ツール・ド・フランス100回大会のグランデパールを翌日に控えた新城幸也に抱負を聞いた。ステージ優勝に周囲の期待が膨らむが、今年のユーロップカーはピエール・ロランの総合上位を狙う走りだ。

緊張感はなく、意欲に満ち満ちている緊張感はなく、意欲に満ち満ちている (c)Makoto.AYANO(共同インタビューより)

ー まず4回目のツール・ド・フランスを日本チャンピオンとして出場する気持ちを教えて下さい。

変な緊張感がないのがいちばんですね。メンバーに選ばれたのはぎりぎりでしたが、それなりに手応えはありました。全日本選手権にも勝つことが出来たので嬉しいですね。これから3週間が楽しみです。

ー ツールメンバーに決まったのはいつのことですか?

通達があったのは月曜の夕方でした。全日本選手権の時には(メンバー入りは)分かっていなかったんです。監督やスタッフからは祝福の言葉をもらっていたんですが。フランス選手権がスタートする前に僕が勝ったことを知ったようですよ。選ばれてほっとしたし、嬉しかったですね。

ー 4回目のツールに思うところは?

毎年同じですが、完走してパリまで行きたいですし、途中で転びたくないですね。今までよりも知っていることが増えてきたので、緊張や不安は無いですね。ツールに対してはいろんなことを経験しているので、回数を追うごとに余計なストレスが減ってきています。

ー チームはアラシロ・ユキヤに何を期待していると思いますか?

今回はメンバーをみても分かる通り、ピエール・ロラン1本できています。ですから「ピエールのために走れる選手」です。あとは個人でもステージ優勝を狙える選手ということでの選考だと思っています。

第1ステージはジュヌと僕とで10位以内を狙う可能性はあります。なぜならチームカーの順列を上げておくことが重要なんです。
今までのようにいつも20位ぐらいのところにとどまっていると、チームカーが後で困るんです。
だから明日はスプリントできるメンバーで頑張って上位に入っておきたい。第2、第3ステージが危険なコースで、地雷がたくさん落ちている(笑)から、少しでもチームカーを前にいさせておきたいです。

ー トマ・ヴォクレールについてはアシストなどの役割を負うことはないんですか?

トマはひとりでなんでもできる選手なので、ロランを皆で守ってあげるというのがまずは大事な役割ですね。

日本チャンピオンジャージのデザインが届いた日本チャンピオンジャージのデザインが届いた (c)Makoto.AYANOー ロランに対する具体的な仕事とは?

上りに入る前の区間で働くことですね。僕が越えられる峠ではアシストする。できるだけ長く一緒にいて、前で位置取りしてあげるというのが守るということです。
本土に渡ってから第5ステージ以降は(地中海沿いの)風が強い区間がありますね。ミストラルで集団が分裂した2009年と同じことが起こるかもしれません。

ー ロランはどういった結果を目標にしているんでしょうか。

ゼッケン51はイノーが優勝したときのナンバーでもあり、すごく縁起の良い番号なんです。去年、一昨年と一桁の成績できているので、そろそろ表彰台に登りたい。そして優勝を狙っているんです。

今年はTTの距離も少ないので、チャンスです。ロラン自身もTTの力が上達していますが。今は2011年にラルプデュエズで勝った時の体重と同じだそうです。

ー 自身のコンディションはいかがですか?

日焼けの跡 ルコックスポルティフのアフターウェアも100回大会バージョンだ日焼けの跡 ルコックスポルティフのアフターウェアも100回大会バージョンだ (c)Makoto.AYANO体重で言うと昨年より1kg重いんです。でも去年は手首の怪我の影響で、レースを走らずにツールに入ったんです。ローラーだけでトレーニングを積んで。
今年はここまでインターバルトレーニングもできているし、たくさんレースを走れているので、レースでかなり追い込んで、踏み込んできたので、筋肉が増えているような気もします。
1kg重いとどうなのか? どちらがいいかは走ってみなければ分からないけれど、悪くないだろうと感じています。

上りは今までと比較して楽に登れるようになってきていますね。去年のツールを経験して登れるようになって、それが春先のアムステルゴールドレースやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュの走りにつながりました。登坂力は昨年よりついていると思います。

ー 第1ステージはスプリントすることは決まっていますか?

僕とヨアン・ジェーヌのどちらか調子が良いほうがスプリントするでしょう。ただ、まだミーティングでは決まっていないことです。チームがどういった決定をするかは判りません。
今ツールの目的はピエールで総合上位を狙うことだけは確かです。
総合を狙うとは、言ってしまえば各ステージで僕が40位だろうが50位だろうが関係ないんです。それより今日140位でも、明日しっかり働けるようにして欲しいというのが、チームの考えかたです。

ー 過去3回のツールをそれぞれ簡単に振り返ってください。

初年度のツールはあっという間に終わりました。手も足も出ない状態で終わってしまった。
2年目は、ジロ・デ・イタリアで3位に入った年です。いといろ試しましたが、まだまだ及ばなかった。
昨年、3回めのツールは前年出れなかった悔しさをぶつけました。自分が思うように走れました。

だから今年はもっといいツールにしたいですね。自分もレベルアップしたと思っています。
以前はステージ優勝だけを狙うチームだったので気が楽だったんですが、今年は総合を狙います。僕も体調を合わせてきました。

ー 今年のツールで楽しみにしている部分、不安に感じている部分は?

ユーロップカーの記者会見 メンバー全員が勢揃いしたユーロップカーの記者会見 メンバー全員が勢揃いした (c)Makoto.AYANOどういう結果が出せるかな? いつステージ優勝しようかな、できるかな?  ということが楽しみですね。
不安な点は、落車の心配だけです。何もアクシデントがなければパリまで当然行けると思います。そのなかでどれだけ力を出せるかです。
あとはモンサンミッシェルが楽しみです。10年フランスにいて、まだ行ったこと無いんです(笑)。それは別の楽しみとして。

ー 総合を狙うにはユーロップカーはチームタイムトライアルが鬼門ですね。練習はどのようにしましたか?

火曜と水曜に皆でやりました。2列走行のローテーションを重点的に行いました。2列だと確かに速いんですが、選手の負担が大きいですね。DHポジションを取ったままローテーションをスムーズに回す練習が必要です。

シャンゼリゼでの表彰台を狙うピエール・ロラン(ユーロップカー)シャンゼリゼでの表彰台を狙うピエール・ロラン(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANO一方で綺麗に回すことが出来れば巡航にはいいですね。しかし1列のほうが休める。2列走行はチームに9人いても自分の順番が回ってくるのが早い。第4ステージのチームTTは1列で走って、後半上げるときに2列走行になるでしょうね。
でも僕らのチームは優勝するために走るわけじゃないので、タイムを失わないように走るのが至上命題です。
チームTTはジロ・デル・トレンティーノでもうまく走れたので、残り10kmになったら僕も捨て身で走るつもりです。

ー ツールに優勝するのは誰だと思いますか?

フルームでしょう。コンタドールはドーフィネの走りを見るとあまり良くなかったですね。
山岳TTがあるのはフルームに有利です。コンタドールがアタックして大差をつけるのは難しい。山岳TTがあるのはフルームに確実に有利だと思います。

ー 狙いたいステージはありますか?

第2、第3ステージで頑張りたい。もしジャージをとればしばらくは楽に守れるんです。でも序盤は皆が元気なので、決まりにくいですよね。僕も元気ですが、皆が元気だとチームが動かないように指示をだすかもしれません。
あとは第2週かな。その2週目も大変なようですが。
3週目に関しては僕は論外ですね(笑)。山が厳しくて何もできないはずです。覚悟決めています。

ー 体格や走りがサガンと似ていると言われませんか?

サガンは乳酸が出ないタイプなんでしょうか? 苦しそうにしているのを見たことがないですね。フォームも崩れない。フォームは崩れないほうがロス無く走れて良いに決まっているんです。
乗りこなしテクニックは素晴らしいですね。けっこう強引なことをするので僕は真似できないですが。サガンは今年活躍するでしょうね。彼に向いたステージはいくつもあって、全部持って行くんじゃないですか?

ー 100周年という節目の年にツールに出場する思いや、いつもの年との違いは?

「モンサンミッシェルに行けるのが楽しみなんです」「モンサンミッシェルに行けるのが楽しみなんです」 (c)Makoto.AYANO記念大会に日本チャンピオンジャージで出るのは特別な感じはします。記念大会はけっこう得意なんです。ツール・ド・おきなわの20周年大会は優勝出来たので(笑)。記念大会と相性がいいんです。
日本チャンピオンジャージを着ると気が引きしまるでしょうね。
(※ジャージはこの日の夕方、カナダ人選手のダヴィ・ヴェイユーの彼女の父親が持参して飛行機で持参することになっていた)

ー 新城選手にとってツール・ド・フランスとは、特別なものですか? 日本チャンピオンジャージを着て走る心構えを訊かせてください。

憧れているツールに出るということはやはり特別です。「ツールで何かしたい」と、そのためにオフ明けからずっと走ってきましたから。
たとえ日本チャンピオンジャージを着ていなくても気持ちは同じですが、着ることでより気持ちを加速してくれるでしょう。


photo&text:Makoto.AYANO

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