計8日間で争われるツアー・オブ・ブリテンが総合争いの行方を決定づける第6ステージを迎えた。クイーンステージと呼ぶに相応しい1級山岳の山頂フィニッシュは、ワウト・プールスが制す。総合はステージ2位に入ったジュリアン・アラフィリップが首位に立ち、英国1周レース制覇に一歩近づいた。
丘陵地帯を行くツアー・オブ・ブリテンのプロトン photo:www.tourofbritain.co.uk
イギリス最大規模のステージレース、ツアー・オブ・ブリテン(UCI2.HC)が、総合成績の行方を決定づける天王山、第6ステージを迎えた。レースは、スタート地点バロー・イン・ファーネスから、ウィンラッター・パスに至るまでの168.3kmで争われた。コースには計5つのカテゴリー山岳が登場し、フィニッシュのウィンラッター・ヒルを含め4つが1級というクイーンステージと呼ぶに相応しいハードなプロフィールだ。
前日のチームタイムトライアルを終えて総合首位に立つのはプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)。6秒差で2位につけるのはジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)。中間スプリントとフィニッシュのボーナスタイムだけでも順位が入れ替わる可能性があり、16秒差の3位につけるチームメイトのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)と共に攻勢に出ることは必至な展開。
レーススタート直後の海岸線では横風の影響もありエシュロンが形成される展開になるも、総合上位勢は誰一人後ろに取り残されることなく、17.6km地点に設けられた中間スプリントポイントになだれ込んだ。クイックステップフロアーズのメンバーたちが先頭を固め、アラフィリップが3秒のボーナスタイムを獲得することに成功。一方で、ログリッチェはボーナスタイムを得ることは出来ず、アラフィリップが総合首位に立つための駒を一つ進めることに。
イギリス王者ジャージを着用するコナー・スイフト(マディソン・ジェネシス)ら強力な逃げが先行する photo:www.tourofbritain.co.uk
序盤はログリッチェやアラフィリップが巻き込まれる落車が発生するも大事には至らず。そして、トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)とヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)というタイムトライアル世界王者経験者2名、ジェームス・ショー(イギリス、ロット・スーダル)、英国チャンピオンのコナー・スイフト(マディソン・ジェネシス)というイギリス勢2名、計4名の逃げ集団が形成される。
残り80km地点では3分まで先頭とメイン集団の差は広がるが、レースの展開はリーダーを抱えるロットNLユンボのコントロール下。エスケープが生まれレースの展開は概ね落ち着いたが、山岳ポイントでは山岳賞ジャージを着用するニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ)と、中間スプリント賞ジャージを着用するマシュー・ホームズ(イギリス、マディソン・ジェネシス)が激しい闘いを繰り広げる。
この日はフィニッシュ地点でもあるウィンラッター・ヒル(距離3.2km/平均勾配7%)は2回登るコースレイアウトとなっており、その1回目の登坂でホームズが集団から飛び出し独走を開始。2分前方を走る逃げ集団に合流するべく力強くペダルを踏み続ける。
自然豊かなイギリスの大地を駆け回るプロトン photo:www.tourofbritain.co.uk
レース終盤位置取り争いを行うチームスカイ photo:www.tourofbritain.co.uk
残り50km地点に近づくとクイックステップフロアーズからフェルナンド・ガビリア(コロンビア)とイーリョ・ケイセ(ベルギー)が集団の牽引を開始。アラフィリップの総合首位獲得を目指すべく積極的にペースを上げ、TT世界王者経験者を擁す強力な逃げ集団との差を少しずつ削り取る展開に。
メイン集団は45km近く費やし、最終山岳ウィンラッター・ヒルの麓で逃げ集団を視界に捉える。各チームそれぞれの思惑を持って集団内で位置取り争いを行いながら逃げのメンバーを一人ひとりキャッチしていく。そして、ステージ優勝、総合成績の行方を決定づける争いの火蓋が切って落とされる。
まずペースを上げたのは総合3位のユンゲルス。アラフィリップとモビスターの選手を従え、後ろを振り返ること無く山頂を目指して突き進む。総合首位のログリッチェは集団を引き連れこの3人にブリッジを成功させ、勝負を降り出しに戻すことに成功。しかし、ユンゲルスの強力な牽引が終了した残り2kmでアラフィリップがアタックすると集団は崩壊。ログリッチェとヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)だけがその後ろに追いすがる。
冷静な走りでクイーンステージを制したワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) photo:www.tourofbritain.co.uk
なんとかアラフィリップを捉えたカーシーはそのままアタック。続いてその攻勢を耐えしのいだアラフィリップがアタックを繰り出す熾烈な展開に。この2人に追いついてきたのは、ツール・ド・フランスでゲラント・トーマスを総合優勝に導いた1人のワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)だった。この展開にログリッチェはついていくことが出来ず、脱落。
フィニッシュでのタイム差とボーナスタイムを稼ぐため攻勢にでるアラフィリップと、ステージ優勝を狙うカーシーによる猛烈なスパートに対し、プールスは冷静に対処。勾配が急になる区間でプールスがスプリントで2人を引き離し、そのまま先頭でフィニッシュラインに駆け込んだ。「勝利することが出来て嬉しいよ。ツアー・オブ・ブリテンは4回出場し、いつも勝利を手にしてきたんだ。そのうちの3回が山岳勝負なのは、いつだって良いよね。G(ゲラント・トーマス)とイアン・スタナードは本当に素晴らしい働きをしてくれたよ」とプールスはコメントする。
リーダージャージを獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:www.tourofbritain.co.uk
山岳賞を守ったニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:www.tourofbritain.co.uk
ポイント賞は今大会で好調のパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング) photo:www.tourofbritain.co.uk
アラフィリップはプールスに2秒差をつけられたものの、17番手に沈んだログリッチェを30秒引き離すことに成功し、リーダージャージを手繰り寄せた。「まずは再びファンタスティックな仕事をしてくれたチームメイトに感謝したい。今日のプランはリーダージャージを手にすることで、その目標を達成できて大きな喜びを感じている。」とアラフィリップは言う。
第6ステージ終了後の総合成績は首位アラフィリップ、2位にはプールスが浮上、ログリッチェは+33秒の3位に転落した。プールスが「総合順位をあげられたら良いよね。残りはフラットコースのみだが、チャンスは狙っていくつもりだ」と語る通り、第7ステージは4級山岳のみ登場する概ね平坦のレイアウト、最終8ステージはロンドンを発着するオールフラットコース。ボーナスタイムによっては逆転の可能性もあるが、アラフィリップが英国1周レース制覇に一歩近づいた。

イギリス最大規模のステージレース、ツアー・オブ・ブリテン(UCI2.HC)が、総合成績の行方を決定づける天王山、第6ステージを迎えた。レースは、スタート地点バロー・イン・ファーネスから、ウィンラッター・パスに至るまでの168.3kmで争われた。コースには計5つのカテゴリー山岳が登場し、フィニッシュのウィンラッター・ヒルを含め4つが1級というクイーンステージと呼ぶに相応しいハードなプロフィールだ。
前日のチームタイムトライアルを終えて総合首位に立つのはプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)。6秒差で2位につけるのはジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)。中間スプリントとフィニッシュのボーナスタイムだけでも順位が入れ替わる可能性があり、16秒差の3位につけるチームメイトのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)と共に攻勢に出ることは必至な展開。
レーススタート直後の海岸線では横風の影響もありエシュロンが形成される展開になるも、総合上位勢は誰一人後ろに取り残されることなく、17.6km地点に設けられた中間スプリントポイントになだれ込んだ。クイックステップフロアーズのメンバーたちが先頭を固め、アラフィリップが3秒のボーナスタイムを獲得することに成功。一方で、ログリッチェはボーナスタイムを得ることは出来ず、アラフィリップが総合首位に立つための駒を一つ進めることに。

序盤はログリッチェやアラフィリップが巻き込まれる落車が発生するも大事には至らず。そして、トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)とヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)というタイムトライアル世界王者経験者2名、ジェームス・ショー(イギリス、ロット・スーダル)、英国チャンピオンのコナー・スイフト(マディソン・ジェネシス)というイギリス勢2名、計4名の逃げ集団が形成される。
残り80km地点では3分まで先頭とメイン集団の差は広がるが、レースの展開はリーダーを抱えるロットNLユンボのコントロール下。エスケープが生まれレースの展開は概ね落ち着いたが、山岳ポイントでは山岳賞ジャージを着用するニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ)と、中間スプリント賞ジャージを着用するマシュー・ホームズ(イギリス、マディソン・ジェネシス)が激しい闘いを繰り広げる。
この日はフィニッシュ地点でもあるウィンラッター・ヒル(距離3.2km/平均勾配7%)は2回登るコースレイアウトとなっており、その1回目の登坂でホームズが集団から飛び出し独走を開始。2分前方を走る逃げ集団に合流するべく力強くペダルを踏み続ける。


残り50km地点に近づくとクイックステップフロアーズからフェルナンド・ガビリア(コロンビア)とイーリョ・ケイセ(ベルギー)が集団の牽引を開始。アラフィリップの総合首位獲得を目指すべく積極的にペースを上げ、TT世界王者経験者を擁す強力な逃げ集団との差を少しずつ削り取る展開に。
メイン集団は45km近く費やし、最終山岳ウィンラッター・ヒルの麓で逃げ集団を視界に捉える。各チームそれぞれの思惑を持って集団内で位置取り争いを行いながら逃げのメンバーを一人ひとりキャッチしていく。そして、ステージ優勝、総合成績の行方を決定づける争いの火蓋が切って落とされる。
まずペースを上げたのは総合3位のユンゲルス。アラフィリップとモビスターの選手を従え、後ろを振り返ること無く山頂を目指して突き進む。総合首位のログリッチェは集団を引き連れこの3人にブリッジを成功させ、勝負を降り出しに戻すことに成功。しかし、ユンゲルスの強力な牽引が終了した残り2kmでアラフィリップがアタックすると集団は崩壊。ログリッチェとヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)だけがその後ろに追いすがる。

なんとかアラフィリップを捉えたカーシーはそのままアタック。続いてその攻勢を耐えしのいだアラフィリップがアタックを繰り出す熾烈な展開に。この2人に追いついてきたのは、ツール・ド・フランスでゲラント・トーマスを総合優勝に導いた1人のワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)だった。この展開にログリッチェはついていくことが出来ず、脱落。
フィニッシュでのタイム差とボーナスタイムを稼ぐため攻勢にでるアラフィリップと、ステージ優勝を狙うカーシーによる猛烈なスパートに対し、プールスは冷静に対処。勾配が急になる区間でプールスがスプリントで2人を引き離し、そのまま先頭でフィニッシュラインに駆け込んだ。「勝利することが出来て嬉しいよ。ツアー・オブ・ブリテンは4回出場し、いつも勝利を手にしてきたんだ。そのうちの3回が山岳勝負なのは、いつだって良いよね。G(ゲラント・トーマス)とイアン・スタナードは本当に素晴らしい働きをしてくれたよ」とプールスはコメントする。



アラフィリップはプールスに2秒差をつけられたものの、17番手に沈んだログリッチェを30秒引き離すことに成功し、リーダージャージを手繰り寄せた。「まずは再びファンタスティックな仕事をしてくれたチームメイトに感謝したい。今日のプランはリーダージャージを手にすることで、その目標を達成できて大きな喜びを感じている。」とアラフィリップは言う。
第6ステージ終了後の総合成績は首位アラフィリップ、2位にはプールスが浮上、ログリッチェは+33秒の3位に転落した。プールスが「総合順位をあげられたら良いよね。残りはフラットコースのみだが、チャンスは狙っていくつもりだ」と語る通り、第7ステージは4級山岳のみ登場する概ね平坦のレイアウト、最終8ステージはロンドンを発着するオールフラットコース。ボーナスタイムによっては逆転の可能性もあるが、アラフィリップが英国1周レース制覇に一歩近づいた。
ステージ結果
1位 | ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) | 4h01'51" |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) | 02" |
3位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 12" |
4位 | ジョナタン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー) | 21" |
5位 | パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMC レーシング) | |
6位 | トーマス・ピッドコック(イギリス、チーム・ウィギンズ) | |
7位 | エクサンドロ・メウリッス(ベルギー、ワンティ・グループゴベール) | |
8位 | ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンティ・グループゴベール) | |
9位 | マキシミリアン・ステッドマン(イギリス、キャニオン・アイスベルグ) | |
10位 | ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター) | |
17位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) | 32" |
個人総合成績
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) | 19h46'54" |
2位 | ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) | 17" |
3位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) | 33" |
4位 | パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMC レーシング) | 46" |
5位 | ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) | 51" |
6位 | ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター) | 58" |
7位 | ニールソン・ポーレス(アメリカ、ロットNLユンボ) | 01'10" |
8位 | ドミトリ・ストラコフ(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 01'24" |
9位 | クリス・ハミルトン(オーストラリア、サンウェブ) | 01'28" |
10位 | パスカル・エーンクホーン(オランダ、ロットNLユンボ) | 01'35" |
ポイント賞
1位 | パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMC レーシング) | 51 |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) | 41 |
3位 | ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) | 31 |
山岳賞
1位 | ニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ) | 49 |
2位 | マシュー・ホームズ(イギリス、マディソン・ジェネシス) | 43 |
3位 | コーナー・スイフト(イギリス、マディソン・ジェネシス) | 39 |
チーム総合成績
1位 | ロットNLユンボ | 58h44'49" |
2位 | モビスター | 05" |
3位 | クイックステップフロアーズ | 04'10" |
text:Gakuto Fujiwara
photo:www.tourofbritain.co.uk
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