ツール・ド・フランス開幕前日、チームホテルに新城幸也(ユーロップカー)を訪ねた。気になるジロでの負傷からの回復、意気込み、そして狙うステージは?



エースのアシストとスプリントの列車、そして自分のステージ優勝と、タスクはいくつもあるエースのアシストとスプリントの列車、そして自分のステージ優勝と、タスクはいくつもある (c)Makoto.AYANO

― ジロの落車での怪我の影響は?

もうないです。ゼロですね。ジロ終了後1週間休養して、完全に痛みが取れてから練習を再開したので今は全く影響ありませんね。

― ツールに向けて合宿等は行いましたか?

毎年やっていましたけで、ジロも走りましたし、ルート・ドゥ・スッドでツールマレーも上ったので、練習量としては十分だと思います。

コースマップを見ながら狙いたいステージを挙げるが、アタックできるかはチームオーダー次第コースマップを見ながら狙いたいステージを挙げるが、アタックできるかはチームオーダー次第 (c)Makoto.AYANO― コースの下見には行きましたか?

下見はしてないのですが、過去に走ったコースも多いので不安はありません。特にピレネーはよく知っているルートですから、問題ないと思っています。

― キーとなるステージはどこだと思いますか?

とりあえずは、第2ステージとなる日曜日ですね。最初に誰が調子よくて、狙っていくのかが明らかになるステージだと思います。

― 今回のツールにおいて、チームオーダーはどういったものになるでしょうか?

詳しいオーダーはこれからのチーム会議で発表になるのですが、メンバーからすると僕はピエール・ロランのアシストになると思います。スプリント要員としては、ヨアン・ジェーヌとケヴィン・レザがいるので、僕はロランのトラブル回避や山岳アシストという様な動きかたをするようになると思います。

新城幸也(ユーロップカー)「ジロでの負傷からはすっかり回復したので問題無い」新城幸也(ユーロップカー)「ジロでの負傷からはすっかり回復したので問題無い」 (c)Makoto.AYANO― 自分で区間優勝を獲りに行くステージはある?

うーん、どうですかね(笑)、15人〜20人程度の大きな逃げができるステージで、その逃げに入ることができれば。コースプロフィール的には逃げ切りが決まりそうなステージは少なそう。頂上ゴール、下りゴールのステージが多いので、少ないチャンスに集中する選手も多いんじゃないでしょうか。

チーム的にも、スプリンターがいるので逃げてよいというオーダーが出づらいかもしれないので、自分のために走るというよりは、完全にアシストとして走ることのほうが多いと思います。

― ピエール・ロランはジロの疲労の影響はなさそうですか?

本人も全く問題ないといってますし、端から見ていても疲労の様子はないですね。

― ピエールの目標は? 山岳? 総合? それともステージ?

それも今晩のミーティング次第というところなので、なんとも言えませんが、総合狙いだと思います。総合上位であればステージも狙えるので。ピエールはきつい上りは苦手だと言っていたのですが、ツールよりも斜度のきついジロでも十分に登れていたので、ツールでも十分ポディウムを狙っていけると思いますよ。

― パヴェのステージについて自信のほどは

ルコックのアフターウェアと新城モデルのSOMAの時計ルコックのアフターウェアと新城モデルのSOMAの時計 (c)Makoto.AYANO自信はないです(笑)。2010年以来ですね。その時も、落車に巻き込まれてストップしたので、そのあとは流してゴールしたくらいですね。チームとしては、ヨアン・ジェーヌとアレクサンドル・ピショの二人がパリ~ルーベを走っているので、パヴェでは2人が頑張ってくれます。

僕はパヴェの前の区間の位置取りがメインの仕事になると思います。石畳では使い物にならないので(笑)。
自転車も全員にパヴェ用のバイク(コルナゴCX-ZERO)が用意されるので、それも楽しみですね。

― 5回目出場となりましたが、緊張感はないですか?

もう全然緊張はしてないですね。慣れすぎちゃって怖いくらいです。今年2度目のグランツールということもありますし、リラックスしています。体調も問題ないですね。体重も1kgほど増えていて、自分の感覚からするとトップコンディションではないですが、ジロのスタートと同じくらいのコンディションです。

― トマ・ヴォクレールはリーダー的なポジション?

今年、トマのいいところが見れていないのがチームとしては不気味なくらいですね。あまり一緒に走っていないので、調子がいいのか分からないですが見た感じだと非常に絞れてますね。彼向きのステージ、特に第7,8ステージあたりで非常に期待できると思います。

― ここ何年かは平坦で逃げるスタイルですが、そこに変化はない?

5度目のツール出場に向けても緊張感はほとんど無い新城幸也(ユーロップカー)5度目のツール出場に向けても緊張感はほとんど無い新城幸也(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANO今年はスプリンターがいるので、そういうことはあまり考えてないですね。特に前半は何かあったときのために集団に人数を残していたいというのがチームとしてのオーダーですね。

― 後半ステージでの逃げ勝負のほうが良いのでは?

そうですね、スプリンターも後半になると必死なので、後半には後半のむずかしさがあると思います。逃げが決まって逃げに乗れたら、逃げ切りに全力を尽くしますよ。

― 29歳という年齢になりましたが

そうですね、ヨアン・ジェーヌやトマ・ヴォクレールもチームにはいて、まだ最年長というわけでもないですし、どうでしょう。でも、10回ツールに出場するという目標でいえば、やっと半分、まだ5回目ですから。10回出る中で、いつかチャンスが回ってくるかもしれない。今年か来年か、わからないですけどね。でも、ピエールは調子がいいと言っていますし、アシストしがいもありますし、怪我も完治しているので、いいツールになると思いますよ。

― 中国人初出場のジ・チェンとは面識ありますか?

ないですね、あったこともないです(笑)

― スプリントのトレイン要員になることもある?

日によって入ることもあると思います。アレクサンドル・ピショ、ヨアン・ジェーヌ、ケヴィン・レザ、ブライアン・コカールの4人がいれば大丈夫だと思いますが、まあ入る日も多いと思います(笑)。初日が一番ツールのなかでチャンスがあるステージだと思います。もしかしたらチームの誰かが勝つかもしれません(笑)

― チームの中でもオールラウンダーでかつベテランだと思いますが、指導したりすることもありますか?

そうですね、グランツールのなかでどういう形で動けばよいかということや、何が起こるかということについては教えることもあると思います。でも、スプリントなんかは全く別物なのでそういった面は難しいですね。

― ツール中はチーム内の雰囲気は変わりますか?

同じホテルに泊まっていたティンコフ・サクソの中野喜文マッサーと同じホテルに泊まっていたティンコフ・サクソの中野喜文マッサーと (c)Makoto.AYANO今はぜんぜん変化ないですね。たわいもない話をしてます(笑)。実際レースが始まるとプレッシャーをかけられるのもありますけど、いまは和やかな雰囲気ですよ。新しい自転車が届いたり、ウエアが変わったりと、ツールになると新しい機材もくるので、みんなテンションが上がりますね。ホテルについて、みんな部屋に行くより先にメカニックバスに行ってました(笑)。

― 全日本選手権は出たかった?

そうですね、もちろんジャージを守りたかったのはあります。去年と違って、今年は全日本チャンプでなくてもツールメンバーに選んでくれるというのもあり、パスしました。ジロ以降、ルート・ドゥ・スッドしか走っていないので全日本でもパフォーマンスを発揮できるかわからなかったというのもあって、見送ったというところです。

(共同インタビューより)
photo&text:Makoto.AYANO