MTBリレーの2位、山本幸平の優勝と7連覇、男子ジュニアの表彰台独占、女子ジュニアの3位、DHの清水一輝の2位と、10個のメダルを獲得した日本チーム。ナショナルチームを率いた鈴木雷太監督とレースを走った選手たちにインタビュー。レースを振り返ってもらった。


MTBアジア選手権を成功で終えたチームジャパンMTBアジア選手権を成功で終えたチームジャパン photo:Alisa.Okazaki

鈴木雷太ナショナルチーム監督:総括「得られた手応えと結果。東京五輪へ向け見えた課題」

山本幸平と鈴木雷太ナショナルチーム監督山本幸平と鈴木雷太ナショナルチーム監督 photo:Alisa.Okazakiスタートしていく男子エリート。ノンテクニカルなパワーコースを制するのは?スタートしていく男子エリート。ノンテクニカルなパワーコースを制するのは? photo:Alisa.Okazaki今年、そしてここ4年でいちばん重要なレースだったけど、幸平が勝ってくれて、若いジュニア勢が頑張ってワン・ツー・スリーをとってくれて、かつ(竹内)遼と(平林)安里が競ってくれたりと、手応えと結果が出た大会だったと思います。ただ、ベストだったかと言われると、ベターではあったけど、もっとできることはあった思います。それはスタッフを含めて、チーム全体としてもっとサポートが必要なことなどが見えた。現場としてはそれが重要なんです。「もっともっと上手く出来ないといけないな」というのが大きな感想です。

今回のスタッフは皆優秀でよくやってくれたと思うけれど、マンパワーの面で足りていないところはある。選手間の連携についても、80%ぐらいだったかな、というのはある。足りない20%をどうやって克服していくかというと、普段はライバルとして個々バラバラな選手たちが、ここにきた5日間だけで同じチームとなったとき、意思の疎通不足など微妙な点が差をうんでしまうんです。今回、2位争いをするパックのなかでの武井と(平野)星矢がいて、武井にはやりたい戦術があって、それが星矢と食い違った。横から見ていても溝があったと感じた。

自分のレース翌日に、氷作りや補給でチームサポートに廻った清水一輝選手自分のレース翌日に、氷作りや補給でチームサポートに廻った清水一輝選手 武井はロードが得意で今回のイージーコースの走り方をロードレースのセオリーから星矢にアドバイスを伝えようとした。でも星矢はロードレースに慣れていないからそれが活かせなかった。その微妙な「連携ができない点」は感じました。

そんな少しのギャップを埋めるのは、古い言い方をすれば普段から「同じ釜の飯を食う」時間を増やしたりとかして、関係を作っていく必要もあるんです。ただ、全体としては去年も良かったし、今年も良かった。去年より良かった面はある。でも結果に結び付けられなかったのが惜しかった。コースもロードレースみたいなコースだったから。

女子に関しては、中国との力量差「個の差」があった。それを埋めていくにはどうすれば良いかというと、個人の努力はしているんだろうけど、外部のスタッフらが彼女らにモチベーションを与え、奮い立たせていくような環境づくりが必要です。女子選手は男子よりもメンタル面のサポートを必要とするから、支える人たちの関係づくりをしていく必要がある。普段から意識してそれを作っていくのは課題ですね。ここから来年、再来年にかけて、そして東京五輪の前までにそれらをより強めていきたい。努力が結果に反映できるようにするのが我々の仕事ですね。

男子ジュニア優勝 竹内 遼(長野・WESTBERG/ProRide)

普段からチームメイトの平林を後半追い込み、男子ジュニア優勝を飾った竹内 遼(長野・WESTBERG/ProRide)普段からチームメイトの平林を後半追い込み、男子ジュニア優勝を飾った竹内 遼(長野・WESTBERG/ProRide) photo:Alisa.Okazaki
男子ジュニアは日本が表彰台を独占。竹内 遼(長野・WESTBERG/ProRide)、平林 安里(長野・長野県白馬高等学校)、山田 将輝(長野・Limited846/DIRTFREAK)が1・2・3フィニッシュ男子ジュニアは日本が表彰台を独占。竹内 遼(長野・WESTBERG/ProRide)、平林 安里(長野・長野県白馬高等学校)、山田 将輝(長野・Limited846/DIRTFREAK)が1・2・3フィニッシュ photo:Alisa.Okazaki体調も万全で、レース前にはサポーターの方、マッサーの方々に万全に仕上げていただいたので、そのなかでしっかり走れたのは嬉しいですね。
昨年はアジア選手権には出ていなかったんですが、今回メダルを取るつもりでいました。

スタートではペダルキャッチをミスして出遅れてしまったんですが、冷静に対処出来ました。その後は最終週回までアリ(平林)が見えるぐらいの位置で走っていて、前に出れたのは最後の最後、登りでアリがきつくなっている様子を見た時、「下りに入る前に前に出れば行ける」と思っていたのでアタックしました。ギリギリの競り合いでした。

大会中、選手の皆、スタッフの皆さんに明るく接して頂いて、いい雰囲気で過ごせました。シクロクロスでは世界戦の出場経験はあるんですが、MTB世界選は初めてです。攻めの走りができればと思っています。このアジアチャンピオンがモチベーションになります。

ジュニア2位 平林 安里(長野・長野県白馬高等学校)

終盤まで先頭、ジュニアで2位の平林 安里(長野・長野県白馬高等学校)終盤まで先頭、ジュニアで2位の平林 安里(長野・長野県白馬高等学校) photo:Alisa.Okazakiリレーを走ってコースの感じを把握できていたので、スタートもうまくいきました。最後の最後までギリギリの闘いでした。周回遅れの選手に詰まってロスしてしまった面はあるんですが、最後の最後で遼に隙をつかれてしまいました。油断もしていなかったんですが、詰まった時にリズムを崩してしまった。全力を尽くして負けたので、負けは負けです。同じチームに最大のライバルがいる。そのことで自分のレベルもあげられる 身近に遼がいるのはとてもいい。また次のレースに向けてしっかり練習していきたいです。 

女子ジュニア3位 佐藤 寿美(北海道・TEAM BG8)

女子ジュニア スタートしていく佐藤 寿美(北海道・TEAM BG8)女子ジュニア スタートしていく佐藤 寿美(北海道・TEAM BG8) photo:Alisa.Okazaki初めての国際レースは楽しかったです。でも初めてのレースはスタート前の緊張がすごくて、涙が出そうでどうしようかと思いましたが(笑)、走り出してみるとそんなことはすっかり忘れて楽しめました。トラブルもなく走れました。自分ではリレーで速かったタイの選手にどこまでついていけるかというのを目標に走りました。ポディウムに乗れたのはサプライズです。

前の選手が速かったのでただ頑張ってついて行きました。前に見えたり、見えなかったり。でも彼女は平坦が速くて。世界選手権も走ります。今回まずアジアのレースが経験出来た。世界選では違う国が出てくるから、とくにヨーロッパ勢に圧倒されないように走りたいと思います。

女子エリート4位 與那嶺恵理(茨城・サクソバンクFX証券)

4位に終わった與那嶺恵理(茨城・サクソバンクFX証券)4位に終わった與那嶺恵理(茨城・サクソバンクFX証券) photo:Alisa.Okazakiテクニカルなセクションが皆無のスピードコースで持ち味を活かせなかった末政 実緒(兵庫・SRAM/LITEC)テクニカルなセクションが皆無のスピードコースで持ち味を活かせなかった末政 実緒(兵庫・SRAM/LITEC) photo:Alisa.Okazaki2回めのアジア選でした。ロードの全日本から自分の中ではうまくレースができていなかったので、今回は全日本チャンピオンでもなかったから失うもののない状況で「楽しんでやろう」というつもりで走りました。

コースも世界選のような難しいものではなく、超イージーなコースでした。高地トレーニングから帰ってきて、心肺系が良くなくて。でも次に繋げる走りはできました。結果は出せなかったけど、レース前の一週間の過ごし方、レースへのつなげ方など、自分の中ではうまくいきました。

自分のなかで何かを変えたくて、MTBを自分の中でどういう位置づけにするか、なども考えている部分があるんです。でもMTBが好きなんです。周りの人にも伝えられていない部分があって、去年と一昨年、1年に1ヶ月ぐらいしかMTBに乗らない私が全日本チャンピオンになって、迷いもありました。でもブレないことはロードとTTで結果を残すことに集中すること。MTBを補助的なところでどうロードに生かすように取り組み、勝つための日常を過ごすか。ロードにつなげるか。それらも再確認できました。収穫の多い遠征だったと思います。

男子エリート優勝・7連覇 山本幸平(トレックファクトリーレーシング)

危なげない独走を飾り7連覇を達成した山本 幸平(北海道・トレックファクトリーレーシング)危なげない独走を飾り7連覇を達成した山本 幸平(北海道・トレックファクトリーレーシング) photo:Alisa.Okazaki
身体のコンディションはとてもよく、パーフェクトだったと思います。スタート後から独走でき、このマラッカのコースは高速で、テクニカルでは無く、ただ前に前に進むことだけを考えて走っていました。だたただ暑いので水分はかなり摂りました。

優勝を目指していたので、優勝しないといけない立場でした。いろいろなイメージを持って走ったが、予想通り、スタートから前に出て自分のペースを刻むことが出来た。誰かついてくるならそれも良しとして走ったが、カザフスタンがひとりだけついてきて、でも彼も苦しそうな表情でいたので僕としては自信があった。案の定彼は2周めの下りでミスをして離れていった。そこで大きな差が着いて、あとは自分のペースで確実に走り、勝利を目指した。イーブンペースで追い込み過ぎず走れた。

アジア選手権はいろいろな状況が厳しく、それは過去の経験から十分知っていた。マレーシアの気候はもちろん暑かったけれど、それも想定内だった。オリンピック枠はひとつ取れたとはいえ、ほっとはしていないですね。僕が目指すのものは世界ランキングで上位になり、僕が五輪に出場できるようになること。もしそれができなければ日本国内の選考会で勝たなくてはいけなくなり、それに力を注がざるをえなくなってしまう。

またすぐにヨーロッパに向かいます。来週はさっそくイタリアでW杯があります。今シーズンは目指すのは世界戦、ワールドカップでの一桁入賞なので、それが達成できるように、注力して走ります。昨年の落車の影響からくる悪い流れはすっかり無くなり、今はキレのあるいい状態で走れているので、後半戦も頑張ります。(後半部は掲載済み)

interview&photo:Alisa.Okazaki
edit:Makoto.AYANO