雨のステージが続いたことで少し調子を落としながらもジロ・デ・イタリア第9ステージまでを走り終えた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)。ジロ後半戦突入を前にこれまでの走りとこれからの走りを振り返ってもらう。



第7ステージを走り終えた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)第7ステージを走り終えた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


5月16日、トスカーナ州のポッジボンシのホテルで大会2回目の休息日を迎えたNIPPOヴィーニファンティーニ。山本元喜はチームメイトと一緒に宿泊ホテルから丘の上の街サンジミニャーノまでの往復25kmほどを軽くカフェライドし、JSPORTSの「ジロ・デ・イタリア休息日TV」に電話出演してから午後はゆっくりと過ごした。

第9ステージまでを難なく終えた山本にこれまでの走りとこれからの走りを聞く。雨のステージが続いたことで体調があまり優れない様子で、インタビュー中にも咳が出る。

40kmを超える長距離TTを走った感想を

40.5kmのアップダウンコースに繰り出す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)40.5kmのアップダウンコースに繰り出す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji2級山岳アルペ・ディ・ポーティを登る山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)2級山岳アルペ・ディ・ポーティを登る山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiタイムトライアルでは序盤の5分を踏みすぎないように心がけていますが、今回は経験したことがない長さだったので最初の10分間を抑えめで走りました。あまり体調が良くなかったので、10分経ってからも心拍が上がらずに踏めなかった。

調子はいいけど体調が悪い?

イタリアに入ってから脚の調子はすごく良いのですが、雨が降る寒いステージが続いたことで咳が出たり喉が痛くなる症状が出た。疲れは無く、起床時の心拍も40前後と本来であれば絶好調なのですが、タイムトライアルでは心拍が上がらなかった。踏まない下り区間もあったので心拍は平均150ほど。中盤にかけて上がったものの最高で165でした。通常であれば平均が170を軽く超えて最高も180を超えるのですが、昨日は踏めなかったですね。レースが始まれば集中力が高まって体調が良くなるんじゃないかと願っています。

ここまでで最も辛かったステージは?

グルペット内で登りをこなす山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)グルペット内で登りをこなす山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji平坦ステージではどのチームも自分たちのエーススプリンターが残れる強度でレースを引っ張ってゴールに持ち込みたいのでハイペースになる。スプリンターを前に上げた状態でペースを上げるので集団後方はブチブチになる。スプリンターがグルペットを作る山岳ステージよりも、スプリンターチームが率いる平坦ステージが辛いですね。いつもグレガ・ボーレが先生となって「ここで遅れればいい」といったアドバイスをくれます。今の自分の調子では、ジロ前の落車で大会3週目に向けて調子を上げるために走っている彼が千切れるタイミングがあっている。

ここまで9ステージを走って身体の疲れは?

大会1週目は集団を引いたりするシチュエーションもあったので比較的きつい内容でしたが、自分が想像していたよりも身体の疲れは無いです。限界まで追い込んでいる感じではないです。毎日ゴールの時点で思いついたその日の辛さを数字で表しているのですが、(10点中)まだ8以上はない。まだ身体的に追い込まれてはないです。ただ、8の強度が3週間続けば力尽きてしまうので、レース中もあえて強度を落とす時はあります。ステージの前半に動きすぎなければ比較的後半に余裕が生まれる。疲れた日の翌日は動かないようにするなど、自分なりに強度をコントロールすることを心がけています。

チームからは「走れる選手」として扱われている?

メイン集団を牽引して3級山岳を進む山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)メイン集団を牽引して3級山岳を進む山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji最初はもうちょっと仕事が少ないかと思っていたんですが、イタリアに入ってから忙しいステージが続きました。最初はジュリアーニ監督も「絶対に完走しなければならないから抑えめで」というスタンスだったものの、調子が良く、走れると分かったからこそ今は仕事が振られます。

目標は完走で変わりなし?

最低限の目標が完走。そこは絶対に達成したいですし、逃げることができたからDNFでもいいとは全く思っていません。逃げたいけど、動きすぎると反動で遅れてしまう可能性があるので難しいですね。

トップ選手の強さを肌で感じますか?

登りコースでUCIワールドチームの選手が本気を出す時には既に自分が千切れていないので分かりませんが、平坦コースで彼らのスピードを目の当たりにします。だからこそ苦しむのが平坦コースでもある。本当に爆走ですね。彼らが本気を出すと、平坦コースでも自分がフォームも気にしてられないほど全力で踏んでギリギリ付いていけるかどうかというレベル。調子が上がっているこの状態で限界まで踏んでようやく付いていけるので、調子が悪い状態であればすぐに千切れて終わっていただろうなと思うシーンがここまで何回もありました。

この先、厳しい山岳ステージも登場しますが

決して油断は出来ませんが、大きな山岳ステージは逆にタイムカットの心配をする必要がないかなと思っています。それよりもスプリンターチームが絡んでくるハイスピードな展開が怖い。あとは(山岳賞トップのウェレンスと)クネゴが1点差なので、山岳ポイントに関してチームがどう動くかによって疲労度が大きく変わってきます。



「最低限の目標が完走。そこは絶対に達成したい」「最低限の目標が完走。そこは絶対に達成したい」 photo:Kei Tsuji


周囲の選手との体格の差は大きいですね

身体が小さいので、周りの大きな選手が風よけになって楽です。マルセル・キッテルは本当に良い風除けになりましたね。身長だけ高い他の選手とは全然違い、日本人をそのまま縦と横に巨大化させた感じ。今回のジロで自分(身長163cm)よりも小さい選手はいないかもしれない(シャベス164cm、ユアン165cm、ポッツォヴィーヴォ165cm、アタプマ167cm、ベタンクール167cm)。集団内で「この選手小さいな」と思ってもサドルの高さが全然違っていたりします。

もしこのジロを完走すれば日本人最年少かつ日本人最小グランツール完走者になると思います。新城幸也さんがツールを完走したのは24歳10ヶ月の時。自分は今24歳6ヶ月。そういえばと思って数日前に調べました。

text:Kei Tsuji

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