8月16日、ドイツ北部のハンブルクを中心に第14回ヴァッテンフォール・サイクラシックスが開催され、集団スプリントを制したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が大会初勝利を飾った。別府史之(日本、スキル・シマノ)は終盤にアタックを仕掛けたが、勝負どころでのパンクで戦線を離脱した。

ハンブルクの名物ケールブラント橋に向かうアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル)とユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)ハンブルクの名物ケールブラント橋に向かうアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル)とユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル) photo:Cor Vos1996年にスタートしたヴァッテンフォール・サイクラシックス(2005年までHEWサイクラシックス)は、今や真夏の北ドイツを彩る恒例行事として定着。ドイツ国内唯一のプロツアーレースだけに注目度は高く、沿道には80万人(主催者調べ)の観客が詰めかけた。

大都市ハンブルク郊外を駆け抜ける概ね平坦な216kmのコースにアクセントを加えているのが、合計4回登場する急勾配のヴァーゼベルクの上りだ。終盤にはこのヴァーゼベルクを含む12kmの小周回コースが3周設定されている。レースはこの小周回で動いた。

序盤から逃げたユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)とアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル)序盤から逃げたユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)とアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル) photo:Cor Vos12km地点で飛び出したユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)とアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル)は、最大9分のリードを得てエスケープ。しかしスプリンターチームの追撃によってヴァーゼベルクの小周回突入後に吸収。ゴールまで42kmを残してレースはフリダシに戻った。

昨年のロード世界選手権3位のマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)がヴァーゼベルクで飛び出すと、別府史之(日本、スキル・シマノ)がカウンターアタックを仕掛けて追撃。しかし別府史之の追撃は届かず、ブレシェルも諦めて集団に戻った。

メイン集団をコントロールするチームコロンビア・HTCとミルラムメイン集団をコントロールするチームコロンビア・HTCとミルラム photo:Cor Vosその後もフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)を中心にアタックが繰り返され、一時はファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)を含む25名ほどのグループが先行したが、スプリンターチームの追撃により吸収。

ゴールの15km手前に設定された最後のヴァーゼベルクでジルベールが渾身のアタックを見せたが、決定的なリードを得ることなく吸収された。

2回目のヴァーゼベルクで飛び出したマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)2回目のヴァーゼベルクで飛び出したマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク) photo:Cor Vosスプリント勝負に向けて体勢を整え、スピードを上げる70名ほどの大集団。しかし別府史之はヴァーゼベルク通過後(ゴールの約10km手前)にパンクしてしまい、集団から脱落してしまう。

集団スプリントに向けてクイックステップが積極的に集団を牽き、残り5kmからはサクソバンクが先頭へ。ゴールまで2kmを残してジルベールがこの日3回目のアタックを仕掛けたが成功せず、完全に主導権を握るチームが現れないままゴール前になだれ込んだ。

2回目のヴァーゼベルクでカウンターアタックを仕掛けた別府史之(日本、スキル・シマノ)2回目のヴァーゼベルクでカウンターアタックを仕掛けた別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Cor Vosカンチェラーラや2004年大会優勝者スチュアート・オグレディ(オーストラリア)に牽かれたブレシェルが好位置でスプリントを開始したが、後方からファラーとゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)が勢いよく追撃。

ブレシェルを射落としたファラーが先頭に立つと、そのままライバルに先行を許さずゴール。25歳の新鋭スプリンターが勝利を飾った。2位には24歳のブレシェル、3位に22歳のチオレックが入り、若手スプリンターが上位を独占するカタチに。

混戦のスプリント勝負を制したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)混戦のスプリント勝負を制したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン) photo:Cor Vosファラーは今季ティレーノ〜アドリアティコで強敵カヴェンディッシュを打ち破る活躍を見せたが、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスではステージ2位が2回ずつ。グランツールで思うような結果を残せない悔しさを、このサイクラシックスが晴らした。

勝利の興奮を抑えきれないファラーはレース後のインタビューで「ツール以降ずっと好調さを実感していたんだ。ピュアスプリンター向きのワンディクラシックは少ないから、このサイクラシックスはずっと狙っていた。チームメイトはずっと献身的にサポートしてくれて、全てが思い通りに進んだ。特に(クリストファー)サットンの働きは素晴らしかったよ」とコメント。

チームメイトと抱き合うタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)チームメイトと抱き合うタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン) photo:Cor Vos「次戦は(18日開幕の)エネコ・ツアー。その次は(29日開幕の)ブエルタ・ア・エスパーニャ」。キャリア最高の勝利を飾ったファラーはグランツール全戦出場予定だ。

終盤のヴァーゼベルクでアタックを仕掛けながらも、集団スプリントでしっかりと2位を射止めたブレシェルは「レース序盤は脚が重かったんだ。でも終盤にかけて復調したので(2回目のヴァーゼベルクで)アタックを仕掛けたけど、誰も追いついてこなかったので諦めて集団スプリントに備えた」と、臨機応変にレースを読み、そして実行してみせた。

表彰台、左から3位ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)、優勝タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)、2位マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)表彰台、左から3位ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)、優勝タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)、2位マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク) photo:Cor Vos「フランク(ホイ)、ファビアン(カンチェラーラ)、スチュアート(オグレディ)はポジションキープに力を尽くしてくれた。でも今日はファラーが最も速かった。彼は勝利に値する素晴らしいスプリントを見せたと思う。(2位という)結果は予想以上の出来で、充分満足しているよ。」

地元期待のアンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)は精彩を欠いて30位。ドイツ勢としては若手のチオレックが3位に入った。チオレックは「チームにとっては成功だと思う。僕より速い選手が2人いたというのは紛れもない事実だけど、惨敗だったわけではない。ツール・ド・フランス以降これが2レース目なんだ。だから終盤のハイペースについていくのには苦労したよ」と語っている。

3年連続上位フィニッシュを目指した別府史之は、致命的なパンクによって結局2分52秒遅れの96位でゴール。フミの次戦は8月26日にベルギーで開催されるドラウヴェンコエルス・オーベレルエイセ(UCI1.1)で、その後帰国し、8月29日〜30日に渡って開催されるシマノ鈴鹿ロードに参加予定だ。


ヴァッテンフォール・サイクラシックス2009結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)5h30'38"
2位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)
4位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)
5位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
6位 アレクサンドル・ピショ(フランス、Bboxブイグテレコム)
7位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
8位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス)
9位 マルコ・バンディエラ(イタリア、ランプレ)
10位 ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、リクイガス)
96位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+2'52"