANO
マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)が牽引する逃げ集団マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)が牽引する逃げ集団 photo:Makoto.AYANO
パヴェ区間の遅れをチームメイトに引かれて挽回するアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEエミレーツ)パヴェ区間の遅れをチームメイトに引かれて挽回するアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEエミレーツ) photo:Makoto.AYANO
カペルミュールに加えてわずか2kmのパヴェ区間。しかしチームによってはこの日しっかりとパヴェ向きのタイヤを選んで装着したチームも複数あった。なかでもUAEチームエミレーツはチューブレスタイヤを全員が使用し、ツール・ド・フランスで初めてチューブレスタイヤを本格投入したチームになった。使用したのはヴィットリアのチューブレスレディタイプ、コルサとコルサコントロール。ホイールはカンパニョーロBORAのWTO。

選手全員がチューブレスタイヤを選択したUAEチームエミレーツ選手全員がチューブレスタイヤを選択したUAEチームエミレーツ photo:Makoto.AYANO
実はこの組み合わせはアレクサンドル・クリストフが春のクラシック序盤戦で絶賛した組み合わせで、転がり抵抗が低く、荒れた路面に対するに快適性が格段に高いという。しかしパリ〜ルーベでは3度のパンクに見舞われて、メディアにより「不要なリスクをとった選択ミスで、重要なレースを落とした」として叩かれた経緯もある。ディスクブレーキタイプは採用していない。チューブレスはまた新たな選択となりそうだ。

ジルベールは?ジルベールは? photo:Makoto.AYANOデンマーク人選手を応援。今年は今までで最大人数だデンマーク人選手を応援。今年は今までで最大人数だ photo:Makoto.AYANO


集団ゴールスプリントになるスプリンター向けのステージ、という前評判も、上り坂スプリントは予想以上にタフなものだった。優勝候補のディラン・フルーネウェーヘンの落車で、急遽ユンボ・ヴィズマのスプリント代役をつとめたマイク・テウニッセン(オランダ)がサガンやユアンを下した。

ハンドルを投げ込むペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)ハンドルを投げ込むペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Makoto.AYANO
現在26歳のテウニッセンは2013年にシクロクロス世界選手権のU23レースで優勝。2015年にロットNLユンボ(現ユンボ・ヴィズマ)でプロ入りした。2017年から2年間サンウェブで過ごし、今年古巣のユンボ・ヴィズマに戻っている。今シーズンはパリ〜ルーベを7位で終え、ダンケルク4日間レースでステージ2勝&総合優勝。さらに直前のZLMツアーでステージ1勝&総合優勝を飾っていた。

エディ・メルクスがマイヨジョーヌのプレゼンターを努めたエディ・メルクスがマイヨジョーヌのプレゼンターを努めた photo:Makoto.AYANO
「自分の身に何が起こったのかよくわからない」を連発するテウニッセン。アメリカ、ルイヴィルでのCX世界選手権U23でアルカンシェルを着たとき、横に並んだのはチームメイトのワウト・ファンアールトだ。昨今はスプリントもTTもこなせると驚かれているワウトより、スプリントに長けるかつてのシクロクロッサー。またしてもシクロクロスをルーツにもつスターが新たに誕生した。

記者会見では「ファンアールト、そしてマチュー・ファンデルプール、そして君。シクロクロスの選手がロードで勝ちまくっているのに驚いている。シクロクロスをするとロードで勝てるのか?その秘密を教えてくれ」と質問が飛んだ。

「シクロクロスのレベルはとても高いんだ。人々はまだその競技の価値をあまり理解できていないようだけど、選手レベルはとても高い。だから総合的にも活躍できる選手がいるんだと思う。走りとしてはずば抜けた加速力が必要だし、ハンドリングスキルやバイクコントロールテクニックも非常に高いものが求められる。それがロードサイクリングにも良い面に働くんだ。今、若い選手たちがシクロクロスにチャレンジするようになっている。それはとても良いことだと思う。自転車レースすべてに活かせるから」。

見慣れないマイヨアポアに身を包んだグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)見慣れないマイヨアポアに身を包んだグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) photo:Makoto.AYANO
セレモニーの締め、観客の大歓声に応えるエディ・メルクスセレモニーの締め、観客の大歓声に応えるエディ・メルクス photo:Makoto.AYANO


text&photo:Makoto.AYANO in Brussels BELGIUM
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