緊張ほとばしる熱戦が繰り広げられたシクロクロス全日本選手権。新王者に輝いた小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と今井美穂(CO2 bicycle)のほか、野辺山を沸かせた選手たちのコメントでレースを振り返ります。



小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)

赤い応援団旗を背にフィニッシュに飛び込む小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)赤い応援団旗を背にフィニッシュに飛び込む小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo:Makoto.AYANO
3人とも実力は拮抗していたし、一発で決めるのは難しいな、とは思っていました。先頭パックはずっと緊張感ある中で走っていて、みんなギリギリ。だからこそミスしないことが大事でした。

今日は転倒が多く、自分も一回転んでハンドルを曲げてしまい、戻すために一度止まりました。そこで遅れはしたのですが、”絶対最後まで諦めない、絶対最後までレースをする”と決めていたので、トラブルでも気持ちが切れることはありませんでした。最後はギリギリでしたが、なんとか横山選手から逃げきれましたね。

8位の父・正則と抱き合って勝利を噛みしめる小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)8位の父・正則と抱き合って勝利を噛みしめる小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) photo:Makoto.AYANO
夏場の種目をロードからMTBに切り替えて、これまで競るレースができていたから勝負強さがついたと思います。中田コーチに練習を見てもらうようになってから、自分が変わりましたね。練習の質もモチベーションも上がりましたし、去年から一番変わったことはその部分。この先は世界選手権で良い走りをするという目標はずっとありますし、それに見ての通り、国内のレースもすごくレベルが高い。切磋琢磨していきたいですね。

(サラリーマンレーサーとして)時間の無い中でやってはいるのですが、僕には最高のサポート体制があって、最高のコーチがついてくれている。レースが始まればプロもアマチュアも関係ありません。でも、サラリーマンレーサーとして、やればできるんだということは伝えたいし、皆を勇気付けることができればいいな、と思います。(中村)龍太郎がTTを勝ったときも、こんな気持ちだったんですかね。

親父のおかげでこの世界に入って、親父のサポートと応援があったからこそ今日勝つことができました。尊敬する人物ですし、親父に感謝したいと思います。このジャージを着て、もっともっと強くなりたいですね。

横山航太(シマノレーシング)

エリート男子 2番手で小坂を追う横山航太(シマノレーシング)エリート男子 2番手で小坂を追う横山航太(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji3人のパックになってからそれぞれ1回ずつ転倒。自分が転んだときに(小坂)光さんと差が開いてしまって、その差を最後まで詰めることができなかった。10秒程度の差で最終周回に入り、自分が得意な舗装路の登りで追いつけばチャンスがあると思っていた。全開で登りを踏んで3〜4秒差まで詰めたんですが、詰め切れなかった。自分の最高の走りをできたと思うので、単純に光さんが強かった。勝負に負けて2位ですが、悔いはありません。自分より強い選手がいて、自分が負けた。

滑りやすいのは分かっていたんですが転倒してしまった。ぎりぎりの状態で、無理をしていたんだと思います。でも光さんがミスする可能性もあったので最後まで諦めずに走りました。

前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)

ミスで遅れた前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)が必死に前を追うミスで遅れた前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)が必死に前を追う photo:Makoto.AYANO気温が下がってシャーベット状だったコースがどんどん凍っていき、キャンプ場の入り口の凍った場所で転倒。落車したあとに復帰に手間取ってしまいました。先頭パックからも遅れ、一旦集中力も切れてしまい、ペースを戻すのに時間がかかりすぎてしまった。悪い流れになってしまったんですが、残り2周回で踏ん切りがついて追い上げて、なんとか表彰台の登ることができた。

勝つことだけを狙って走っていた。路面が凍ることは予想できていたにも関わらず、自分のミスで先頭争いから脱落したことが悔しい。直近のレースを良いイメージで走れていただけに、自分の詰めの甘さが悔やまれます。あのジャージ(全日本チャンピオンジャージ)を取るまでは終われないですね。

今井美穂(CO2 bicycle)

エリート女子表彰台エリート女子表彰台 photo:Kei Tsuji
スタッフと抱き合って喜ぶ今井美穂(CO2 bicycle)スタッフと抱き合って喜ぶ今井美穂(CO2 bicycle) photo:Makoto.AYANO序盤から3人で淡々と、様子を見ながら進んでいたので、自分がどこで前に出れるかずっと考えていました。一つのミスが勝敗を大きく左右するレース。最終周回の溝の箇所は自分が一番速かったので、そこで行こうと思っていました。自分しか乗車でクリアできない最終周回の段差で行くしかないと思っていた。

大好きな野辺山で、待ってましたという(路面の悪い)コンディションで、勝つしかなかった。楽しみなレースで、これまで出た5回の全日本選手権の中で一番よく眠れました。リラックスして、いい緊張感で臨めました。

坂口聖香(S-Familia)

先週の美山が初レースだったので、正直に言えばまだレースができる身体になっていませんでした。呼吸が落ち着くのも遅かったし、初めから苦しい展開だなとは思っていました。2人になってからは今井選手の呼吸を聞きながら走っていたのですが、最後は苦しそうだったので仕掛けました。独走に持ち込みたかったのですが、今井選手を切り離すこともできず、最後は力負けしてしまいましたね。

エリート女子 最終スプリントを繰り広げる坂口聖香(S-Familia)と今井美穂(CO2 bicycle)エリート女子 最終スプリントを繰り広げる坂口聖香(S-Familia)と今井美穂(CO2 bicycle) photo:Kei Tsuji
世界選手権で怪我をしてしまい、そこから今日までとても長かった。ラグビー選手によくある肩の軟骨がなくなってしまう症状になってしまい、手術、そして半年の療養期間が必要と言われたんです。でも私にとって半年はあまりにも長く躊躇していたのですが、手術をせず、リハビリしながら直す方法を提案してもらったんです。所属チームもなかったので公表するタイミングを失ってしまっていました。

自転車界からもレースからも離れていたのが苦しかったのですが、自分を見つめ直すいい機会にはなったと思います。そこで気持ちを維持することも難しかったのですが、家族の支えがあったからこそ踏ん張れました。今はここに戻ってこれてよかったという気持ちでいっぱいです。

競輪選手になった妹ともたまに練習しますし、互いに刺激しあえたことも大きかった。シクロクロスは私を育ててくれた競技ですし、関西シクロクロスの方々も暖かく応援してくれているので、この先もずっと続けていきたいと思います。シクロクロスやロードに限らず、広い目で世界に向けてチャレンジしていきたいですね。

與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)

エリート女子 先頭パックを率いる與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)エリート女子 先頭パックを率いる與那嶺恵理(FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope) photo:Kei Tsujiテクニカルな箇所では一番下手なので、躊躇せずに自分が前で展開しないと勝負できないと思った。後ろに付いて3位に入るよりも、自分が前に出たほうがミスも少なく済みますし、パックで走っていてもみんな(3名とも)疲れるコースでしたし。

自分のパワーを生かせる長い登りがなくて、アタックしてもコーナー2つ3つで詰められてしまう。特にバイクを降りるセクションは2人のほうが上手く、最終周回で前に出られたタイミングで自分がミスしてしまった。新しいチーム(ウィグル・ハイファイブ)の許可が出るかは分かりませんが、来シーズンもシクロクロスを楽しみたいです。

text:Kei.Tsuji,So.Isobe