9月のロード世界選手権で使用される2級山岳オリンピア・クライムを含む周回コースでライバルたちのアタックを封じ込めたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がツアー・オブ・アルプス総合優勝。ネオプロのマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ)が初勝利を手にした。


オーストリア南部の山岳地帯を走るオーストリア南部の山岳地帯を走る photo:Tour of the Alps

ツアー・オブ・アルプス2018第5ステージツアー・オブ・アルプス2018第5ステージ photo:Tour of the Alps5日間の日程で開催されたツアー・オブ・アルプスを締めくくるのは、オーストリアのラッテンベルグからインスブルックまでの164.2km。レース中盤に1級山岳アルプバッハ(全長7.4km/平均7.1%)を越え、残り45km地点でインスブルックの周回コースに突入。ロード世界選手権に登場する2級山岳オリンピア・クライム(全長7.8km/平均5.5%)を3回上ってからインスブルック市内にフィニッシュする。

なお、ロード世界選手権のエリート男子ロードレースはこのオリンピア・クライム周回コースに平坦区間を加えた23.9km小周回を6周後、最終周回のみ最大勾配が28%に達するグラマルトボーデン(全長2.8km/平均11.5%)を加えた31km大周回をこなしてフィニッシュ。全長265km/獲得標高差4,670mという山岳コースで世界チャンピオンが生まれる。

レース序盤から逃げ、メイン集団に10分のタイム差をつけたのはイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)やフランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール)を含む8名のグループ。グルパマFDJとチームスカイ率いるメイン集団がタイム差を3分以内に抑え込んだところでインスブルックの周回コースが始まった。

中切れが起きるほどのハイスピードで進むメイン集団中切れが起きるほどのハイスピードで進むメイン集団 photo:Tour of the Alps
チームスカイがメイン集団のペースを作るチームスカイがメイン集団のペースを作る photo:Tour of the Alps
1回目の2級山岳オリンピア・クライム登坂中にチームスカイが先手を打ち、アタックしたダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)が逃げグループに合流成功。しかしデラクルスを含む逃げグループは、グルパマFDJの集団牽引によって2回目の2級山岳オリンピア・クライムで吸収される。すると頂上通過後に今度はジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)とミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が飛び出した。

最後の2級山岳オリンピア・クライムが始まると、先頭では総合3位ロペスが独走。後方ではリーダージャージのピノが自らアタックを仕掛け、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)を連れて前を逃げるヴィスコンティやロペスを捉える。このピノのアタックによって総合4位クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は脱落。ケニー・エリッソンド(フランス、チームスカイ)の力を借りてフルームがタイムロスを最小限に抑えた一方で、ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)の遅れは上りを進むにつれて拡大していった。

先頭ピノ、ポッツォヴィーヴォ、ロペスの総合トップスリーは、フルームを含む追走グループに20秒差をつけて2級山岳オリンピア・クライムをクリア。ピノはタイムを失うことなく苦手な下り区間をこなしたが、その後の平坦区間でポッツォヴィーヴォとロペスの協力を得ることができずに失速してしまう。こうして追走グループが合流したため先頭は10名に。ここから残り4km地点でアタックしたマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ)の独走が決まった。

個人TTモードで独走したパデュンは、単独追走したジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)に5秒差をつけてフィニッシュ。ロペスとポッツォヴィーヴォ、フルームと同じ9秒遅れのグループ内でフィニッシュしたピノが総合優勝を決めた。

独走でフィニッシュするマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ)独走でフィニッシュするマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ) photo:Tour of the Alps
ロペスやフルームらとともにフィニッシュするティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)ロペスやフルームらとともにフィニッシュするティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Tour of the Alps
「プロ初勝利をまだ信じられない気持ち。ステージの序盤から自分の好調さを感じていて、良い走りをできるとは思っていたけど、ステージ優勝は予想していなかった。本当に夢がかなった気分」。昨年研修生としてバーレーン・メリダに合流し、今年正式にプロ入りした21歳のパデュンがキャリア初勝利を喜ぶ。ポッツォヴィーヴォのアシストとして走ったパデュンはベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ)に次いでヤングライダー賞2位に入っている。

そして総合優勝のタイトルはピノの手に。「5日間ずっと白熱したバトルが続く厳しいレースだった。クライマー向きで、とても格式の高いこのレースの総合優勝者リストに名前を連ねることができて誇らしい気分」とピノは語る。「ジロの総合優勝候補に挙げられるのは嬉しいけど、それはこのレースで真剣に総合優勝を狙った結果であり、まだジロについては深く考えていない。とにかく今週は完璧な天気で完璧なコース、完璧な1週間だった」。

このツアー・オブ・アルプスで好調さを見せたのは総合トップスリーのピノ、ポッツォヴィーヴォ、ロペス、そして総合4位フルームや総合5位ベネットら。喘息治療のための吸引器の使用を控えているフルームは、チームスカイに大会4連覇をもたらすことができなかったもののジロ・デ・イタリアを前に満足の仕上がり具合だと述べている。「ジロに向けて抜群のビルドアップになった。距離が短く、爆発力のいるレース強度はトレーニングで決して得ることができないもの。ジロ開幕まで2週間というタイミングで、このレースに出場して本当に良かったと思う。3連続グランツール制覇に向けたモチベーションは高い」。

総合優勝に輝いたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)総合優勝に輝いたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Tour of the Alps
ツアー・オブ・アルプス2018第5ステージ結果
1位 マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ) 4:16:10
2位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 0:00:05
3位 ヤン・ヒルト(チェコ、アスタナ) 0:00:06
4位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)
5位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ)
6位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:00:09
7位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)
8位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)
10位 ケニー・エリッソンド(フランス、チームスカイ) 0:00:11
86位 伊藤雅和(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) 0:15:59
DNF 中根英登(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
個人総合成績
1位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 18:28:48
2位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:15
3位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)
4位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 0:00:16
5位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 0:01:00
6位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:01:19
7位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ) 0:01:33
8位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 0:01:35
9位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF) 0:01:42
10位 ヤン・ヒルト(チェコ、アスタナ) 0:01:48
山岳賞
1位 オスカル・ロドリゲス(スペイン、エウスカディ・ムリアス) 22pts
2位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 20pts
3位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 17pts
ヤングライダー賞
1位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ) 18:30:21
2位 マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ) 0:01:41
3位 ミカル・シュレゲル(チェコ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 0:03:19
チーム総合成績
1位 アスタナ 55:29:56
2位 バーレーン・メリダ 0:10:16
3位 ディメンションデータ 0:18:33
text:Kei Tsuji

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