「とてもファンタスティックな気分だ」とコメントするのは、一昨日に続く今大会2勝目を飾ったアンドレ・グライペル。一方でパンクによりスプリントのチャンスを失ったマルセル・キッテルは「なんといっても今日は13日の金曜日だったね」と不運な1日を表現した。



ステージ優勝&マリアロッサ獲得のアンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・ソウダル)

ステージに上がるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ステージに上がるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji
スタートしてから数kmで、「今日はグルペットでフィニシュすることになるだろう」と思った。最初の山岳で集団が3つに分裂し、第1集団は明らかに後続を突き放しに掛かっていた。しかし、第1集団から6名の逃げ集団が形成されてからはペースが落ち着いて、3つ分断された集団が再び1つになった。

ニッツォロとモードロを振り切るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ニッツォロとモードロを振り切るアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiチームメイトを抱き寄せるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)チームメイトを抱き寄せるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiそこからはチームメイトのイェーレ・ファネンデルトとピム・リヒハルトが、FDJのライダーと共に素晴らしい働きをしてくれた。ただ、逃げ集団にはステファン・キュングの様に良い走りをみせていたライダーが数名いたため、最終的な勝負は自分たちが最後の山岳で生き残れるかどうかに懸かっていた。

最後の山岳は、頂上を超えるまでハイペースだった。頂上を越えた時点で、フィニッシュまでの40kmが僅かながらに下り基調であることを考慮しても、先頭とのタイム差は大きくなり過ぎないように確認する必要があった。ティム・ウェレンスは、先頭集団とのギャップを詰めるために素晴らしい働きをしてくれた。その後はアダム、ラース、ショーン、ユルゲンが僕のために素晴らしい位置取りをしてくれた。

最終局面ではいくつかの危険な区間があり、トリッキーだった。従って集団前方でレースを進めることが極めて重要になった。フィニッシュでは全力でスプリントでき、チームに再び勝利をもたらすことができた。チームにとっては今大会3勝目で、自身にとっては2勝目だ。

オランダでの3ステージは何もかもがうまく行かず、プラン通りのレース運びができなかったけど、イタリアに来て立て直すことができた。今回のジロは、あまり一緒のレースを走ったことのないメンバー同士で編成されているが、それでもチームとして連携できており、とてもファンタスティックな気分だ。ここ数日の結果は誇るべきものであり、今日はマリアロッサとマリアアッズーラも獲得でき、チームとしては驚くほど好調だ。このままの勢いをキープしていきたいけど、今日はひとまず勝利を味わうことにするよ。

パンクでチャンスを失ったマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)

残り6km地点でパンクしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)残り6km地点でパンクしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji今日はイージーな日では無かった。スタート直後から1時間以上に渡って全力で走ることを強いられたし、悪天候にも見舞われた。チームとしてのプランは「待ち」で、最後の登りでの展開次第だった。(最後の登りを終えた後も)チームメイトと共に生き残ることができ、チーム内で連携しながら勝利の可能性を感じていたし、全てが良い方向へと向かっていた。

最後の下りでは最初から最後まで攻め、先頭集団に復帰することができた。最終局面は非常にハイペースだったものの、ファビオとマッテオと共に良い位置につけることができていた。しかし、不幸なことにパンクを喫してしまい、そこでレースは終了。不運なトラブルだっただけに悔やまれるけど、アンドレにはおめでとうと言いたい。

今週のはじめのほうで僕が言ったとおり、これこそが自転車競技であり、素晴らしい瞬間もあれば、そうで無い時だってある。なんといっても、今日は13日の金曜日だったね。

マリアアッズーラを獲得したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)

マリアアッズーラを獲得したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)マリアアッズーラを獲得したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji昨日、山岳賞ジャージは前もって考えていた目標ではないと言ったし、今もその考えは変わらない。今日の最初の登りでは、山岳賞首位だったダミアーノ・クネゴ(イタリア)のためにNIPPOヴィーニファンティーニが集団先頭でポジション取りをしていた。しかし、クネゴに対して、自分は1ポイント差の2位につけていて、ここでポイントを取ればマリアアッズーラを獲得できるだろうと考えていたから、ポイントを取るためにスプリントしたんだ。

レース前に計画していた動きではないけど、たった一回ペースをあげただけで山岳賞ジャージを1日着用できることになったのだから、結果的にはよい動きだったと思う。ただ、山岳賞ジャージを守っていくことよりも、ここからはステージ2勝目を目標にしていく。ここからの数日の間で何が起こるか楽しみだ、

マリアローザを守ったトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)

マリアローザをキープしたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)マリアローザをキープしたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) (c)CorVos
思いのほか序盤の展開がとてもハードだった。特にNIPPOヴィーニファンティーニがペースを上げていたね。最初の登りが終わったあとも決定的とは呼べない小さな逃げしか発生せず、メイン集団は不安定だった。総合上位につけるライダー数名がアタックしてきたけど、ゲオルグとトビアスがよく抑えてくれた。最終的には6名の逃げが形成されて、幾つかに分裂した集団も1つになってからは、落ち着きを取り戻した。

マリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)マリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji明日のステージと未舗装路についてだけど、これまで2回ストラーデ・ビアンケを走った経験がある。2回とも楽しみながら走ることができたし、成績も良かった(2014年に12位、2012年に17位)から、実際のところ明日は楽しみにしている。

今回のジロに向けての自分の準備は、チームメイトと大きく異なる。プロサイクリストだと1年の大半を自宅以外で過ごすけど、僕は自宅に居る時間を多くとりたいと考えている。このジロが終わってから、リオ五輪に向けて高地キャンプを実施する予定だけど、今回のジロで総合を狙う考えは無かったから、今大会に向けてはそういったトレーニングはして来なかったし、必要無かった。今はコンディションも良くなってきてるし、日々着実にこなしていくよ。

残り7kmまで逃げたステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)

雨に濡れた下りをこなすステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)雨に濡れた下りをこなすステファン・キュング(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiトレヴィの街を眺める幹線道を独走するステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)トレヴィの街を眺める幹線道を独走するステファン・キュング(スイス、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji最後のスプリントポイントが設けられた街を通過した時に、「テクニカルなコースだから、集団のペースが少しでも落ちれば逃げ切れるかもしれない」と感じた。だから時速60km/hまで逃げ続けてみたけど、ハイペースを保つのは中々簡単なことではなかった。それに、アタックした時点でフィニッシュまで40kmもあって、長距離かつハードなステージだったから、やっぱり逃げ切りは難しかったね。

開幕ステージのTTを落車で棒に振ってしまい、勝てるチャンスがあると思っていただけに本当に落ち込んだし、そこから2日ほど引きずってしまった。今日、逃げ集団に入れたことで、その悔しさを晴らすことができると考えていたものの、メイン集団は2分~3分でタイム差をコントロールしていると聞いてがっかりしたよ。逃げている間も「いつ逃げ集団を離脱してメイン集団に戻ろうかな?」って考えていたけど、やっぱり自分は自転車選手。負けず嫌いだから、僅かな望みにかけてアタックしたんだ。

今年はじめに負った怪我から、1ヶ月ほど前にレース復帰したばかり。今日の走りは、自分が理想としていたところまで体調が戻って来たという良い証拠。だから今日の走りには満足しているよ。

「明日は逃げたい」山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) キツさレベル:8 

予想を裏切らないしんどい1日だった。一昨日の事もあり身構えていたのでそこまで衝撃は無かった。レースがキツくなるかどうかは選手次第といったところだろう。そもそも今日のレースがしんどかったのは最初の2級山岳で踏んだのが原因な気もするが。

メイン集団から脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)メイン集団から脱落した山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
もっと言えば集団が分断したこと自体、NIPPOが原因を作ったような気もするが。山岳リーダージャージは昨日の時点で2位だったロットのティム・ウィレンスが1点差でクネゴを上回り、ジャージを手放すことになった。ちなみに今日の獲得標高は2400m……平坦ステージとは一体?

レースレポートの最初の部分でも少し触れたが、明日は逃げたい。明後日にはタイムトライアルが控えているため逃げ切りの可能性も高いからである。逃げたいと言って簡単に逃げれるものでは無いというのは百も承知であるが、明日は逃げる為に全力で努力したいと思う。(本人ブログ「Genki一杯」より抜粋)

※各コメントはレース/チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイト/Twitter/Facebookより。

text:Yuya.Yamamoto