2月27日、ベルギーでクラシックシーズンが開幕した!セミクラシック初戦は今年で開催65回目を迎えるオンループ・ヘットニュースブラッド(UCI1.HC)。終盤に独走したフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)が、スペイン人として初優勝を飾った。

石畳の急坂で集団から飛び出すトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)石畳の急坂で集団から飛び出すトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vos2008年まで「オンループ・ヘットフォルク」として開催されていた伝統の一戦は、昨年スポンサー変更に伴い「オンループ・ヘットニュースブラッド」に名称変更。このオンループを皮切りにベルギーのクラシックシーズンが始動する。

舞台となるのはベルギー・フランドル地方。204kmのコースには、クルイスベルグやターインベルグ、エイケンベルグ、モーレンベルグなど、ロンド・ファン・フラーンデレンでお馴染みの急坂が12カ所設定されている。石畳も7区間登場する過酷なレースだ。

レース終盤に形成されたフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)を含む先頭グループレース終盤に形成されたフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)を含む先頭グループ photo:Cor Vosトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)などの名立たるクラシックレーサーの他、日本からは別府史之(レディオシャック)と新城幸也(Bboxブイグテレコム)が出場した。

レースは序盤からフレデリック・ゲドン(フランス、フランセーズデジュー)やロイ・カーヴァス(オランダ、スキル・シマノ)ら4名が逃げ、メイン集団から最大12分のアドバンテージ。しかし勝負はレース後半に連続する急坂に集約されていた。

先頭グループからアタックを仕掛けるフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)先頭グループからアタックを仕掛けるフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vosゴール52km手前のターインベルグで集団から動いたのは、まだこのオンループで勝ち星の無いボーネン。しかししばらくの独走の後、ボーネンは集団に戻る。その後もアタックは繰り返されたが、決定的な動きが無いままメイン集団は急坂をこなして行く。

ゴールまで30kmを残して、元ベルギーチャンピオンのユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とニック・ナイエンス(ベルギー、ラボバンク)がそれぞれ単独で先頭グループに合流。1分ほどのリードを築いていたこの先頭グループには、フレチャとフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)も合流した。

ゴールまで19kmを残して独走を開始したフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)ゴールまで19kmを残して独走を開始したフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) photo:Cor Vosこれにより、ゴールまで22kmを残して先頭はゲドン、カーヴァス、ルーランズ、ジルベール、フレチャの5名に。ジルベールは2006年と2008年、ナイエンスは2005年大会の優勝者だ。ボーネンがパンクやメカトラによって後退を余儀なくされる中、メイン集団はサーヴェロ・テストチームが牽引した。

やがてゴール19km手前の石畳区間で、歴代最高タイの大会3勝目を目指すジルベールとフレチャが先頭グループからアタック。しばらく2人は並走したが、やがてフレチャがジルベールを振り切って独走を開始した。

独走のままゴールに飛び込むフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)独走のままゴールに飛び込むフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) photo:Cor Vos出遅れたジルベールらはゴールまで7kmを残してサーヴェロ主導のメイン集団に吸収。30名ほどに絞られていたメイン集団は懸命に追撃したが、最後までフレチャを捕まえることが出来なかった。

結局メイン集団とのタイム差を保ったフレチャは、独走のままゴール。天を指差し、弓を射るポーズを見せ、スカイジャージをアピールしてゴールに飛び込んだ。

2位争いのスプリントはハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)2位争いのスプリントはハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム) photo:Cor Vos18秒遅れのメイン集団ではスプリント勝負が繰り広げられ、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)を敗ったハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)が2位に入っている。

オンループ65年の歴史の中で、スペイン人選手が優勝するのは初めて。フレチャは2007年大会2位、2009年大会で3位に入っていた。

優勝トロフィーにキスをするフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)優勝トロフィーにキスをするフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) photo:Cor Vos「チームカーからの指示で(ラスト19kmで)飛び出したんだ。その後は、ゴールの100m手前まで後ろを振り向かなかった。本当にエモーショナルな勝利だ。これまで何度もあと一歩のところで勝利を逃していた。でも挑戦し続ければ、時々、勝利のチャンスが回ってくるんだ」。フレチャが沈黙を破るクラシック初勝利を飾った。

「この勝利はチーム全体に捧げたい。特に、エイケンベルグ直前でパンクした僕に後輪を差し出してくれたマシュー・ヘイマンにはとても感謝している」。クラシックシーズンでの活躍を誓うチームスカイにとっても渾身の勝利。スプリント勝負でエースを担うエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)も6位に入っている。

表彰台、2位ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)、優勝フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、3位タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)表彰台、2位ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)、優勝フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、3位タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) photo:Cor Vos「(2009年10月に亡くなった)フランク・ヴァンデンブルックにもこの勝利を捧げたい。ベルギーレースでの初勝利だから、天を指差してゴールしたんだ」。フレチャはファッサボルトロ時代にヴァンデンブルックとチームメイトだった。

先日のインタビュー記事でもお伝えした通り、フレチャはロンド・ファン・フラーンデレン、そしてパリ〜ルーベに照準を合わせてクラシックシーズンを闘って行く。

日本勢は別府史之が127位、新城幸也は途中リタイアに終わった。両者は翌日ベルギーで開催されるクールネ〜ブリュッセル〜クールネ(UCI1.1)に連戦で出場する予定だ。

レース展開はレース公式サイト、選手コメントはチームスカイ公式サイトより。


オンループ・ヘットニュースブラッド2010結果
1位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)      5h07'15"
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ・テストチーム)    +18"
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
4位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
5位 マルセル・シーベルグ(ドイツ、チームミルラム)
6位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
7位 ニコ・エークホウト(ベルギー、アンポスト・ショーンケリー)
8位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームHTC・コロンビア)
9位 トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)
10位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)
127位 別府史之(日本、レディオシャック)              +13'10"
DNF 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)