比較的平坦な211kmのロングコースで行なわれたツール・ド・フランス第12ステージ。この日もスプリンターの独壇場と思いきや、スプリンターチームは勝負に興味を示さず、7名の逃げ切りが決まった。ステージ優勝は終盤に独走したニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)。サクソバンクは2勝目だ。

1時間半に及ぶハイスピードなアタック合戦

メイン集団がハイスピードで駆け抜けるメイン集団がハイスピードで駆け抜ける photo:Makoto Ayanoこの日は序盤から断続的にカテゴリー山岳とスプリントポイントが連続するため、逃げを決めたい選手とポイントを狙いたい選手が混じり合うアタック合戦が勃発。スタート直後から平均50km/h近いハイスピードな幕開けとなった。

カテゴリー山岳で積極的に動いたのは、山岳賞ランキング3位につけていたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)だ。マイヨアポワ(山岳賞ジャージ)獲得に目標を切り替えたペッリツォッティは、序盤からコツコツと山岳ポイントを加算した。

田園風景の中を進むツール・ド・フランス田園風景の中を進むツール・ド・フランス photo:Makoto Ayano一方のスプリントポイントでは、「ステージ優勝だけを狙う。スプリントポイントは狙わない」と公言していたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)がトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)を下して先頭通過。カヴはマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)キープの意思を行動で示してきた。

レース開始から1時間半後、64km地点のこの日3つ目の4級山岳でペッリツォッティやマイヨアポワを着るエゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)を含む6名が先行すると、そのままエスケープ開始。

青空の下、アージェードゥーゼル先頭の集団が進む青空の下、アージェードゥーゼル先頭の集団が進む photo:Cor Vosメイン集団からはアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)らがカウンターアタックを仕掛けたがいずれも決まらず、単独で追走したセレンセンだけが先頭グループ合流に成功した。

逃げグループの中では、ペッリツォッティとマルティネスが山岳ポイント争奪戦を繰り広げた。ジャージを守りたいマルティネスが懸命に対抗したが、ジロ総合3位のペッリツォッティとの実力差は明らか。この日ペッリツォッティは合計15ポイントを稼ぎ出し、マルティネスとの差を17ポイントまで詰めた。

34歳セレンセンが熟練の走りで勝利を掴む

逃げるローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)ら7名逃げるローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)ら7名 photo:Makoto Ayanoこの日はスプリンターにとって残り数少ないステージ優勝のチャンス。しかし、スプリンターチームは一切メイン集団のコントロールに加わらなかった。

メイン集団はマイヨジョーヌ擁するアージェードゥーゼルがコントロールを続けたが、逃げを吸収する理由がないためペースは上がらない。結局タイム差は4分を推移したまま残り20kmに突入。先頭7名の逃げ切りが決まった。

残り21km地点でアタックを仕掛けるニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)残り21km地点でアタックを仕掛けるニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) photo:Cor Vos逃げ切りが濃厚になった先頭グループから、残り22km地点で飛び出したのはセレンセン。これにはシルヴァン・カルザッティ(フランス、アグリチュベル)が食らいついた。表情を見る限り、苦しいセレンセンと余裕のカルザッティ。しかしセレンセンが残り6km地点で再度アタックを仕掛けるとカルザッティは脱落。セレンセンの独走が始まった。

ペッリツォッティを含む追走グループは牽制が加わってペースが上がらず、最後までペースを落とさなかったセレンセンが何度もガッツポーズしながらゴール。48秒遅れた追走グループはローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)を先頭にゴールした。

勢いよく両手を挙げてゴールするニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)勢いよく両手を挙げてゴールするニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) photo:Cor Vos2003年と2008年にデンマークナショナルチャンピオンに輝いているセレンセンは、7回目のツール出場で初の栄冠を手にした。これまでグランツール全てで完走経験があり、2005年のブエルタでは山岳ステージで逃げ切り勝利を飾っている。

セレンセンは2001年のチームCSC(サクソバンク)発足時からの古株で、敢闘賞を獲得するとともにサクソバンクステージ2勝目をもたらした。シュレク兄弟(ルクセンブルク)の総合制覇を狙うチームの士気は上がったことだろう。この逃げ切りによりサクソバンクはチーム総合成績トップに躍り出ている。

後続の追走グループはローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)先頭後続の追走グループはローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)先頭 photo:Cor Vos最後までスピードの上がらなかったメイン集団は6分近く遅れ、マイヨヴェールを着るカヴェを先頭にゴール。カヴはステージ5勝目を狙わず、着実にポイントを稼いできた。フースホフトとの差は10ポイントに開いている。

また、ゴール2km手前では落車が発生し、レース中盤にアタックしたエヴァンスとライプハイマーが相次いでクラッシュ。両者とも幸い軽い怪我で事なきを得た。ラスト3km以内での落車だったため、救済措置によりメイン集団と同じタイムが総合成績に反映されている。

日本人選手は2人ともメイン集団内でゴール。別府史之(日本、スキル・シマノ)が74位、新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が116位でレースを終えている。

ツール・ド・フランス2009第12ステージ結果
1位 ニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)4h52'24"
2位 ローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)+48"
3位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)
4位 マルクス・フォーテン(ドイツ、ミルラム)
5位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)
6位 シルヴァン・カルザッティ(フランス、アグリチュベル)
7位 レミ・ポリオル(フランス、コフィディス)+1'33"
8位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)+5'58"
9位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
10位 マルコ・バンディエラ(イタリア、ランプレ)
74位 別府史之(日本、スキル・シマノ)
116位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)48h27'21"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+06"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+08"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+39"
5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+46"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+54"
7位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+1'00"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+1'24"
9位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'49"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+1'54"
142位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h17'56"
151位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+1h23'04"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)200pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)190pts
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)116pts
35位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)30pts
64位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)88pts
2位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)71pts
3位 クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)59pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)48h28'21"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+49"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+54"

チーム総合成績
1位 サクソバンク 143h47'41"
2位 アージェードゥーゼル +34"
3位 アスタナ +37"

第12ステージ敢闘賞
ニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)

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