「明日マリアローザを失っても、取り返すためにアタックを続ける」と語るのは総合首位のイェーツ。対してデュムランは「追い風であればタイム差はつきにくく、イェーツが首位を守るだろう」とコメント。注目の個人TTを前に記者会見を開いた両者のコメントを紹介します。


ジロ・デ・イタリアが3回目の休息日を迎えた5月21日、マリアローザをかけた重要な34.2km個人TTを前に、トレント近郊のホテルでサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)とトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)が記者会見を開いた。両者の総合タイム差は2分11秒。デュムランがどこまでタイムを挽回もしくは逆転できるかに注目が集まっている。

サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)

総合首位を走るサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)総合首位を走るサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsujiプロ入りからずっと今の状況を待ち望んでいた。ここまでこのためにトレーニングを続けてきたんだ。歳を重ねるごとに経験を積み、強くなり、過去の過ちからヒントを得て、自信をつけてきた。チームも自分の努力を評価してくれていて、今こうして小さな要素が結実している。コンディションは今まで経験したことがないほど良く、体重も軽くて、グランツールで勝つ日は遠くないと思っていた。アタックして心拍が200まで上がって内側が悲鳴をあげていても、自分はポーカーフェイスが得意なので苦しんでいるようには見えないかもしれない。

今の(2分11秒という)アドバンテージには驚いているけど、自分のパフォーマンスとマリアローザには驚いていない。何回も言っているように、最初から勝つためにこのジロにやってきた。自分の走りを過小評価していないし、自分でも良い走りができていると自信を持っている。

仮に最終週に大失速したり明日のTTで5分のタイムを失ってしまっても、別に構わないと思えるほどリラックスしている。ここまでの自分の走りには満足しているし、仮に目標の総合優勝を果たせなかっても構わないし、それで眠れなくなるようなことはないと思う。自分の中で最高の走りをしたいと思っていて、実際に最高の走りができている。だから結果がついてきている。

明日の個人TTでもベストな力を尽くすだけ。タイムを失うことになるとは思うけど、それを踏まえた上でここまでアグレッシブに走ってきた。総合上位の選手の中でTTが弱い部類に入るのは開幕前から分かっていたこと。自分から一番大きなタイムを奪うのはトム・デュムランであり、ティボー・ピノやドメニコ・ポッツォヴィーヴォも侮れない存在。

明日マリアローザを失っても、取り返すためにアタックを続けるし、それを達成する力がチームにはある。とにかく面白い戦いになると思う。

サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse


トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)

トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:CorVos(第16ステージの個人TTは)とてもハイスピードなコース。どんなタイムトライアルでも好きだけど「完璧に自分向きのコース」だとは言えない。今回は高速道路に沿った直線的なコースで、何ヶ所かテクニカルコーナーやちょっとしたアップダウンはあるけど、淡々とパワーで踏む直線区間がとにかく長い。

今日の試走中は追い風が吹いていた。TTポジションで追い風を受けると簡単にスピードが50km/hを超え、300W以上で踏み続けるのが難しい。そうなればスピード差が生まれにくく、大きなタイム差はつきにくい。明日は風が結果に大きく影響する。追い風であればタイム差は小さく、イェーツがよっぽど悪いTTをしないかぎり、彼がマリアローザをキープすると思う。

昨年の自分がそうだったように、これまでも成績を残してきたイェーツがさらに大きくステップアップした。今の状況を鑑みた上で、もし自分がローマでマリアローザを着ていたら、それは偉業と言ってもいいと思う。でもまだ戦いは終わっていないし、歴史を振り返ると、グランツールの最終週には色んなことが起こっている。だから望みを捨てずに戦い続ける。これまでも言っているように、ローマまで毎日戦い続ける。

今年のジロに登場する6つの山頂フィニッシュの中で、プラートネヴォーゾ(第18ステージ)の登りは自分向き。でもイェーツの今の状態を考えると、登りで自分のアドバンテージはないに等しい。もちろん彼を突き放すにはどこかで戦略的に攻撃を仕掛ける必要があるけど、それがどこかはまだ分からず、今はタイミングを待つしかない。

トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji

text:Kei Tsuji in Trento, Italy

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