ツール・ド・フランス100回記念大会の第1ステージは、ゴール寸前にゴール地点の度重なる変更が発生し、その余波のせいか落車も頻発。ステージ優勝候補の多くが脱落する結果となった。スプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)は総合1位・ポイント賞・新人賞を総なめ。山岳賞はフアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が獲得した。

ステージ優勝・総合1位・ポイント賞・新人賞のマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)

ゴールスプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)ゴールスプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Cor Vos今朝は良いレースができそうだと思っていた。いつもスタート前にはそう考えるようにしている。単にベストを尽くそうとしただけで、こうしてマイヨジョーヌが手に入った。凄すぎる。本当に信じられない。

ガッツポーズでステージ優勝の喜びを表すマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)ガッツポーズでステージ優勝の喜びを表すマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) (c)CorVosステージ優勝を賭けての争いは激しかった。今日の勝者がマイヨジョーヌを着ることを、みんなが知っていたからだ——だから、誰もが前のほうにいて大混乱の状態だった。でも、ぼくたちのチームのみんなが、ぼくをトラブルからしっかり守ってくれて、安全で良い位置取りをしてくれた。

マイヨジョーヌを獲得したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)マイヨジョーヌを獲得したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) (c)CorVosこうしてマイヨジョーヌが手に入るなんて完璧だ。まるで肩から黄金をまとっているようだ。マイヨジョーヌを着ることができて、とても満足している。

ゴールはひどく混乱していた。無秩序だった。終盤には本当に落車が頻発していたので、いつもより浅い位置でリードアウトせざるを得なかった。本当に早駆けしなければならなかった。ゴールまで残り1.5kmで飛び出したんだ。残念ながら、今日は落車に巻き込まれたライバルのスプリンターも多かった。

落車がなければ、ベストライダー達といつも通りに競って、彼らに勝つことができたら良かったと思う。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)と次の機会にスプリントで勝負するのが楽しみだ。

正直に言えば、これからの数ステージのことは考えたくない。いまはただ、このマイヨジョーヌを楽しんで、明日は成り行きに任せるつもりだ。テレビで自分の走りを確認したのだけど、言葉も出ない。本当に常軌を逸したスプリントで、いつもとはちがって終盤にリードアウトするトレインがなかった。

みんなの注目が集まるなか、ぼくたちが早めに飛び出さざるを得なかった。ぼくはマルセル・シーベルグ(ドイツ、ロット・ベリソル)——だと思うのだけど、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)かもしれない選手の後ろについた。その後に、残り180mの標識を確認して、全力を出してスプリントした。

正直に言って、とても驚いている……。あんな勝ち方ができて驚いている。これで夢が実現した。自分のチームや自分を誇りに思いたい。そして今日のステージでぼくが勝てると支えて信じてくれた人々にも感謝したい。


山岳賞のフアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)山岳賞を獲得したフアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)を含む逃げ集団山岳賞を獲得したフアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)を含む逃げ集団 (c)CorVos

思い起こすだけでも、本当に多くの人のおかげでこのジャージを獲得できた。感謝しつくせない。とくに、このジャージを手に入れるチャンスをくれたチームには感謝したい。ぼくの両親やガールフレンド、家族や友人、そして仲間たちがいなければ、達成できなかった。あなた方は素晴らしい。

ルフィーノ[訳註:数日前に交通事故で亡くなったエウスカルテルのチームバスの運転手]、このジャージはツールでの幸先がよくなるようにという君からの贈り物なのだろうね。


落車を免れたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

キッテルの勝利をたたえるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)キッテルの勝利をたたえるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) (c)CorVos落車しなかったのは運が良かった。ちょうど、ぼくの真後ろで落車が起きた。今日のステージは悪くはなかったし、いつものツール・ド・フランスと大きく違うところはなかった。トラブルが発生した原因は、ゴールが変わったことだろう。ぼくたちは残り5kmの地点で無線であと2km走ったらスプリントだと言われた。ゴールへと1kmほど進んだあたりで、あの大惨事だった。

今日のステージ優勝候補者たちの多くが、あの落車に巻き込まれたと思う。ぼくが巻き込まれなかったのは運が良かった。落車は後方だった。そして、チームメイトたちの状態が悪いとわかった。トニ・マルティン(ドイツ)は、少し興奮した状態だった。ぼくは運が良いことに大丈夫だった。自分にとって、あまり悪い状態ではないとわかったけど、一番気になるのはチームメイトたちが不運に見舞われたことだ。


メカトラブルに見舞われたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

メカトラブルに見舞われたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)メカトラブルに見舞われたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) (c)CorVosわかると思うけど、とてもがっかりしている。おそらくマイヨ・ジョーヌを着られるとすれば、今日がたった一度のチャンスだった。ぼくの人生での最後のチャンスだった。落車はしなかったけど、ディレイラーが当たっていた。それで、200〜300mほど進んだところで、道ばた立つことになった。

ゴールまで残り6kmというところで、チームバスのせいで、ゴール地点が3km手前になったことを知った。チームとしては、しっかりスプリントできるようにあらゆる手を尽くしてくれたが、ぼくが自分で諦めてしまっていた。不運は変えることはできない。それを受け入れるしかない。でも、絶望というほどのものでもない。


落車について語るアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)

落車によって遅れたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)落車によって遅れたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) (c)CorVos選手たちは全員が前のほうに出たがるものだ。誰かがぼくの後ろから突っ込んできたのだと思う。今は続けられるかのほうが重要で、落車したかは関係ない。しっかり睡眠を取って、また新たな明日が始まることを願う。初日によくある不安要素のようなものだと思う。

どの選手も最初にゴールに入ろうともがいている。少なくとも選手全員が同タイムとなった。前回のツールとは異なるけど、ぼくは強力なスタッフとチームにしっかりサポートされていることを感じている。すべてのサポートに満足している。ツール・ド・フランスでは、どこで落車が起きるか完璧に予想できるものではない。


チームバスがゴールゲートにつっこんだ原因を語るマシュー・ホワイト監督(オリカ・グリーンエッジ)

ゴールゲートにつっこんだオリカ・グリーンエッジのチームバスゴールゲートにつっこんだオリカ・グリーンエッジのチームバス (c)CorVos今回の事故は本当に残念なシチュエーションだった。うちのチームバスがゴールのゲート下に誘導されて、ぼくたちはてっきり、確実に通過できるだけのクリアランスは確保されているものだと思い込んでいた。このバスはチームの発足当時から使っているもので、去年のツールにも帯同したものだ。

バスの運転手は前進するように言われ、ゴールのゲートにハマってしまった。その後、運転手はあらゆる指示に従った。ASOが必死に動いて指示してくれたおかげで、ゴール前にバスを動かすことができた。あのシチュエーションのなかでは、充分できることをしたと思う。

その後にゴール前5km地点で、大規模な落車が発生し、多数の選手たちが巻き込まれた。ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)などの選手がステージ優勝争いから脱落した。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)は落車を切り抜けたけど、パンクしてしまった。

あの落車に巻き込まれた総合優勝候補も多かったようだ。アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)やライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)の両名が地面に倒れていた。チームとしては、今日のスプリントは混戦になるだろうと思っていた。今朝、ロビー・マキュアンが詳しくコースチェックしていたけど、あそこまで大混乱になるとは予想していなかった。

マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は最初の落車をうまく切り抜けたけど、ゴールラインの500m前でフェンスにひっかかってしまった。集団が広がって、彼が飛び出そうとしたときだった。ゴスのケガは少し皮膚をコスった程度で、あとはたいしたことないようだ。当然ながら、ツールの初日に落車したことにゴスは満足してない。でも、それはゴスだけじゃない。


落車したライダー・ヘジダルの名言を引用するデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)

【今日のヘジダルの名言】プロトンには安全なゾーンは“皆無”。いたるところにロータリーが存在する! ヘルメットをしっかりかぶり、安全を願うしかない。


※ソースは現地取材、記者会見、チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。

translation & text: Seiya.YAMASAKI
photo:CorVos