第101回ジロ・デ・イタリアの後半戦はドロミテやアルプスの難関山岳ステージがずらりと登場。イモラサーキットやモンテゾンコラン、プラートネヴォーゾ、未舗装フィネストレ峠、チェルヴィニアなど注目ステージを経て首都ローマでフィナーレを迎える後半ステージを紹介します。

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5月15日(火)第10ステージ → コースマップ
ペンネ〜グアルド・タディーノ 239km ☆☆☆


5月15日(火)第10ステージ ペンネ〜グアルド・タディーノ 239km ☆☆☆5月15日(火)第10ステージ ペンネ〜グアルド・タディーノ 239km ☆☆☆ photo:RCS Sport2回目の休息日明けに行われる第10ステージは今大会最長の239km。アブルッツォ州のペンネからウンブリア州のグアルド・タディーノまで、アペニン山脈東側に広がる山岳〜丘陵地帯を6時間かけて走りきる。

スタート後すぐに標高1,254mの2級山岳フォンテ・デッラ・クレータ(ジロ初登場)に向けた登りが始まるが、ここがこの日最大の山場であり、その後は比較的緩やかなアップダウンが続く。登場するカテゴリー山岳は3級、4級と順に難易度を落としていき、最後はジロ初登場のグアルド・タディーノにフィニッシュ。集団に残ったスプリンターたちによるスプリント勝負に持ち込まれた場合は、残り1.5kmを切ってから始まる街中の連続コーナーのポジション取りが着順に大きく響くだろう。



5月16日(水)第11ステージ → コースマップ
アッシジ〜オージモ 156km ☆☆☆


5月16日(水)第11ステージ アッシジ〜オージモ 156km ☆☆☆5月16日(水)第11ステージ アッシジ〜オージモ 156km ☆☆☆ photo:RCS Sport聖地アッシジをスタートし、アペニン山脈を横切ってオージモに向かう156kmコースは起伏に富んでいる。中盤にかけて3級山岳コルネッロ峠と3級山岳ヴァリコ・ディ・ピエトラロッサを通過。注目はその後に登場するマルケ州特有の「ムーロ(壁)」と呼ばれるカテゴリーのついていない急坂だ。

まずは残り29km地点で故ミケーレ・スカルポーニが住んでいたフィロットラーノを通過。フィロットラーノ旧市街に向かう最大勾配16%のムーロを通過後、アップダウンをこなしてフィニッシュ地点オージモに向かう。残り5kmを切ってから現れる最大勾配16%の石畳坂をこなし、そこからテクニカルな下りを経てコースは残り1.8km地点から再び上昇を開始。平均勾配12.4%、最大勾配16%のオリンピア通りでセレクションがかかった状態でオージモの中心部にフィニッシュする。パンチャーたちによる登り勝負にマリアローザ候補たちも絡んでくるだろう。



5月17日(木)第12ステージ → コースマップ
オージモ〜イモラ 214km ☆☆


5月17日(木)第12ステージ オージモ〜イモラ 214km ☆☆5月17日(木)第12ステージ オージモ〜イモラ 214km ☆☆ photo:RCS Sport今大会有数のフラットステージ。前半はアドリア海に沿った国道16号線をひた走り、後半はエミリア街道と呼ばれる国道9号線を西へ。丘の上に佇むサンマリノ共和国を横目に走り、リミニ、チェゼーナ、フォルリ、ファエンツァと、歴史的な街道に沿った街を抜けていく。

200km近くにわたってほぼ真っ平らなコースを走ったプロトンは、1968年のロード世界選手権で使用された全長15.3kmの周回コースに突入。1981年から2006年までF1サンマリノGPの舞台になったイモラサーキットのフィニッシュラインを一旦通過してから4級山岳トレモンティ(登坂距離4.3km/平均勾配4.2%)を駆け上がる。最大勾配10%のこの登りを終えるとフィニッシュまでは下り基調の7.6km。残り850m地点で再びイモラサーキットに入ってフィニッシュを迎える。道幅8mのアスファルト路でスプリンターたちが火花を散らすだろう。



5月18日(金)第13ステージ → コースマップ
フェラーラ〜ネルヴェーザ・デッラ・バッターリア 180km ☆☆


5月18日(金)第13ステージ フェラーラ〜ネルヴェーザ・デッラ・バッターリア 180km ☆☆5月18日(金)第13ステージ フェラーラ〜ネルヴェーザ・デッラ・バッターリア 180km ☆☆ photo:RCS Sport前日のイモラサーキットに続き、ネルヴェーザ・デッラ・バッターリアでは再びスプリンターたちがステージ優勝を争うことになるだろう。フェラーラをスタートし、ポー川が作り出した広大なポー平原を北上するコースは真っ平ら。パドヴァやヴェネツィア、トレヴィーゾといった都市の近くを走り、残り30.2km地点で一旦フィニッシュラインを通過する。

残り19.3km地点に登場する4級山岳モンテッロ(全長2.9km/平均勾配3.9%)がこの日最初で最後の登り。最大勾配も9%と緩いため、スプリンターたちも問題なくクリアできるはず。残り5kmで直角コーナーを曲がると、あとはネルヴェーザ・デッラ・バッターリアまでまっしぐら。このステージを終えると、スプリンターの出番は第17ステージまで回ってこない。



5月19日(土)第14ステージ → コースマップ
サンヴィート・アル・タリアメント〜モンテ・ゾンコラン 186km ☆☆☆☆☆


5月19日(土)第14ステージ サンヴィート・アル・タリアメント〜モンテ・ゾンコラン 186km ☆☆☆☆☆5月19日(土)第14ステージ サンヴィート・アル・タリアメント〜モンテ・ゾンコラン 186km ☆☆☆☆☆ photo:RCS Sport難易度5つ星の山岳ステージの終着地は悪名高きモンテ・ゾンコラン。ヨーロッパ有数の難関峠として知られる1級山岳がジロに登場するのは2003年(シモーニ)、2007年(シモーニ)、2010年(バッソ)、2011年(アントン)、2014年(ロジャース)に続く6回目だ。

フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山岳地帯を走り、3級、3級、2級、3級の山岳を越えて1級山岳モンテ・ゾンコラン(全長10.1km/標高差1,203m/平均勾配11.9%/最大勾配22%)へ。登り中盤(残り8km〜残り4km)の平均勾配は驚異の15.4%。残り2kmを切ったところで少し勾配は緩むが、連続するトンネルを抜けると再び勾配は16%まで跳ね上がり、フェンスではなく山岳警備隊に守られたヘアピンを抜けてようやく頂上にたどり着く。スペインのアングリル峠と双璧をなすこの激坂で今一度総合成績にシャッフルがかかる。



5月20日(日)第15ステージ → コースマップ
トルメッツォ〜サッパーダ 176km ☆☆☆☆


5月20日(日)第15ステージ トルメッツォ〜サッパーダ 176km ☆☆☆☆5月20日(日)第15ステージ トルメッツォ〜サッパーダ 176km ☆☆☆☆ photo:RCS Sport大会2週目を締めくくるのはオーストリアとの国境にまたがるドロミテ山塊を走る4つ星山岳ステージ。スタート後すぐに登りが始まり、そこから標高1,300m〜1800mの4つの峠に挑む。

まずは3級山岳マウリア峠と2級山岳トレクローチ峠(全長8km/標高差580m/平均勾配7.3%/最大勾配12%)をクリア。終盤にかけて2級山岳サンタントニオ峠(全長8.4km/標高差625m/平均勾配7.5%/最大勾配15%)と2級山岳コスタリッソーイオ(全長3.8km/標高差336m/平均勾配9%/最大勾配14%)が連続して登場する。フィニッシュ地点サッパーダの手前10kmは登り基調(カテゴリー無し)。勾配は3〜8%ほどだが、すでに3,500mほどの登りをこなしてきた脚に差が出るかもしれない。このドロミテ山岳ステージを終えた選手たちはトレントで3回目の休息日を迎える。



5月21日(月)休息日



5月22日(火)第16ステージ → コースマップ
トレント〜ロヴェレート 34.2km(個人TT)☆☆☆


5月22日(火)第16ステージ トレント〜ロヴェレート 34.2km(個人TT)☆☆☆5月22日(火)第16ステージ トレント〜ロヴェレート 34.2km(個人TT)☆☆☆ photo:RCS Sport初日の第1ステージに続く今大会2回目の個人タイムトライアルが登場。トレンティーノ=アルト・アディジェ州の州都であるトレント中心部のドゥオーモ広場を出発し、平坦なアディジェ渓谷をロヴェレートまで南下する。34.2kmコースの大部分は平坦路&幅広の幹線道路。石畳やラウンドアバウト、鋭角コーナーが登場する街中には注意が必要だ。

残り10kmを切ったところで小さいアップダウンが始まるが、登りの距離は短く、勾配もそこまできつくない。主催者が予想する優勝タイムは40分前後で、平均スピードは50km/hを超えると見られる。TTを得意とするオールラウンダーたちはここでクライマーに差をつけておきたいところ。総合上位の選手たちの中に、数分のリードを奪う選手、そして数分のリードを失う選手が出てくるだろう。



5月23日(水)第17ステージ → コースマップ
リーヴァ・デル・ガルダ〜イゼオ 155km ☆☆


5月23日(水)第17ステージ リーヴァ・デル・ガルダ〜イゼオ 155km ☆☆5月23日(水)第17ステージ リーヴァ・デル・ガルダ〜イゼオ 155km ☆☆ photo:RCS Sport久々にスプリンターに出番が回ってくる。と同時に、このチャンスを逃すとスプリンターの出番は最終日まで回ってこない。ガルダ湖に面したリーヴァ・デル・ガルダをスタート後しばらくは3級山岳を含む山岳地帯を抜けるが、残り55km地点で平野に出るとあとはフィニッシュまで平坦路が続く。

最後はロンバルディア州のイゼオを起点とした23.9km周回コースを1周。イゼオ湖近くを走る周回コースは平坦基調だが、道幅が狭いセクションや細かいコーナーが多く、小さい街をいくつも通過するため、総合系チームもリスク回避のため集団前方に上がってくるだろう。残り400mで最後の障害物である大きな楕円形のラウンドアバウトを抜け、長さ300mの最終ストレートでスプリンターたちがスピードを競い合う。



5月24日(木)第18ステージ → コースマップ
アッビアーテグラッソ〜プラート・ネヴォーゾ 196km ☆☆☆☆


5月24日(木)第18ステージ アッビアーテグラッソ〜プラート・ネヴォーゾ 196km ☆☆☆☆5月24日(木)第18ステージ アッビアーテグラッソ〜プラート・ネヴォーゾ 196km ☆☆☆☆ photo:RCS Sport第101代マリアローザは、この第18ステージから始まる3連続山頂フィニッシュで決まる。クライマックスに向かう3連戦初日は標高1,607mの1級山岳プラート・ネヴォーゾ(全長13.9km/標高差959m/平均6.9%/最大勾配10%)の山頂フィニッシュだ。

2008年のツール・ド・フランス第15ステージ(ゲランス優勝)のフィニッシュ地点として登場し、1996年(トンコフ)と2000年(ガルゼッリ)に続くジロ3回目の登場となるプラート・ネヴォーゾは、目を見張る勾配でもなく、特筆するほどの難易度でもない。7〜8%ほどの勾配は残り2kmを切ると緩み、フィニッシュ手前は緩斜面が続く。ステージ全体の難易度が低いため、アシスト選手をたっぷり揃えた状態でエースは勝負に挑むことになる。つまりここで試されるのはチーム力。登り始めに向けてどのチームも隊列を組んでポジション争いを繰り広げるだろう。



5月25日(金)第19ステージ → コースマップ
ヴェナリア・レアーレ〜バルドネッキア 184km ☆☆☆☆☆


5月25日(金)第19ステージ ヴェナリア・レアーレ〜バルドネッキア 184km ☆☆☆☆☆5月25日(金)第19ステージ ヴェナリア・レアーレ〜バルドネッキア 184km ☆☆☆☆☆ photo:RCS Sport未舗装の難関峠であるフィネストレ峠(全長18.5km/標高差1,694m/平均勾配9.2%/最大勾配14%)が3年ぶりにコースに組み込まれた。2005年、2011年、2015年に続く史上4回目の登場となるフィネストレ峠が184kmコースの中盤に佇んでいる。登り後半の7.8kmが舗装されていない未舗装路であり、延々と9%オーバーの勾配が続く。標高2,178mはチーマコッピ(今大会最高地点)に指定されている。

フィネストレ峠通過後、3級山岳セストリエーレを駆け上がり、2013年にニバリがステージ優勝を飾った1級山岳バルドネッキア(全長7.3km/標高差654m/平均勾配9.1%/最大勾配14%)を駆け上がってフィニッシュ。クイーンステージの称号は翌日の第20ステージに譲るが、破壊力は同等もしくはそれ以上。特にパンクのリスクをはらむフィネストレ峠が勝負の行方をわからないものにする。



5月26日(土)第20ステージ → コースマップ
スーザ〜チェルヴィニア 214km ☆☆☆☆☆


5月26日(土)第20ステージ スーザ〜チェルヴィニア 214km ☆☆☆☆☆5月26日(土)第20ステージ スーザ〜チェルヴィニア 214km ☆☆☆☆☆ photo:RCS Sportフランスへの交通の要所であるスーザから、トリノ近郊を通ってジロは最終決戦地のヴァッレ・ダオスタ州に歩み入る。全長214kmのロングステージのうち前半は平坦基調だが、残り84kmの中間スプリントから先は登りと下りしかない。手始めに1級山岳ツェコレ峠(全長16km/標高差1,234m/平均勾配7.7%/最大勾配15%)をクリア。立て続けに1級山岳サンパンタレオン峠(全長16.5km/標高差1,184m/平均勾配7.2%/最大勾配12%)に挑む。

ジロの山岳決戦最後を締めくくるのは、イタリア語でマッターホルンを表すスキーリゾート地チェルヴィニアへの登りだ。1960年(カジアンカ)、1997年(ゴッティ)、2012年(アマドール)、2015年(アル)に続く5回目の登場となる1級山岳チェルヴィニア(全長18.2km/標高差959m/平均勾配5.3%/最大勾配12%)を駆け上がる。中盤にかけて6〜8%を刻む勾配は残り2km地点で緩み、ほぼ平坦路を走ってフィニッシュへ。この獲得標高差4,000mのクイーンステージを終えた段階でマリアローザを着ている選手が実質的な総合優勝者となる。



5月27日(日)第21ステージ → コースマップ
ローマ〜ローマ 115km ☆


5月27日(日)第21ステージ ローマ〜ローマ 115km ☆5月27日(日)第21ステージ ローマ〜ローマ 115km ☆ photo:RCS Sportスイス国境に近いチェルヴィニアから750kmの大移動を経て、午後3時55分、最終ステージは首都ローマをスタートする。最終日は11.5km周回コースを10周する115km。いつも観光客で混雑するフォーリ・インペリアーリ通りがスタート&フィニッシュ地点となる。コースは全体的に幅広いが、路面は部分的に石畳だ。

ヴィットリオエマヌエーレ2世記念堂、ヴェネツィア広場、クイリナーレ宮殿、バルベリーニ広場、スペイン広場(裏側)、ポポロ広場、目抜通りのコルソ通り、真実の口、チルコマッシモ、カラカラ浴場跡など著名な観光名所を通過し、残り1km地点でコロッセオをぐるっと回る。最後はコロッセオを背にしたフォーリ・インペリアーリ通りでのスプリントで、イスラエルで開幕した3週間の戦いが締めくくられる。




text:Kei Tsuji

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