「クラシックの王様」の頂点に君臨し続けた2人はいない。その王座を狙って、次世代のクラシックライダーたちが石畳の激坂に挑む。別府史之(トレックファクトリーレーシング)の出場も決まったロンド・ファン・フラーンデレンの注目ポイントや注目選手をチェックしておきましょう。



フランドルの旗が翻る中でのゴールスプリントフランドルの旗が翻る中でのゴールスプリント photo:Tim de Waele


勝負を決める「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」

ロンド・ファン・フラーンデレン2015ロンド・ファン・フラーンデレン2015 image:www.rondevanvlaanderen.be「モニュメント」と呼ばれる世界を代表する5つのワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せる「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレンが4月5日(日)、ベルギー北部のフランドル地方で開催される。

最大勾配22%の「コッペンベルグ」最大勾配22%の「コッペンベルグ」 photo:Tim de Waele1913年に第1回大会が開催された歴史ある大会であり、今年で開催99回目。フランス語で「ツール・デ・フランドル」と呼ばれるフランドル地方最大のロードレースであり、そのステータスは「世界一」と言える。

フランドル地方の短い急坂を繋いで行くフランドル地方の短い急坂を繋いで行く photo:Riccardo Scanferla自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに、沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上には黄色のフランドルフラッグが翻る。今年もフランドル地方のクラシックシーズンの熱気はこのロンドで頂点に達する。

ロンド・ファン・フラーンデレンがそれだけ高いステータスを誇っている理由、それは他のクラシックレースには見られない過酷なコース設定だ。テクニカルかつ細い農道を駆け抜け、断続的に登場する石畳に覆われた急坂に挑む。

スタート地点はブルージュで、フィニッシュ地点はレース博物館のあるオウデナールデ。名物の「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」は3年連続で登場しない。代わって勝負を決めるのは「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大小の周回コースだ。

コース全長は近年の中では長めの264.2km。例年レースが本格化するのは2回目の「オウデ・クワレモント」から。渋滞によってバイクを押す選手も続出する最大勾配22%の「コッペンベルグ」を皮切りに、フィニッシュまで一瞬たりとも気が抜けない約1時間の闘いが始まる。登り単体ではなく、チーム力が問われる登り手前の位置取り合戦も重要なファクターを担う。

連続する石畳の登りでのアタック合戦を経て、本命たちが最後の「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」に突入する。この2つの名物坂はいずれも石畳に覆われており、前者が平均4%・最大11.6%・長さ2200m、後者が平均12.9%・最大20.3%・長さ360m。ゴールから13kmしか離れていない最後の「パテルベルグ」で決定的な動きが生まれるはずだ。

天気予報によると、フィニッシュ地点オウデナールデの気温は最高11度、最低1度。雨が降れば濡れた石畳が牙を剥くが、降水確率はゼロに近く、晴れ時々曇りという予報。ヘント〜ウェヴェルヘムのような暴風レースにはならないと見られている。



登場する19カ所の急坂
1 87km地点 ティーゲムベルグ アスファルト 平均5.6% 最大9% 長さ750m
2 114km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
3 122km地点 コルテケール アスファルト 平均6.4% 最大17.1% 長さ1000m
4 130km地点 エイケンベルグ 石畳 平均6.2% 最大10% 長さ1300m
5 133km地点 ウォルヴェンベルグ アスファルト 平均6.8% 最大17.3% 長さ666m
6 145km地点 モーレンベルグ 石畳 平均7% 最大14.2% 長さ463m
7 166km地点 レベルグ アスファルト 平均6.1% 最大14% 長さ700m
8 170km地点 ベレンドリース アスファルト 平均7% 最大13% 長さ940m
9 175km地点 ヴァルケンベルグ アスファルト 平均8.1% 最大12.8% 長さ540m
10 186km地点 カペリイ アスファルト 平均5.5% 最大9% 長さ1000m
11 193km地点 カナリーベルグ アスファルト 平均7.7% 最大14% 長さ1000m
12 209km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
13 213km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
14 219km地点 コッペンベルグ 石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m
15 225km地点 シュテインビークドリシュ 石畳 平均5.3% 最大6.7% 長さ700m
16 227km地点 ターインベルグ 石畳 平均6.6% 最大15.8% 長さ530m
17 237km地点 クルイスベルグ 石畳 平均6.5% 最大9% 長さ1000m
18 247km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
19 251km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m



カンチェラーラとボーネン不在の次世代バトル

ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele過去10年間の優勝者リスト(下記参照)を見ると、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)とトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)の2人だけで6回優勝していることが分かる。しかし2015年は両雄が負傷によって欠場。本命2人を欠く中でのレースとなる。

ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de WaeleE3ハレルベークで優勝し、ヘント〜ウェヴェルヘムでは横風に吹き飛ばされながらも3位に入ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)は現在最も波に乗っているライダーだ。現在28歳のトーマスの好調ぶりはどこまで続くのか。しかもブラドレー・ウィギンズ(イギリス)やイアン・スタナード(イギリス)ら、自身も優勝候補に挙げられる選手たちを従えての出場であり、チーム力の面でも申し分ない。

ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ) photo:Tim de Waeleボーネンを欠くエティックス・クイックステップは、今シーズンここまでのクラシックレースで存在感を見せながらも大きな勝利を逃し続けている。昨年パリ〜ルーベを制したニキ・テルプストラ(オランダ)と元シクロクロス世界チャンピオンでストラーデビアンケ覇者のゼネク・スティバル(チェコ)の二枚看板を、昨年4位のステイン・ファンデンベルフ(ベルギー)らが支える形だ。

ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele2015年のクラシックシーズンで俄然注目を集めているのがロシアのカチューシャだ。直前のデパンヌ・コクサイデ3日間レースでスプリント3連勝&総合優勝を飾ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)と、ヘント〜ウェヴェルヘム覇者ルーカ・パオリーニ(イタリア)の強力タッグで挑む。クリストフは表彰台の経験こそないものの、2013年4位、昨年5位に入るなど、石畳クラシックへの高い対応力を見せている。

ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele地元ベルギー勢としては、昨年3位に入ったセプ・ファンマルク(ロットNLユンボ)や、昨年2位のグレッグ・ファンアフェルマート(BMCレーシング)、カンチェラーラの代わりにエースを担う2度の優勝経験者ステイン・デヴォルデル(トレックファクトリーレーシング)、ヘント〜ウェヴェルヘムで長距離独走を見せたユルゲン・ルーランズ(ロット・ソウダル)らの走りに注目。

E3ハレルベークで落車したファンアフェルマートに代わって、BMCレーシングは好調ダニエル・オス(イタリア)で勝負することも考えられる。なお、デヴォルデルのアシストとして別府史之の出場が急遽決定。別府は2011年に日本人選手として初めて完走(120位)を果たし、2013年には84位に。今年5度目の出場となる。

ミラノ〜サンレモを制したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)は「北のクラシック」を大きな目標に掲げている。ロンドの過去最高位は2013年の9位であり、さらなるブレイクを果たすことが出来るか。

数多くの勝利を重ねながらもまだ「モニュメント」のタイトルがないペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)は、カンチェラーラ&ボーネン不在の好機を生かすことが出来るだろうか。ビャルヌ・リースGMの解雇などネガティブなニュースが流れるチームに良い流れを持ち込みたいところ。ライセンス問題に揺れるアスタナは元シクロクロス世界チャンピオンのラース・ボーム(オランダ)に託す。

また、10カ所の急坂を含む144kmコースで同日行われる女子レースには全日本チャンピオンの萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)も出場予定だ。



ロンド・ファン・フラーンデレン歴代優勝者
2014年 1位カンチェラーラ、2位ファンアフェルマート、3位ファンマルク
2013年 1位カンチェラーラ、2位サガン、3位ルーランズ
2012年 1位ボーネン、2位ポッツァート、3位バッラン
2011年 1位ナイエンス、2位シャヴァネル、3位カンチェラーラ
2010年 1位カンチェラーラ、2位ボーネン、3位ジルベール
2009年 1位デヴォルデル、2位ハウッスラー、3位ジルベール
2008年 1位デヴォルデル、2位ナイエンス、3位フレチャ
2007年 1位バッラン、2位ホステ、3位パオリーニ
2006年 1位ボーネン、2位ホステ、3位ヒンカピー
2005年 1位ボーネン、2位クリアー、3位ファンペテヘム

text:Kei Tsuji

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