ランプレ・メリダや宇都宮ブリッツェンを支えるメリダのオールラウンドロード「SCULTURA」シリーズより、アルミフレームを採用した「SCULTURA 700」をピックアップ。シマノ105コンポやDTスイスのホイールを組み込んだ日本独自企画モデルをテストした。



メリダ SCULTURA 700メリダ SCULTURA 700 photo:Makoto.AYANO
世界でも有数の規模を誇る自転車メーカーの1つがメリダである。生産拠点は母国台湾、研究開発拠点はドイツという体制をとり、ランプレ・メリダやマルチバン・メリダといったプロチームをサポート。自転車競技の本場ヨーロッパでその性能を磨くことでレーシングブランドとしての地位を高めつつ、今日も低価格で良質なバイクを世に送り出し続けている。

過去にはマグネシウム製バイクを製造するなど、約40年前の創業当時より常に金属素材の可能性を探ってきたメリダのノウハウが詰まったアルミロードレーサーが、今回インプレッションを行う「SCULTURA 700」である。

アルミの質感を活かしたメタリックカラーで仕上げられているアルミの質感を活かしたメタリックカラーで仕上げられている 下側1.5インチ径のテーパードヘッド下側1.5インチ径のテーパードヘッド フロントフォークはコラムまでカーボン製とし、剛性と軽さを両立フロントフォークはコラムまでカーボン製とし、剛性と軽さを両立


メリダのロードラインアップは、現在3シリーズで構成されている。エアロロードの「REACTO(リアクト)」、エンデュランスロードの「RIDE(ライド)」そして、オールラウンドモデル「SCULTURA(スクルトゥーラ)」。なお、SCULTURAはイタリア語で「彫刻」という意味を持つ。

フレーム形状は、2013年に発表された3代目SCULTURAを踏襲する。SCULTURAのアイコンとも言うべき緩やかにカーブしたトップチューブや、トップチューブと滑らかに接続するシートステーは振動吸収性に貢献。外側をバテッドさせたX-TAPERデザインのヘッドチューブや太くマッシブなダウンチューブ、縦に潰し加工を施したチェーンステーにより、アルミ本来の高い剛性を余すことなく引き出しているのだ。

ケーブルは全て内蔵とされているケーブルは全て内蔵とされている 緩やかなアーチを描くトップチューブ緩やかなアーチを描くトップチューブ

BBはトラブルが発生しにくいねじ切り式だBBはトラブルが発生しにくいねじ切り式だ カーボン製モデル同様に極太とされたダウンチューブカーボン製モデル同様に極太とされたダウンチューブ


フレーム素材には、メリダが使用するアルミニウムの中で最上位グレードの「PROLITE 66」と名付けられた6066アルミ合金を採用。これに、厚みを3段階で変化させるトリプルバテッド加工を施すことで軽量化。

各チューブはハイドロフォーミングによって成型されており、特に星形断面とされたトップチューブ後ろ側の端部にメリダが持つ優れたアルミ加工技術を見て取ることができる。スムースウェルディング技術によって各チューブがつなぎ合わされており、美観にも優れている。

ホイールはミヤタサイクルが輸入代理店を務めるDTスイスのR24 Splineだホイールはミヤタサイクルが輸入代理店を務めるDTスイスのR24 Splineだ コントロールテックが製造するメリダのコックピットパーツコントロールテックが製造するメリダのコックピットパーツ


ブレーキとシフトのケーブルはともに内蔵仕様。長年のフレーム製造で培ってきたノウハウをもとにルーティングを最適化し、操作時のフリクションを低減している。BBは、カーボン製上位グレードがプレスフィットタイプであるのに対し、SCULTURA 700では音鳴り等のトラブルが発生しにくく、メンテナンス性にも優れるねじ切り式とした。

コラムまでフルカーボンのフロントフォークを組み合わせることで、剛性と軽さを両立。下側ベアリング径を1. 5インチとされたテーパーヘッドと合わせ、上級者から初心者まで不安なく乗りこなせるようにステアリングの安定感を高めている。

ミヤタサイクルが企画したことを示すステッカーがあしらわれているミヤタサイクルが企画したことを示すステッカーがあしらわれている シートステーの根本にRの小さなベンドを設け、振動吸収性を高めたシートステーの根本にRの小さなベンドを設け、振動吸収性を高めた トップチューブ後端は、ハイドロフォーミングにより星形断面に成型されているトップチューブ後端は、ハイドロフォーミングにより星形断面に成型されている


パーツのアッセンブルは、メリダの国内総輸入代理店であるミヤタサイクルが独自にチョイス。コンポーネントはシマノ105で統一。レースからロングライドまであらゆるシチュエーションに対応できるよう、ギア比はフロント52x36T、リア11-28Tが採用されている。足回りは、ミヤタサイクルが輸入するDTスイスのホイール「R24 Spline」に、マキシスの軽量タイヤ「Dolemites」を組み合わせている。

サイズラインアップは44、47、50、52、54、56cmという6種類と豊富。カラーはアグレッシブな印象の「レッド」と、対照的に落ち着いた仕上がりの「ポリッシュクリヤー」という2種類だ。なお、今回のテストバイクのサイズは52で、実測重量は8.3kgだった。早速インプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「バランスの取れたアルミロード 素材本来の加速性が持ち味」
早坂賢(ベルエキップ)


全体的に性能バランスのとれた平均点が高いアルミバイクといえるでしょう。特に優れているのが加速性ですね。アルミ特有のカッチリとした剛性感と、他社よりも少し高めに設定されたBBハイトとの組み合わせにより、よくスピードが伸びてくれます。ダイレクトというイメージではなく、車重がある分だけ、高速域からの加速ではワンテンポ遅れて速度が上がってきます。高回転ペダリングよりも、トルクを掛けて踏み込んであげるとよいでしょう。

「バランスの取れたアルミロード 素材本来の加速性が持ち味」早坂賢(ベルエキップ)「バランスの取れたアルミロード 素材本来の加速性が持ち味」早坂賢(ベルエキップ)
登りでは、ケイデンスが高めでもギアが重めでも、心地よく進んでくれます。どちらかといえば反応性が活きてくる短距離/急勾配の坂のほうがより得意と言えそうです。車重はそれなりにあるので、ヒルクライムや登りの多いレースに出場する方であれば、ホイールなどで軽量化してあげたいですね。

平地巡航は時速30km/h以上が軽快です。下りは安定感が高く、ハンドリングはクセがなくニュートラルなため、これがはじめてのロードバイクというビギナーでも安心して操ることができるはず。ブレーキングの際にフロントフォークがたわむ印象を受けましたが、その挙動を把握していれば問題ないほど変形量は僅かです。ダンシングは軽快とはいえないものの、バイクを振れば、高い剛性に由来する反応性の良さで進んでくれます。

快適性については、リアで振動をいなしているという印象です。見た目にも特徴的なシートステーのベンドが効いていると考えられます。一方のフロントは、太いダウンチューブなどの影響もあってか、振動をコツコツと身体に伝えてきます。振動が気になる方はタイヤやバーテープなどのセッティングを調整してあげると良いでしょう。

性能バランスの高さと、ブレーキやクランクを含めコンポーネントをシマノ105で統一していることを考慮すると、17万円と価格は適切といえるでしょう。同価格帯のバイクであれば、乗り始めて直ぐに交換したくなるパーツがあるものですが、SCULTRA700については、そういった点は見当たりません。

標準装備されるDTスイスのホイールも好印象でしたし、ハードなライドをしない限りは充分でしょう。ロードレースやヒルクライムへの出場を考えて交換するとすれば、振動吸収性もある程度あるホイールが良いですね。ミドルグレードで言えばマヴィックKSYRIUM ELITE、予算が許せばマヴィックR-SYS SLRや、各社のカーボンクリンチャーがオススメです。

「アルミらしいダイレクトな踏み味のバイク 重量を感じさせない軽快な登坂が魅力」
寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)


アルミらしい軽快な乗り味のバイクというのが、SCULTRA 700の第一印象です。私自身、普段からアルミバイクに乗っていてますが、思わず欲しくなってしまいました。

「アルミらしいダイレクトな踏み味のバイク 重量を感じさせない軽快な登坂が魅力」寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)「アルミらしいダイレクトな踏み味のバイク 重量を感じさせない軽快な登坂が魅力」寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館) 最近では敢えて剛性を低めに設定したアルミバイクが少なく中にあって、SCULTRA 700についてはそういったことはありません。パリッとしていて、踏み込めばダイレクトに推進力に変わってくれますね。高出力でモガイても、気持ち良く進んでくれます。

確かにわずかなたわみは感じるものの、変形してから戻るまでの時間が短く、入力をスポイルしている印象はありません。その高い駆動効率が登り性能の高さにつながっており、8.3kgという完成車重量を感じさせないほど軽快にヒルクライムをこなしてくれました。ケイデンス高めのペダリングが良いでしょう。

ハンドリングは直進安定性が高く、コーナーではアンダーステア気味です。峠の下りを攻めるような場合には慣れが必要になりますが、ビギナー層にとっては急な切れ込みが少ないというのは安心できるポイントですね。また、障害物を避けようとする時など急激なライン変化にも対応してくれます。

剛性が高い分だけ、振動吸収性は高いとは言えませんし、荒れた路面ではゴツゴツとくるのですが、きれいに舗装されたアスファルトでは全く気になりません。恐らくシートステーなどのベンド加工が効いていると感じました。

完成車としてのパッケージングは充実の内容で、DTスイスのホイールはフレームの特性とも良くマッチしています。自社ブランドのパーツで統一しているアメリカ系メーカーの完成車と比較しても遜色ありません。メタリックの塗装や無骨な溶接ビードなど、アルミを活かした仕上げもSCULTRA 700の大きなポイントといえるでしょう。総じてSCULTRA700は、同価格帯のエントリーグレードのカーボンを買うのであれば、こちらを購入した方がよいと思わせてくれるだけの、魅力的な1台です。


メリダ SCULTURA 700(完成車)
フレーム素材:PROLITE 66 TRIPLE BUTTED ALUMINIUM
フォーク:Road carbon comp
メインコンポーネント:シマノ 105
ギア比:F52x36T、R11-28T
ハンドル・ステム・シートポスト:メリダ
ホイール:DTスイス R24 Spline
タイヤ:マキシス Dolemites(700x23C)
サイズ(cm):44、47、50、52、54、56
カラー:レッド、ポリッシュクリヤー
価 格:169,900円(税抜)



インプレライダーのプロフィール

早坂賢(ベルエキップ)早坂賢(ベルエキップ) 早坂賢(ベルエキップ)
欧州のプロチームでメカニックを務めてきた遠藤徹さんがオーナーを務める、宮城県仙台市のプロショップ「ベルエキップ」のスタッフ。趣味として始めたスポーツサイクルの魅力にどっぷりはまり、ショップスタッフになりたいとベルエキップの門を叩き、今年で6年目。現在は店長代理を努め、主にメカニック作業やビギナー向け走行会を担当する。普段はラーメンやコーヒーなど美味しいものを求めグルメライドを楽しむ一方で、ヒルクライムイベントに参加することも。平坦よりも登りが得意で、快適性が高くバネ感のあるソフトな自転車が好み。現在の愛車はボーマRapid-R。

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寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館) 寺西剛(シミズサイクル サイクルスポーツ本館)
愛知県大府市にあるシミズサイクル サイクルスポーツ本館のスタッフ。同店の最古参スタッフとして、主にロードバイクのメカニック作業や、上級者向けの走行会を担当している。高校2年生の時にスポーツバイクを始め、大学時代はサイクリング部に所属し、日本各地をツーリングする。大学時代からアルバイトとしてシミズサイクルに勤務し、大学卒業後に一般企業に2年務めたあと、現職に。脚質はクライマーで、硬めの乗り味の自転車を好む。現在の愛車はエヴァディオBacchas。

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ウェア協力:リオン・ド・カペルミュール
ヘルメット&アイウェア協力:SH+


photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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