「ポケットロケット」と形容されるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が後方から勢い良く加速。21歳の弾丸スプリンターがチームメイトの総合優勝に華を添えるスプリント2勝目を飾った。



アデレード中心部のキングウィリアムズ通りを走るアデレード中心部のキングウィリアムズ通りを走る photo:Kei Tsuji
スタートとともにアタックするリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)スタートとともにアタックするリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ) photo:Kei Tsuji逃げグループを形成するジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)ら逃げグループを形成するジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)ら photo:Kei Tsuji


逃げるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)とマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)逃げるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)とマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiツアー・ダウンアンダーを締めくくるのは、大会の拠点であるアデレードの市街地を舞台にした周回レース。目抜き通りであるキングウィリアムズ通りを含む4.5kmコースを20周する。1周につき30mほどの標高差があるが、スピードが弱まるポイントがないハイスピードコースだ。

リーダージャージを着て最終ステージを走るサイモン・ゲランス(イタリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージを着て最終ステージを走るサイモン・ゲランス(イタリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji気温は30度以下で比較的涼しい風が吹いたものの、照りつける太陽は真夏の勢い。最終ステージまで残った135名がスタートするやいなや、リエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)が開口一番飛び出した。

逃げ続けるマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)とトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)逃げ続けるマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)とトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiヴェストラにはカルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)ら4名が飛びついたものの、人数の多さからメイン集団はこの動きを容認しない。すぐさま逃げが捕らえれると、続いてマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)とトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が飛び出した。

オランダのロットに所属するオランダ人と、ベルギーのロットに所属するベルギー人による逃げ。しかしオリカ・グリーンエッジに加えてスプリンターチームが警戒心を解かずに追走する。2回のスプリントポイントはチャリンギとデヘントが分け合い、その後方ではダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)らがエースのためにボーナスタイムを潰す動きを見せる。

エスケープデュオとメイン集団のタイム差が縮まるとメイン集団からは再びヴェストラらが飛び出し、「集団スプリントを避けるためには何かをしないといけない。ステージ優勝のチャンスが少しでもあるなら挑戦すべきだ」というチャリンギに追いついて先頭は新たに2名。しかしスプリンターチームが貴重なスプリントのチャンスを逃すはずはなく、フィニッシュまで3周を残して逃げは全て吸収された。



アデレード中心部のキングウィリアムズ通りを走るアデレード中心部のキングウィリアムズ通りを走る photo:Kei Tsuji
集団前方で走る総合2位リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)ら集団前方で走る総合2位リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)ら photo:Kei Tsujiマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)にリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)が合流マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)にリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)が合流 photo:Kei Tsuji
アデレード中心部のキングウィリアムズ通りを走るアデレード中心部のキングウィリアムズ通りを走る photo:Kei Tsuji


スプリンターチームが隊列を組んで集団前方に上がるスプリンターチームが隊列を組んで集団前方に上がる photo:Kei Tsujiティンコフやロット・ソウダル、ディメンションデータ、チームスカイが集団先頭で隊列を組んで残り1周。高速巡航を得意とするゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が集団先頭に立ったが、残り1kmでジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)を従えたボーイ・ファンポッペル(オランダ)が先頭を奪って最終ストレートへ。

ディメンションデータやチームスカイがメイン集団を牽引ディメンションデータやチームスカイがメイン集団を牽引 photo:Kei Tsujiトレック・セガフレードが好位置でスプリントに持ち込むと思われた矢先、フィニッシュまで150mを残して後方から弾丸が発射される。先頭から数えて6番手に位置していたユアンが勢い良く加速し、先行する選手たちをごぼう抜きにした。

低い体勢で先頭を突き進むカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)低い体勢で先頭を突き進むカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiニッツォロやマーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)も自分のタイミングでもがいたものの、ハイシーズンで乗りに乗っているユアンが圧倒的なリードを築く。そのまま4mほどの差を広げたユアンが先着。第1ステージに続くスプリント2勝目で大会を締めくくった。

「1チームでステージ優勝と総合優勝を同時に狙うのは難しい。6ステージ中、4ステージで勝利して、しかも総合優勝を掴むとは驚くべき結果だ」とユアン。身長165cmの小柄な身体から繰り出される爆発的なスプリントを武器に、ユアンは2016年シーズンの台風の目になるかもしれない。

チームメイトのサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は安全に集団フィニッシュし、4度目の総合優勝を掴んだ。表彰台でリーダージャージを着てシャンパンファイトを繰り広げたゲランスは「チームメイトたちの走りはセンセーショナルだった。第1ステージから第6ステージまで常に集団前方で仕事して、今日も全開でカレイブをアシスト。なんてファンタスティックな1週間だったんだろう。オーストラリア唯一のUCIワールドツアーレースでオーストラリアチームが優勝するなんて、ただただ素晴らしいとしか言えない」とコメント。のべ70万人を超える観客が詰めかけたオーストラリア最大のロードレースが華々しいフィナーレを迎えた。



最終スプリントを制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)最終スプリントを制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
総合2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)総合2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji総合3位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)総合3位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
4度目の総合優勝を飾ったサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)4度目の総合優勝を飾ったサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji


ツアー・ダウンアンダー2016第6ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      1h55’02”
2位 マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 アダム・ブライス(イギリス、ティンコフ)
5位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、カチューシャ)
6位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
8位 ダヴィデ・マルティネッリ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
9位 リー・ハワード(オーストラリア、IAMサイクリング)
10位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、キャノンデール)

個人総合成績
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)    19h11’33”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)            +09”
3位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)       +11”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)            +20”
5位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール)
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)             +28”
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)             +36”
9位 スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)                  +49”
10位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、キャノンデール)        +50”

スプリント賞
サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)

ヤングライダー賞
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ)

チーム総合成績
キャノンデール

敢闘賞
マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia