フランドル最古のレース「シュヘルデプライス」でファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が2連覇を達成。横風分断で遅れを取り、終盤の落車で足止めされる逆境を跳ね返しての勝利となった。



楽しげなイスラエルサイクリングアカデミー楽しげなイスラエルサイクリングアカデミー (c)CorVosアンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック)アンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック) (c)CorVos

国旗が真横にたなびく中、選手たちがリアルスタートに向けて移動する国旗が真横にたなびく中、選手たちがリアルスタートに向けて移動する (c)CorVos
シュヘルデプライス2019 コースマップ&プロフィールシュヘルデプライス2019 コースマップ&プロフィール (c)www.scheldeprijs.beロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催されるセミクラシックレースが「シュヘルデプライス(UCI1.HC)」。今年で開催107回目を迎える伝統ある一戦であり、ロンド(1913年初開催)よりも歴史が古く、フランドル最古のロードレースとされる。

コースはロンドよりもルーベ寄りで、難易度の高い登坂が少ないためスプリンターが多く出場する。大一番が控えるタイミングだけにフランドルレーサー勢揃い、というわけにはいかないが、週末のチームワークを確認する意味でも重要度は高い。

今年は昨年覇者ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、好調のパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、これまで大会最多の5勝をマークしているマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)、アンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック)といったスプリンターや、ロンドでアルベルト・ベッティオル(イタリア)のプロ初勝利をお膳立てしたセップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト)などが顔を揃えた。

オランダからベルギーに入国。電光掲示板もレースを歓迎オランダからベルギーに入国。電光掲示板もレースを歓迎 (c)CorVosオランダとベルギーを結ぶ海底トンネルを通過オランダとベルギーを結ぶ海底トンネルを通過 (c)CorVos

ボーラ・ハンスグローエが積極的に第一グループを率いるボーラ・ハンスグローエが積極的に第一グループを率いる (c)CorVos
オランダのテルネーゼンの街をスタートし、6km続く海底トンネルを通過してベルギーに入国。で風車が勢いよく発電するゼーランド州を駆け抜ける中では当然のようにエシュロン(横風隊列)が形成され、分断と追走、合流、そして再び分断という超サバイバルレースが長く続くこととなった。

各チームが細道を組み合わせたルート上でふるい落としを行うナーバスな展開の中、後方では力尽きたキッテルが脱落し、昨年覇者ヤコブセンが落車に巻き込まれて遅れるシーンも。200kmの行程中140kmにも渡ってこのような状態が続いた末、ケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス・ソルシオンクレディ)とクリース・デボント(ベルギー、コレンドン・サーカス)が逃げたことでようやくレース状況は落ち着きを取り戻した。

強い海風でいくつものエシュロンが発生する強い海風でいくつものエシュロンが発生する (c)CorVos
度重なるペースアップでマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が脱落度重なるペースアップでマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が脱落 逃げるケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス・ソルシオンクレディ)とクリース・デボント(ベルギー、コレンドン・サーカス)逃げるケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス・ソルシオンクレディ)とクリース・デボント(ベルギー、コレンドン・サーカス) (c)CorVos


1700mのパヴェ区間「ブロックストラート」を含む17kmの周回コースを2周する終盤に入ると、集団からはエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)がアタック。ほぼ同時に落車が発生し、アッカーマンやキッテルが足止めを食らい、アッカーマンは追走の末に集団復帰したもののここまでで脚を使っていたキッテルは力なく遅れていった。

ボアッソンハーゲンは逃げていたデボントをパスし、後方から合流してきたリオネル・タミニオー(ベルギー、ワロンヌ・ブリュッセル)を千切って最終盤まで独走を続ける。しかしドゥクーニンク・クイックステップ率いる大集団を振り切ることはできず3kmを切って飲み込まれた。

終盤に独走したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)終盤に独走したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) (c)CorVosティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリントに向かう集団を牽引ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリントに向かう集団を牽引 (c)CorVos

悠々と先行するファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)悠々と先行するファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
「2」を示しながら勝利したファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)「2」を示しながら勝利したファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
集団からはジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)が抜け出しを試みたが成功せず、各チームを抑え込みながらドゥクーニンク・クイックステップ主導のまま最終スプリントへ。マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ・アルペシン)がロングスパートを仕掛ける中、冷静に状況を読んだリードアウトの名手ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)がヤコブセンを発射。

絶好のタイミングで仕掛けた22歳ヤコブセンが、25歳マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、サンウェブ)と23歳クリストファー・ローレス(イギリス、チームスカイ)を悠々と抑え、2連覇をアピールしながら勝利した。

ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)とチームメイトファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)とチームメイト (c)CorVosガールフレンドと勝利を喜ぶファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)ガールフレンドと勝利を喜ぶファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos

シュヘルデプライス2019表彰台シュヘルデプライス2019表彰台 (c)CorVos
「アルガルヴェから不調に陥ってしまっていたので、今回の勝利はすごく重要なものとなった。チームメイトなくしては勝てなかったし、最終盤でも奮闘してくれた彼らに感謝したい」と、2連覇を達成したヤコブセンは語る。途中のエシュロンでは後方集団に取り残され、後半の落車による足止めからも復帰して勝つ強いレース運びを見せての勝利に「プレッシャーはあったけれどチームワークで跳ね返せたよ」と安堵する。ドゥクーニンク・クイックステップとしては今シーズン22勝目であり、アスタナ(21勝)を抜いて勝利数で1位に返り咲いている。

シュヘルデプライス2019
1位 ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4h26’45”
2位 マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、サンウェブ)
3位 クリストファー・ローレス(イギリス、チームスカイ)
4位 ユーゴ・オフステテール(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)
5位 ローイ・ヤンス(ベルギー、コレンドン・サーカス)
6位 クリス・ボックマンス(ベルギー、ヴィタルコンセプト・B&Bホテルス)
7位 マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ・アルペシン)
8位 エミルス・リエピンス(ラトビア、ワロンヌ・ブリュッセル)
9位 ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)
10位 マッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード)
text:So.Isobe
photo:CorVos

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