ブエルタ・ア・エスパーニャ期間中のドーピング検査で基準の2倍におよぶサルブタモールが検出されたクリストファー・フルームと所属するチームスカイに対し、トニー・マルティンが「信頼性が揺らぐスキャンダル」と批判している。


トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsuji / TDWsport
クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)のドーピング陽性が世間に公表されたのは12月13日のこと。イギリスのガーディアン紙とフランスのルモンド紙がフルームの陽性を報じ、UCIとチームスカイが正式に事実を認めた。

気管支拡張剤として知られるサルブタモールのAAF(違反が疑われる分析結果)が検出されたのは、9月7日のブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージ後に採取されたフルームの尿サンプル。検出されたのはWADAが定める上限1,000ng/ml(ナノグラム・パー・ミリリットル)を大きく上回る2,000ng/mlという高い数値で、その後のBサンプル再検査でも結果は陽性だった。UCIはフルームとチームスカイに高い数値が検出された理由についての説明を求めており、フルームが出場停止処分を受けるとともにブエルタ総合優勝のタイトルを失う可能性がある。

マイヨロホを守ったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)マイヨロホを守ったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsportロード世界選手権個人タイムトライアルを走るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ロード世界選手権個人タイムトライアルを走るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele / TDWsport

今回のフルームの陽性報道を受け、元TT世界チャンピオンのトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が自身のFacebookページ内で声明を発表。「私たちの信頼性を揺るがす事態だ」と批判した。「クリストファー・フルームの件に関して明白なダブルスタンダードが適応された。他の選手たちが陽性反応が明らかになった時点ですぐさま出場停止状態になった一方で、彼とチームスカイには説明の猶予が与えられた。こういった例は今まで聞いたことがない。これはスキャンダルであり、少なくとも彼は世界選手権に出場するべきではなかった」。

UCIがフルームとチームスカイに分析結果を通知したのは9月20日。その日、フルームはロード世界選手権個人タイムトライアルに出場して銅メダルを獲得している。なお、UCIアンチドーピング規約により、サルブタモールを含む特定薬物に関してはAAFが即時出場停止処分にはつながらない。ルール上はUCIによる処分が決定するまでフルームのレース出場は認められている。

「自分を含めた周りの人間は、きっと裏で手回しがあり、表沙汰にせずに事態解決を目論んだのではないかと疑ってしまう。これはフルームとチームスカイの特権なのだろうか。これは自分やマルセル・キッテルが推し進めるアンチドーピングの戦いに大きな打撃を与えるものであり、UCIには透明性のあるアプローチを求める。今の状況は不透明でアンプロフェッショナルで、不公平だ」とマルティンは批判している。

BBCのインタビューに応じたフルームは「違反行為は全くなかった」とコメント。「このスポーツの過去を鑑みると(サルブタモールAAFに対する)人々の反応は理解できる。でもこれは(パフォーマンス向上が目的ではない)治療目的の使用の結果であり、話が異なる。ドーピング陽性になったわけではない」と改めて主張している。

ロード世界選手権個人タイムトライアルで3位に入ったクリストファー・フルーム(イギリス)ロード世界選手権個人タイムトライアルで3位に入ったクリストファー・フルーム(イギリス) photo:Kei Tsuji / TDWsport

text:Kei Tsuji

最新ニュース(全ジャンル)