今年のジロは雨無しには語れないようだ。あと雪無しにも語れない。タフコンディションのレースが続いているため、すでに40人以上がリタイアしている。ツール・ド・熊野の開幕に合わせるように、ディフェンディングチャンピオンがグランツールの山岳で輝いた。



1級山岳サンペッレグリーノ峠を目指すメイン集団1級山岳サンペッレグリーノ峠を目指すメイン集団 photo:Kei Tsuji
ついに2人(ヘップバーンとタフト)に絞られたオリカ・グリーンエッジついに2人(ヘップバーンとタフト)に絞られたオリカ・グリーンエッジ photo:Kei Tsuji山岳ステージを前にリアカセットは大型化(写真は最大32T)山岳ステージを前にリアカセットは大型化(写真は最大32T) photo:Kei Tsuji



念のため雨の準備をする別府史之(トレックファクトリーレーシング)念のため雨の準備をする別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji朝、オリカ・グリーンエッジのチームバスに向かうと、そこにはバイクが2台しか用意されていなかった。最高のジロ1週目を経験したオリカ・グリーンエッジは、1週間にわたるマリアローザキープに力を尽くしたことも影響し、最も早く選手の数を減らしたチームと言える。

第18ステージを前に笑顔を浮かべる新城幸也(ユーロップカー)第18ステージを前に笑顔を浮かべる新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji何を隠そう、もうマイケル・ヘップバーン(オーストラリア)とスヴェイン・タフト(カナダ)の2人しか残っていない。たとえ2人になっても他のチームと同じだけのボリュームが確保される。大きなチームバスは走るし、チームカーは2台走る。もうこうなったらヘップバーンとタフトには意地でも完走してもらうしかない。

ネーリソットリの大西恵太メカニックネーリソットリの大西恵太メカニック photo:Kei Tsujiオリカ・グリーンエッジのメンバーは減ったが、レース終盤に差し掛かっていることもあり、観戦に訪れるサイクリストの数が増えた。しかもほとんどのサイクリストがフルカーボンのハイエンドバイクに乗っている。要はバイクにお金がかかっている。

F1ドライバーのフェルナンド・アロンソと大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ、パオロ・ベッティーニF1ドライバーのフェルナンド・アロンソと大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ、パオロ・ベッティーニ photo:Kei Tsujiここ数年は海外(主に英語圏)からのサイクリングツアー参加者が増えているのも特徴だ。お揃いのジャージを着用し、ジロをピンポイントで訪れて観戦しながら美味しいものを食べ、飲み、ドロミティの山岳を堪能しようというもの。ただ単に観戦するだけではなく、バイクにも乗ってしまおうと言うのが世界的なトレンドだ。

それにしても今年はコロンビアの観客が目立つ。もともとイタリアには多くのコロンビア人が住んでいるため、沿道では黄青赤のコロンビア国旗が振られ、スペイン語の歓声が飛んでいる。コロンビア勢の活躍を見るにつけ、遠いコロンビアから遥々やってきた観客も多い。なお、コロンビアは南米に属するが、国土の大部分は北半球に位置している。

コロンビアがステージのトップツーと総合成績のトップツーを独占。コロンビアがマリアローザ、マリアビアンカ、マリアアッズーラを保持。今年のコロンビア旋風は凄まじいものがある。

開幕したばかりのツール・ド・熊野のディフェンディングチャンピオンが、マリアアッズーラを着て勝った。イギリスのビザ発給が遅れたため一時はジロ出場に黄信号が灯っていたジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)が勝った。

当初はUCIコンチネンタルチームからUCIプロチームへの移籍に関してチーム内に反対意見もあったそうだが、それらを振り切ってアレドンドを獲得したルーカ・グエルチレーナGMの判断は間違っていなかった。日本で活躍した選手が、世界で活躍している。

レースで反射的に無駄な動きをしてしまうところもあるが、気さくで、強い。苦手な英語を克服することが出来れば、より世界的なレーサーとして、グランツールレーサーとして今後更なるステップアップが期待出来る。



ドロミティの奥深くへと入っていくドロミティの奥深くへと入っていく photo:Kei Tsuji
1級山岳リフージオ・パナロッタに差し掛かるメイン集団1級山岳リフージオ・パナロッタに差し掛かるメイン集団 photo:Kei Tsuji
マリアアッズーラのジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)が逃げるマリアアッズーラのジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)が逃げる photo:Kei Tsuji


1級山岳リフージオ・パナロッタでジロを観戦1級山岳リフージオ・パナロッタでジロを観戦 photo:Kei Tsujiこの日は多くのチームがフィニッシュの麓に位置するレーヴィコ・テルメに宿泊。選手たちは直接ホテルまで自走で下山した。ユーロップカーのメカニック、まるで夕食のメニューを聞くように、翌日の1級山岳モンテグラッパ山岳TTのセッティングを選手一人一人に聞いてメモしていく。

笑顔で1級山岳リフージオ・パナロッタを登る別府史之(トレックファクトリーレーシング)笑顔で1級山岳リフージオ・パナロッタを登る別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji一人だけスタッフと一緒にチームバンで下山した新城幸也(ユーロップカー)は「(落車したけど)元気ですよ!」と笑う。エースのピエール・ロラン(フランス)を総合3位に浮上させたユーロップカーの雰囲気はとても良い。

新城は36x28Tのギア比で山岳ステージに挑んでいる。コンポーネントによっては39x32Tや34x28Tをセレクトするチームも。別府史之(トレックファクトリーレーシング)も「ゾンコランはリアを30T以上にするかも」と話していた。

標高差1500mオーバーの登りを含む山岳TTを新城は完全なノーマル仕様のロードバイクで走る予定だったが、前半の7kmが平坦であることと、隣で作業するFDJ.frのメカニックがディスクホイール付きのTTバイクを用意しているのを見て、簡易バーの装着をメカニックにオーダーした。ホイールはボーラ35を使用する予定。

FDJ.frの選手は前半の平坦区間をTTバイクで走り、平均勾配8%の1級山岳モンテグラッパの麓でロードバイクに乗り換える?そんな機材のチョイスもタイムに影響しそうだ。



ステージ優勝を飾ったジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)ステージ優勝を飾ったジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji度重なる落車にも、元気な様子の新城幸也(ユーロップカー)度重なる落車にも、元気な様子の新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji



text&photo:Kei Tsuji in Levico Terme, Italy