ジャパンカップ翌日、シーズンを終えリラックスした様子のロットNLユンボへ行ったインタビューを紹介。今回のレースの振り返りや日本の印象、来季の目標などを聞いてみた。



強力なメンバーを揃え来日を果たしたチームロットNLユンボ強力なメンバーを揃え来日を果たしたチームロットNLユンボ photo:Makoto.AYANO
昨年に引き続き2年連続のジャパンカップ出場を果たした若手クーン・ボウマンとアントワン・トールク、ビッグレースでの活躍で日本でも名高いロベルト・ヘーシンク、元シクロクロス世界王者ラース・ボームなど、役者揃いのメンバーで来日を果たしたロットNLユンボ。

来季はユンボが単独スポンサーとなり、名前も「チームユンボ」へと変更されることは既にUCIの発表の通り。来日メンバーの中ではプロコンチネンタルチームのルームポットへ移籍するボームを除いて5名がチームに残るため、新たにカチューシャから移籍するトニ・マルティンなどと共に再来日に期待したいところだ。

今回シクロワイアード編集部は、そんな彼らに対して独占インタビュー。大会翌日、ビアンキバイクストア丸の内で開催されたセミナーを前に、ジャパンカップのこと、日本のこと、彼らが乗るビアンキのこと、そして来シーズンのことについて聞いた。



― 2日間レースお疲れ様でした。振り返ってみていかがですか

「来年も日本に戻ってきたいとすでにチームに伝えてあるんだ」とボウマン「来年も日本に戻ってきたいとすでにチームに伝えてあるんだ」とボウマン
ボウマン:まず自分はスペシャルバイクに乗ることができて、とても特別なレースとなった。個人的にもあのペイントはとてもクールだと思ったよ。日曜日は逃げで先頭を走りチームやバイクを大いにアピールできて良かった。観客からもたくさん写真を撮ってもらえたし、レース中何回も名前を呼んでもらえてとても嬉しかったね。

アントワン:去年も走ったコースだからどんなものかは分かっていたけど、それでも非常にタフなレースだった。チームはとてもグッジョブな走りを見せてくれて2位に入ることができて嬉しく思う。スプリントでは分が悪かったからラストは登りで引き離そうとトライしたけどさすがに厳しかったね。最後まで諦めずチャンスを狙ったけど惜しくも届かなかったのは悔しいよ。

ヘーシンク:今回はよりハードなレースにしようと各々がベストを尽くせたと思う。最初にクーンが逃げを打ってくれて我々にとって有利な展開に持ち込めた。そこから登りで自分が仕掛けてグループの人数を絞ることができ、さらにアントワンを最終局面まで残すことができたんだ。ホイールトラブルで自分が遅れてしまったが、アントワンを一人にしていなければまた展開は変わったはず。しかし勝ちに絡める動きをチームで行うことができ、素晴らしい結果でシーズンを終えることができ満足しているよ。

組織立ってレースをコントロールしたロットNLユンボのメンバー組織立ってレースをコントロールしたロットNLユンボのメンバー photo:Makoto.AYANO最終局面まで先頭集団に残り2位に入ったアントワン・トールク最終局面まで先頭集団に残り2位に入ったアントワン・トールク photo:Makoto.AYANO

ジャパンカップスペシャルペイントのバイクを使用したボウマンジャパンカップスペシャルペイントのバイクを使用したボウマン photo:Makoto.AYANO

― 初来日のメンバーも多かったと思いますが、宇都宮そして東京はいかがでしたか。また日本のレース、ファンの雰囲気はどうでしたか

ボーム:日本は初めてだったけど、とても多くの観客が我々を応援してくれて非常に嬉しかったよ。こんなに自分たちのファンがいるのかと驚いたし、ビアンキのバイクに乗っている人も多く見ることができて良い気分さ。東京はハイテクの都市というイメージもあって来たけど、街中は非常にキレイでとても良かった。

ワイナンツ:日本のロードレースの盛り上がりが想像以上でビックリしたよ。ファンのみんなもとてもポジティブに接してくれたので嬉しかったね。日本の食べ物は美味しかったし、その他の文化にも触れることができて貴重な体験となった。あと東京はすごく大きな街だね。日本の首都圏だけで母国ベルギーの人口の3倍もの人が住んでいるなんてちょっと考えられないよね。

気軽に記念撮影に応じてくれたラース・ボーム気軽に記念撮影に応じてくれたラース・ボーム photo:Makoto.AYANOファンとのフリーランを楽しんだマールテン・ワイナンツファンとのフリーランを楽しんだマールテン・ワイナンツ photo:Makoto.AYANO

表参道を散策するロットNLユンボ一行。各々東京観光を楽しんだ様子表参道を散策するロットNLユンボ一行。各々東京観光を楽しんだ様子 今回の来日にはヘーシンクの奥さんも同行。2人は他メンバーよりも1日長く滞在したのだとか今回の来日にはヘーシンクの奥さんも同行。2人は他メンバーよりも1日長く滞在したのだとか

アントワン:日本のファンはとてもエキサイティングで、レースの雰囲気もまるでツールみたいだった。みんな本当に自転車が好きなんだなと伝わってきたし、こんな環境でレースができることは最高さ。またジャパンカップを走りたいとみんなが思ったよ。

ボウマン:写真撮影のために多くの人が駆け寄ってくれたし、非常に近い距離感で接してくれたので気持ち的にもリラックスできた。こんなにサインを求められることなんてないから不思議な気分になったよ。握手やセルフィーもたくさんできたし、SNSにも上げてくれてとてもハッピーさ。僕らは別に特別な人じゃない、ただちょっと自転車が速いだけなのさ。そんな僕らを目当てとしてくれる人が大勢いてこんなにも嬉しいことはないね。来年ももちろん戻ってきたいと思っているし、すでにその気持ちはクラウディオ(ビアンキのマネージャー)にも伝えてある。

― 今年はチームとして多くの勝利を挙げましたが、その要因はどこにあるのでしょう

「選手育成に力を入れている素晴らしいチーム体制が良い結果を残している」とヘーシンク「選手育成に力を入れている素晴らしいチーム体制が良い結果を残している」とヘーシンク
ヘーシンク:私はチーム創設時から長年いるけど、毎年毎年サポート体制が良くなっているんだ。トレーニングのやり方や栄養管理、バイクのポジション、エアロダイナミクスの追求などいずれも専門家が一緒になって考えてくれる。選手育成に力を入れており、若手も引き続きチームに残り個々人をどうやって強化していくかスタッフが真剣に考え、毎年改善を続けている。

見えないところで多くの人が関わって選手は走ることができているんだ。ツールだってワンデイレースだって走れなければ勝つこともない。我々を支えてくれる多くの人々がいるおかげとも言えるね。お互いに助け合える情熱を持ったチームなんだ。様々な助けのおかげで今年はチームとして33もの勝利数を挙げることができた。これは本当に素晴らしいことさ。

― ビアンキの新作Oltre XR4 Discもテストしていると聞きます。バイクの性能やディスクブレーキへの印象はいかがですか

「Oltre XR4 Discは特にダウンヒルが最高なバイクに仕上がっている」と太鼓判を押すボーム「Oltre XR4 Discは特にダウンヒルが最高なバイクに仕上がっている」と太鼓判を押すボーム
ボーム:今回オーストラリアにて自分がXR4 Discをテストさせてもらったんだ。個人的にディスクブレーキは非常に有益だと思っていて、レースでも使っていきたいほど。ダウンヒルでのフィーリングは非常に気持ちよく、コーナーもより攻めていけるバイクに仕上がっているね。唯一の難点は重量かな。8kg近い車重となるとレースではややネックかも知れない。また現状プロトンではディスクブレーキとリムブレーキが半々くらいで混在しており、コントロール性の違いもあってこの状態はやや危険だと感じる。しかし自分が使う上では全く問題なくディスクブレーキ化の流れは歓迎すべき変化だね。

ワイナンツ:自分の長いキャリアの中でバイクの性能は大きく向上したと感じるよ。ビアンキで言えばXR2からXR4へアップデートされた時には、剛性やハンドリングなど全てが良くなったね。非常によく走るバイクでぜひ多くのサイクリストにも乗ってもらいたい1台さ。電動シフトも当たり前となったし、今度はディスクブレーキも登場した。どんどん進化していく機材にはワクワクさせられるね。

ボウマン:個人的にはTTバイクのAquila CVも非常に気に入っていて好きなバイクなんだ。ビアンキの性能は語るまでもないよ。今シーズンこれだけ勝利を飾れたバイクなんだ、チームからの不満なんてなく最高の機材と言えるね。自分はノーマルブレーキのフィーリングが好きだけど、来年の機材がどうなるかはチーム次第。

― オフシーズンの過ごし方や来季の目標などをお聞かせ下さい

アフターパーティーでは100名のファンを前に「また戻ってきたい」と口を揃えたアフターパーティーでは100名のファンを前に「また戻ってきたい」と口を揃えた
アントワン:プロになってまだ勝利がないから、まずはどこかのレースで勝ちたいね。東京オリンピックのコースプロフィールも見たけど登りが多くて自分向き。オリンピックメンバーに選ばれたいと思っているし、そこでまた日本のファンの前を走れたら最高だね。

ボウマン:ここからはオフシーズンでみんな3~4週間はトレーニングから離れるかな。その後はスペインでトレーニング開始さ。例年通りダウンアンダーからシーズン開始。休めるのはほんの少しの期間だけだね。

ボーム:オフシーズンは家族とゆっくり過ごすよ。そして来年も今年と同じような良いコンディションを保って春のクラシックレースに臨みたい。再びハイレベルなレースを見せられたらと思う。

ワイナンツ:自分はもしかしたら来年が選手としてラストの年になるかもしれないと考えている。そうなるとキャリア最後のバイクがビアンキということになるね。年長者として若手の選手にいいアドバイスができるよう努めていきたい。

ヘーシンク:数週間後休んだ後にはもうトレーニングプログラムを開始。来年もジロかツールかわからないけどグランツールに焦点を合わせて調整していくはず。ステージ優勝を狙うか総合ライダーのアシストを担うことになるね。ツールならプリモシュ(・ログリッチェ)とかステフェン(・クライスヴァイク)、ジロならジョージ(・ベネット)がエースかな。自分自身もジロやツールとは相性が良いんだ。もちろんジャパンカップもチームで優勝を目指してまた戻ってきたいと思っているよ。

来年の”チームユンボ”にもジャパンカップ参戦を期待したい来年の”チームユンボ”にもジャパンカップ参戦を期待したい photo:Kei Tsuji
「東京の大きさにビックリした、お寿司も食べられて満足さ」とオリヴィエ「東京の大きさにビックリした、お寿司も食べられて満足さ」とオリヴィエ また今回話を聞きそびれたダーン・オリヴィエは、自身のブログで「Arigato Japan(ありがとう日本)」と題しジャパンカップを振り返った内容を長文で投稿している。その中でダーンは「去年ジャパンカップに参加したメンバーから話は聞いていて本当に楽しみしていた。自分が行けると決まった時は興奮したよ。宇都宮ではたくさんのファンたちが待ってくれていたので嬉しかった。人々は本当にフレンドリーで礼儀正しく熱狂的だった。アフターパーティーでもらったプレゼントと今回のナイスな思い出をバッグに詰め帰路についたんだ。自分は今シーズン望んでいた結果を残せなかったけど、また来年強くなって再び日本に戻ってきたい」と綴っている(ダーンのブログはこちら)。

text&photo:Yuto.Murata
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