強風が吹き付けたツアー・ダウンアンダー第4ステージは、ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)が終盤にアタックを仕掛ける白熱の展開。最後はスプリント勝負に持ち込まれ、コロンビアトレインに発射されたアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)が3勝目を飾った。

チームHTC・コロンビアがコントロールするメイン集団が渓谷を進むチームHTC・コロンビアがコントロールするメイン集団が渓谷を進む photo:Kei Tsuji
アデレード近郊のノーウッドをスタートし、内陸部の山岳地帯を抜けてインド洋に面したゴールワにゴールする第4ステージ。距離は今大会最長の149.5kmで、平野部を駆け抜ける後半部はほぼ真っ平ら。インド洋から吹き付ける風が選手たちを襲った。

雨のパラつくノーウッドをスタート後、すぐにアタックを仕掛けたのはヨナタン・カストロビエホ(スペイン、エウスカルテル)。しばらくアタック合戦が続き、7名が飛び出すとメイン集団は沈静化した。

逃げグループを形成するトーマス・フライ(スイス、BMCレーシングチーム)やスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)逃げグループを形成するトーマス・フライ(スイス、BMCレーシングチーム)やスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク) photo:Kei Tsuji逃げを試みたのは、山岳賞ジャージを着るローレッガー(チームミルラム)、クレメント(ラボバンク)、ケンプ(チームUniSA)、ラヴァール(アージェードゥーゼル)、フライ(BMCレーシングチーム)、ミンゲス(エウスカルテル)、そしてファーストアタックを仕掛けたカストロビエホ。

26km地点に設定されたKOM(山岳ポイント)で飛び出したのはもちろんローレッガー。純白の山岳賞ジャージを着るローレッガーは観客が詰めかけた上り頂上を先頭で通過し、16ポイントを加算して山岳賞トップをキープ。2位通過したケンプが14ポイント差でローレッガーを追う展開に。

逃げを追うメイン集団はチームHTC・コロンビアが完全にコントロール逃げを追うメイン集団はチームHTC・コロンビアが完全にコントロール photo:Kei Tsujiメイン集団はリーダージャージ擁するチームHTC・コロンビアが完全に支配し、逃げグループとのタイム差を2分前後に抑え込みながらレース後半へ。強風吹き付ける平野部に差し掛かると、チームHTC・コロンビアに代わってカチューシャやレディオシャックが集団コントロールを担った。

やがて逃げグループはケンプ、クレメント、カストロビエホの3名に縮小。しかし3名では大集団に太刀打ち出来ず、向かい風区間のラスト13km地点で集団に飲み込まれた。

強風吹き付ける平野部を駆け抜けるプロトン強風吹き付ける平野部を駆け抜けるプロトン photo:Cor Vos集団前方で人数を揃えたのはレディオシャック。ここから飛び出したのは、何とランス・アームストロング(アメリカ)とトーマス・ヴァイクス(リトアニア)のレディオシャックコンビ。協力して先頭交代した2人は、向かい風&横風区間で23秒のリードを築いた。

しかしさすがのアームストロングの力を持ってしてもスプリンターチームには敵わない。強風の影響で50名ほどに縮小したメイン集団は、ラスト3kmでアームストロングとヴァイクスをキャッチ。ここからコロンビアトレインが発進した。

レース終盤にヴァイクスを引き連れて集団から飛び出したランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)レース終盤にヴァイクスを引き連れて集団から飛び出したランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Cor Vosライバルチームの攻勢にも動じず、コロンビアトレインは牽引車を切り離しながらハイスピードで集団をリード。一直線の最終ストレート、ラスト150m、最終発射台マシュー・ゴス(オーストラリア)の後ろからスプリントを開始したグライペルは、誰にも先頭を譲らずゴールに飛び込んだ。

キャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックではチームスカイに敗れはしたものの、グライペルはツアー・ダウンアンダー本戦でスプリント3戦全勝。初出場した2008年大会から数えると、出場した13ステージ中8勝目だ。

ライバルを蹴散らし3勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)ライバルを蹴散らし3勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア) photo:Kei Tsuji「今日もチームHTC・コロンビアは一日中ずっとレースをコントロールしていた。この勝利はチームワークの賜物だ」。リーダージャージを着てハットトリックを達成したグライペルは語る。

「力を温存するために、そして他のチームに力を使わせるために、ラスト50kmで一旦集団の中程に下がったんだ。レディオシャックが動きを見せたからラスト10kmで集団前方に戻って逃げを吸収。それからゴールまではずっとチームHTC・コロンビアがリードしていたよ。チームメイトは完璧なリードアウトを見せてくれた。マシュー・ゴスのような選手が味方についている限り、誰も前に出ることは出来ない」

17秒遅れのグループでゴールしたランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)17秒遅れのグループでゴールしたランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Kei Tsujiボーナスタイムを10秒加算して、ライバルたちとの総合タイム差を20秒まで広げたグライペル。2度目の総合優勝を狙うドイツ生まれのピュアスプリンターの前には、ウィランガ・ヒル(第5ステージ)が立ちはだかるが「チームの調子は良い。明日は厳しい闘いが予想されるけど、チームメイトの力を借りて上りを攻略してみせる。先頭グループでゴールしたい」と自信を見せている。

強風区間で攻撃を仕掛けたアームストロングは17秒遅れでゴール。総合4位につけていたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)も同グループ内でゴールし、総合順位を下げている。


ステージダイジェストムービー


ツアー・ダウンアンダー2010第4ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)3h30'29"
2位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
3位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
4位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
5位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、フットオン・セルヴェット)
6位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・スリップストリーム)
7位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
8位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
9位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、チームミルラム)
10位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)

個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)13h23'57"
2位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)+20"
3位 グレゴリー・ヘンダーソン(イギリス、チームスカイ)+24"
4位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
5位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)+26"
6位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
8位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)+29"
9位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)+30"
10位 バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)

スプリント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)

山岳賞
トーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)

新人賞
ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)

チーム総合成績
アージェードゥーゼル

text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Cor Vos

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