日本のホビーシクロクロスライダーの間で絶大なシェアを獲得するIRCのSERAC CXシリーズ3モデルにパンク防止ベルト「X-Guard(クロスガード)」が採用され、選択の幅が広がった。レースで使用したインプレッションとともに紹介する。



IRC SERAC CX X-GuardIRC SERAC CX X-Guard (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
IRC SERAC CX X-GuardIRC SERAC CX X-Guard 2013年のデビュー以来、日本のホビーシクロクロスライダーの間で瞬く間に大きなシェアを獲得するに至ったIRCのSERAC CXシリーズ。ノーマルタイプに加え、路面コンディション別にMADとSANDの3種を揃えるが、昨年秋より耐パンクベルト「X-Guard(クロスガード)」を3モデルそれぞれに採用したモデルが追加発売されている。

IRC SERAC CX X-Guard のトレッドIRC SERAC CX X-Guard のトレッド X-Guardとは、今までにもIRCのロードタイヤ「ASPITE」や「Fomula PRO TUBLESS」、そしてMTBタイヤなどに採用されてきた実績ある耐パンクベルトの名称。トレッドのビードからビードまで全周を渡るように強度が高いメッシュ状のガード素材を入れることで耐パンク性を向上させている。尖った異物の貫通やサイドカットに強く、リム打ちによるパンクのリスクを減少させるという、IRCタイヤが定番とする手法だ。

パンク防止ベルト X-Guard(クロスガード)が採用されたことを示すラベルパンク防止ベルト X-Guard(クロスガード)が採用されたことを示すラベル SERAC CXシリーズにはCX(ノーマル)、MAD、SANDの3種があるが、その3モデルともにX-Guard採用モデルが追加ラインナップされる。つまりSERAC CXは6モデルから選べることになる。(クリンチャー版のCXとMUDを入れると実に8モデル)

X-Guardを採用した理由については、チューブレスのメリットである「低圧にしても走れる」「ビードが落ちない」という一方で、ユーザーからは低圧時のヨレを感じたり、リム打ちパンクやサイドカットのトラブルの声を聞くようになったという。そこで耐パンク性の高いバージョンを作ろうということになったという。

なお3モデルともトレッドパターン等のスペックはノーマルモデルとほぼ同一。X-Guardを採用することによる重量増は約55gほどだ。パンクしにくくなったことに加え、タイヤ自体の剛性が上がることにより、より低圧にすることができる。またコーナリング中にもタイヤがヨレにくいなどのメリットが得られるという。

なおX-GuardはロードタイヤのASPITEに採用したところ、使用した契約プロチームによればシーズンを通してパンクが著しく減ったという実績により、その耐パンク性は実証済みだという。

IRC SERAC CX X-Guard  MADIRC SERAC CX X-Guard MAD (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
今回はSERAC CXシリーズを登場時から日常的に使用してきた編集部・綾野がX-Guardの3モデルを実戦使用したインプレッションとともに使用感をお伝えする。



ー インプレッション

カタログ重量435gに対し実測重量は431gだったカタログ重量435gに対し実測重量は431gだった X-Guard版のインプレに入る前に、まずはノーマル版のSERAC CX TUBELESSシリーズの特徴と使用感からおさらいしておこう。シラクCXはチューブレスタイヤの持ち味をフルに引き出し、非常にしなやかな乗り味のタイヤとなっている。

装着する前に手で触ればノーマル版よりもトレッドの造りがしっかりと剛性があることを感じる装着する前に手で触ればノーマル版よりもトレッドの造りがしっかりと剛性があることを感じる ロードレースなど他の競技種目以上にチューブラータイヤの使用率が高いシクロクロスだが、このチューブラーに迫るしなやかさが好評の第一要因で、そのしなやかさのおかげで取り付けやケアに手間のかかるチューブラーに取って代わるタイヤとしての地位を築けたのだと思っている。(ノーマル版3種の実走インプレついてはこちらの3タイプ乗り比べインプレッション記事)を参照して欲しい。

X-Guard採用モデルは、raphaスーパークロス野辺山でのMUDとCX(ノーマル)の順に実戦投入した。

ホイールへ取り付ける段から感じる違いはタイヤの剛性が高いこと。つまりノーマル版の特有のしなやかさはX-Guard版にはあまり感じられない。この印象はホイールに取り付けた状態でも同じで、走り出してすぐ、2タイプの剛性感の違いは明確に感じることができる。

適正空気圧に関しては、タイヤサイドに記されたメーカー推奨空気圧は3〜5Barとなっているが、実際の使用については2Bar前後を基準として使うのがいいだろう。これは低圧化でタイヤが外れる危険についてメーカー側が責任を負えないが故の表記だろうと想像するが、トップ選手からホビークラスまで、SERACユーザーに聞き取りした実情では、やはり2Bar前後が基準になることは間違いない。

体重64kgの私の場合、1.6〜2.2Barぐらいの間で、コースを試走しながら路面状況によって空気圧を調整している。これはノーマル版もX-Guard版もほぼ共通だ。

ノーマル版SERAC CXはクッション性に非常に富んでおり、そのトレッドの反発力や弾力からくる乗り心地の良さはある意味チューブラーを凌ぐほどのものがある。コーナリング中もハンドリングを助けてくれるような感覚があり、こういった素性の良さは他社製タイヤやハンドメイド系チューブラーにも無いものだ。

泥祭りとなったraphaスーパークロス野辺山ではMUDバージョンをやや高めの1.8気圧で使用した泥祭りとなったraphaスーパークロス野辺山ではMUDバージョンをやや高めの1.8気圧で使用した photo:Haruo.Kotera
X-Guard採用モデルの場合は剛性感が高く、クッション性からくる乗り心地の良さについてはノーマル版にやや劣る印象だ。しかしコーナリング中の路面へのタイヤの喰いつき力や、ノブが効く感じは高まっているため、むしろ扱いやすさを感じる。

ノーマル版ではエア圧を下げるとしばしばサイドの「腰砕け」のようなヨレを生じることがあるが、X-Guard版はそのような腰砕けやヨレは生じにくく、たとえ少々圧を下げすぎたとしてもタイヤの腰の強さが勝っている感じだ。そのため、多少アバウトにエア圧をセットしてもタイヤ自体の剛性の高さが助けてくれる面がある。これは自分のエア圧設定にまだ自信の持てない入門者にはメリットだろう。

ダイヤ目状のSANDのトレッド。面で路面を捉えるため意外なほどオールラウンドに使えるダイヤ目状のSANDのトレッド。面で路面を捉えるため意外なほどオールラウンドに使える 例えば路面状況に合わせて思い切って圧を下げて使いたいときに、ヨレのリスクを避けるためにX-Guard版を使うのもアリだろう。

サイドカットやリム打ちパンクに関してはノーマル版でしばしば起こってきたのは事実だ。自身の体験では、シクロクロスレースの階段セクションで後輪をコンクリートの縁にヒットさせてのサイドカットと、トレイルを走っていて異物が刺さってのパンクの経験がある。同社のロードタイヤでの経験からは、X-Guardの耐パンク性は大きなメリットだと思う。

パンクは運や確率論に左右されるので比較自体は意味が無いが、X-Guard版でのパンクやサイドカットはまだ経験していない。

ただし、自身の取り付けミスからレース中にタイヤがリムから外れるトラブルを経験してしまった。リムテープの不具合という原因を突き止めるまで時間もかかり、試行錯誤してしまった。取り付けが簡単というのは確かなメリットだが、同時にこういった面のやっかいさやリスクはチューブレスには依然としてあると思う。

ノーマル版に比べての+55gの重量差はわずかながら体感できるものだ。シーラント注入量による重量差と同様に、レースなら気分を含めて差が出るかも知れない。その点が気になる人はノーマル版を使うのが良いだろう。

ノーマル、X-Guard版の2種を使い分けて感じるのは、普段使いにX-Guard、レースにはノーマル版を用意できればベストだろうということ。2タイプは非常に近い感覚で使うことができるため、耐パンク性や耐久性、あるいは軽量性としなやかさなどの性能のどちらを重視するかで選択すれば良い。もっとも、その場合はホイールへの組み替えの時間的な余裕を含めて準備できることが前提になるが。

扱いやすいという点でX-Guard版にはメリットがあるが、レースでの性能においてはノーマル版シラクのしなやかさが武器になる場面は多そうだ。X-Guard版を入門用に、レベルアップ用にノーマル版という考え方でもいいと思う。

タイプとトレッドで6種類もの選択肢を揃えることを可能にしたSERAC CXシリーズ。路面状況ごとにタイヤを用意し、使い分ければシクロクロスでの走りは大きくレベルアップできる。そんな楽しさを広げてくれるタイヤだ。

SERAC CX TUBELESS (シラクCX チューブレスクロスガード)
サイズ:700 x 32C、ビード:フォールディング、推奨空気圧:3.0-5.0kgf/cm²、重量:435g
価格:7300円(税抜き)
※SAND、MUDともに各スペックは共通

text:Makoto.AYANO

最新ニュース(全ジャンル)